10年前に、韓国の金浦国際空港で、GUESS(ゲス)の時計を購入した。ACR(消費者行動研究学会)のアジア大会で、酒井理くん(大商大教授、当時は院生)と学会発表したときだった。空港の売店で、同僚の竹内淑恵教授と筑波大学ビジネススクールの西尾チヅル教授と一緒だった。
空港のDUTY FREE SHOPで、何気ない気持ちで、時計を手に取ってみた。偶然だったが、きっと時計がほしかったからだろう。なぜか、QUESSの腕時計だった。小さな時計ではなかったが、ベルトを見ると明らかに女性用である。
「小川先生、お似合いになりますわよ」と西尾先生。女性ものだから、さすがに躊躇したのだが、この一言が決め手だった。合成皮革のベルトの色は二色から選択できる。わたしがほしかったのはピンクのほうだった。男性用にはグリーンが無難のようだが、当時はいまよりハードに走っていたので、もっと日焼けしていた。顔や腕が真っ黒だった。
「ピンクの方が絶対にいいです!」と竹内先生のアドバイスに押されて、ベルトはピンクにした。
このときに買ったGUESSの時計は いまでも愛用している。ところが、しばしばベルトの金具が壊れてしまう。今回も、留め金が壊れてしまった。
いままで3回補修に出していた。GUESSジャパンの修理工場は、栃木県の那須にある。電話をしてみた。さすがに、もうベルトの部品はないだろうなと思いながら。
電話口で感じの良いオペレーターさんが出た。「品番QU20500のピンクのベルトですね。少々お待ちください。いまお調べしています」。どうやらあるような雰囲気だ。コンピュータの端末で在庫を検索しているらしい。
「ごさいましたよ!」うれしそうな答えが返ってきた。うれしいのはわたしのほうだ。これでまた、3年くらいは、この時計をして歩くことができる。
電池も一緒に変えてもらおうかな。韓国の空港で購入したブランド時計の部品が、日本の倉庫に10年間以上キープされている。そのことに驚ろかされるが、それだけではない。ものを大切にするわたしたちの気持ちは、メーカーの在庫ポリシーに支えられていることに気がつかされることになる。
封筒に入れた時計を、那須の修理工場に送ることになる。ピンクのベルトと修理代で、しめて13000円。さすがに、高いブランド時計だけのことはある。