そもそもが手は不器用な方だ。自分の洋服や肌着などを畳んで、タンスや引き出しに収納するのが苦手である。呉服屋の長男坊で、甘やかして育てられたからだと思う。珍田のばあさんや、住み込みの姉やたちが、わたしの身の回りの世話をしてくれた。だからではないが、自分の手を動かして何かやることに、つい気おくれがしてしまう。不器用がばれてしまうからだった。
ところが、消防団員になったので、先々週から、団員活動ための動作や用具の操作などを覚えなくてはならなくなった。昔は集合研修だったのだろうが、いまはeラーニングで各自がPCやタブレットを使って勉強をする。早速、個人別のIDとパスワードが、本田消防署(団員係)から送られてきた。
eラーニングの最初の単元は、動作確認や隊列の組み方から始まっている。人と同じ動作をまちがいなくやるのが、からっきしダメな人間である。けっこう苦労して、約1時間半の第一単元がようやく終わった。まだ敬礼や隊列の組み方、行進時の方向転換など、動作全体の確認ができているとは思えない。
ところが、第2単元に入ってからは、俄然わたしの目が爛々と輝くことになった。災害時には、ロープを固定するため、何か物に固定結索する必要がある。そのときのロープの結び方の要領が、ネットから動画で流れてきた。題して、「(ロープの)基本結索要領」。
子供のころ、投げ釣りが好きだった。海釣りのときの狙いは、主としてキスだった。だから、不器用なわたしでも、釣り針にテグスをひっかけて仕掛けを作る手順には熟達していた。いまでも、釣り針にテグスを通すことはお手のものだろう。釣り針にエサを付けることも得意だった。
消防団の訓練でも、救助用のロープを固定するため、紐を物に巻き付ける方法を習得しておく必要がある。具体的な名前は知らなかったが、ロープの結び方には複数の手順があることをはじめて知った。引っ越しやさんを頼むと、重たいタンスなど、ロープを使って、難なくで二階まで引き上げてしまう。あのときの紐の結び方などの解説である。
動画と共に、「基本結索要領」に出てくる結索の方法が興味深かった。見よう見まねでなんとなく知っていたが、具体的な結び方の基本手順は知らなかった。「巻き結び」は、ロープを物に固定する手順。「もやい結び」では、ロープの末端を固定するための3つの手順が紹介されていた。
「本結び」は、2本のロープをつなぐ方法だ。これは、普段の生活でも意識することなく使っていた。ただし、抜けを防止するために2重巻きにすることがポイントだ。「2回り2結び」は、さらに強固にロープを固定する方法。きれいに”ぐるぐる巻き”にする手順が勉強になった。
「プリーシング結び」では、ロープが動くようにポールに巻き付ける。これには、「本プリーシング結び」という変形もあった。要領の良い紐の巻き付け方は、手順の理解と練習が決め手である。紐結びがきれいにできるかで違いが出てくる。わたしのような不器用な人間でも、きれいに紐を操ることが出来そうだ。
いまから、神戸からふたりのお孫さんがやってくる。小学生の孫たちと遊べるよい素材を、東京消防庁から提供していただいた(笑)。「ロープの結び方教室」を1階で開催することにしよう。3階の二人の孫たちもいるから、4人一組で教育指導ができると面白い。