ブレクジットの副作用(サラダ危機)、日本への示唆。

 年に2~3回実施している、「積読専門誌」のクリアランス(セール)をしている。週刊の『日経ビジネス』と『ニューズウイーク日本語版』は午前中に終えた。在庫も多くはない。午後は、隔週の『ダイヤモンド・チェーンストア』と隔月の『ダイヤモンド・ホームセンター』が宿題として残っていた。

 

 チェーンストアの方は、在庫が一掃できなかった。8冊中、かろうじて3冊(3月号~4月号)。ホームセンターは2冊を読破し終えた。通読が断片的ながら、4つの雑誌に共通して言えることは、「デジタル化」(DXとAI)と「サプライチェーン」(コスト上昇)の話題に議論が集中していることだ。

 それと関連して、デジタル時代の消費行動の変容(企業側からは消費者理解・顧客経験=CX)が主要なテーマになっている。数日前の本ブログで、コンビニのフードロス削減と自動発注システムについて、考察を加えている。背景にあるのは、SDGsやZ世代と言われる消費者のデジタルネイティブな資質についてだ。

 デジタル革命とZ世代の消費行動は、実は密接に結びついている。デジタルが消費行動を変えて、若い世代の価値観がで企業のDXを加速させている。

 

 *中断*

 ところで、東京下町(葛飾区)では、ものすごい雨降りになっている。南庭の屋根を打つ雨音がすごい。轟音を立てて、屋根から雨が落ちてきているのがわかる。台風が熱帯低気圧に変わったようだが、近年にない強烈な雨だ。

 これから、門前仲町(江東区)の秋田料理「男鹿半島」で、この季節でした食せない「じゅんさい鍋」を囲むことになっている。参加者は、元大学院生4人+予備校の先生とわたしと6人。数週間前から企画していたのだが、そもそも無事に高級食材のジュンサイが入荷できているだろうか?心配になる。

 

 *復帰*

 4つの専門誌では、値上げ、インフレ、コスト対策も、引き続き重要なテーマになっている。分野が少しずつ違ってはいるのだが、注目する切り口はテーマは、似通っている。

 出かける前に、少し前の号になるが、気になった記事があったので紹介したい。『ダイヤモンド・チェーンストア』2023年5月15日号に、ライターの太田美和子さんの「英国のサラダ危機:複雑な要因とSMが置かれた現状」という寄稿記事である。

 太田さんによると、今年2月ごろにイギリスで、「サラダ危機」が発生した。トマト、キュウリ、パプリカといった野菜の値段が高騰したことをそれは指している。ロシアのウクライナ侵攻以来、肥料や農薬・エネルギーなど農業資材の価格が暴騰していることはよく知られている事実である。世界中で起こっていることだが、英国はいつも極端なことになっている。

 

 英国の場合は、ブレクジットの影響で、出稼ぎ労働者を排除しているため、労働者の供給が間に合わず、恒常的に労賃が高騰している。しかも食料国内自給率が低く(野菜で30%程度)、ほとんどの野菜を海外(EU)から輸入に依存してきた。そのEUでは、しかしながら、南欧での野菜の不作の影響はそれほど大きく受けていない。

 本質的な問題は、農産物の供給を増やす努力をせずに、経済の「鎖国」(分団)を決定したことだろう。いみじくも、米中関係の経済の分断が進展しているところで、日本は中国との供給網を切り離そうとしている。農産物に関しては、日本の輸入はかつてのように中国一辺倒ではないが、アジアからの農業実習生の雇用に関しては、英国と似たような状態にある。

 ここから英国サラダ危機の教訓である。経済の分断は、自国の生産供給条件をリセットしてからでも遅くはない。急速なデカップリングは、英国のようなみじめな結果をもたらす可能性がある。ここは思案のしどころではないだろうか?