正しい選択!: 体力のある企業は、消費税率の引き上げに対して「総額表示」で「価格据え置き」で対応すべし

 『日本経済新聞』の本日朝刊(4月1日)でいちばん目立った記事は、「カインズホームがお客様のくらしを考えて出した結論です。」で始まる全面広告だろう。カインズホームは、税込み価格を据え置きにして、「総額表示」を継続すると宣言した。



 わたしは、体力のある量販店チェーンは、今回の消費税率アップに対して「総額表示」で「価格据え置き」だろうと予想してきた。それに反して、利益率が高くない企業が属している「チェーンストア協会」や「(新)日本スーパーマーケット協会」などは、業界を挙げて「本体価格ベースの外税方式」を採用することなった。3%の税率アップに耐えられないからだ。
 ところが、業界団体と組みせずに独自路線を歩んでいるカインズやドンキホーテ、コスモス薬局などの量販店チェーンは、「価格据え置き」の「総額表示」を選択している。いずれも体力のある企業群だからできることなので、想定通りである。
 ついでにいえば、この3社は、わたしたちの調査(日本版顧客満足度)で、CSIが業界のトップか二番手である(2013年度)。つまり、顧客から圧倒的に支持されているお店なのである。なお、飲食業界でも、ゼンショー(すき家)だけは、この機会に乗じて牛丼を実施的に値下げしている(280円→260円)。

 この勝負は、独自路線を歩む高収益企業をさらに利することになるだろう。消費者は利己的でそれなりに賢い。生活に密着した商品分野では、価格に対する感度は高いと思われる。価格を据え置いた企業に、最終的に顧客は流れるだろう。とくに、買い置きをした後の数か月は、この傾向に拍車がかかるだろう。
 この3社は、増税前と比べて売り上げを落とさないだろう。値段は変わらないのだから、焦って買う必要がなかったのだ。だが、それを知らなかった消費者は、やはり買いだめに走りまわっていた(笑)。
 また、オペレーション的にも、売価を変えないほうがコスト節約になる。価格改定をしないで浮いた分を、カインズのように、全面広告を打ったり、チラシを配布することに費やす方が得策である。

 先週の二回のブログ(3月末)で、わたしは、「本日までに発表されている流通・飲食業各社の対応を見ると、本論で予想した通りの結果には必ずしもなっていない。小売業では、業界団体として「本体価格」(外税方式)のほうが優勢である。ただし、食品以外のチェーンストアの対応も統一されていない。なお、飲食業は「総額表示」が標準になっている。なぜそのように対応に差が出るのかについては、4月以降になってから論を改めて紹介したい」と書いた。
 本日は、この点に関して、わたしなりに結論を述べさせていただいたことになる。今回の消費税率アップで、流通業界や飲食業界における「優勝劣敗」の傾向が加速されるだろう。
 体力のある企業しか生き残れない。そうした企業は、今後はさらにPB比率を高めていくだろう。独自のブランドやチャネルを立ち上げることに注力するだろう。それができない企業が業界を挙げて談合をしても、独自路線で競争を挑んでくる企業には太刀打ちができない。消費者の選択がすべてを決めるのである。