【優秀レポート】「ファウンダー:マクドナルド帝国のひみつ」(映画作品)についての個人課題から

 土曜日(12月18日)の授業で、第1回個人課題の優秀者(Sマーク)を4人発表した。昨日、小沼さんからはワードのファイルを提供してもらっている。小沼レポートを本ブログにアップする。残りの3人からのレポートは、本日最後の提出(武笠さん)があった。受講者の全員へ。3本のレポート提出、ご苦労様でした。

 

 小沼さんに続いて、小田川さん、渡辺さん、武笠さんからもレポートの提出がありました。

 

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2021年度「ビジネスリーダー育成セミナーⅡ」第1回レポート

イノベーションマネジメント研究科 20W1007 小沼 智史

 

「ファウンダー:マクドナルド帝国のひみつ」視聴レポート

 

① マクドナルド兄弟とレイ・クロックのどちらが創業者か?

 マクドナルドハンバーガーの創業者はマクドナルド兄弟、マクドナルドシステムの創業者はレイ・クロックであると考える。両者の違いについて「事業目的」の観点で考察する。

 マクドナルド兄弟は一定品質で安価なハンバーガーを提供することを事業目的としており、そのために徹底的に効率化を追求したハンバーガーの注文、製造、提供するオペレーション、プロセスを創り出した。それまでの時間とコストがかかり、ミスが多く、品質にばらつきのあるハンバーガーショップに対し、メニューを限定、ウェイトレスを廃止しセルフサービス化、食器ではなく紙包みでの提供、30秒以内に提供するための究極に効率的な製造工程等を生み出し、事業目的である一定品質で安価なハンバーガーを提供する仕組みを創り出したのである。

 一方レイ・クロックの事業目的はマクドナルドを世の中に広めることにあったと考える。フランチャイズのオーナーとして事業を開始する際に求められる、土地の取得、店舗の建設といった多額の資金が必要になるという課題に対し、不動産はマクドナルドシステムが取得し、オーナーは賃料を支払うシステムにすることで、初期段階の必要資金は限定的となり、参入が容易となる。このフランチャイズモデルを構築したことで驚異的に店舗を拡充させることができたのである。レイ・クロック自らも「マクドナルドは不動産業だ。ハンバーガーを売るのは最も効率的に賃料を回収する仕組みだから」と述べている。

 以上の事業目的の違いからマクドナルドハンバーガーの創業者はマクドナルド兄弟、マクドナルドシステムの創業者はレイ・クロックだと考える

 

② 起業家としてのクロックをどのように評価するか?

 クロックはマクドナルドを世界最大のファーストフードチェーンを築き上げた点、オーナー等をモチベートした点において、有能な起業家と評価する。以下にイノベーターのジレンマの観点も踏まえて考察する。

 クロックは究極に効率性を求めたハンバーガーオペレーションモデル、前述した不動産業ともいえるフランチャイズモデルを築いた。ここにもう一つの重要な要素として「人」があると考える。つまり、始め事業に関心はなく資金のみ出資した事業者の展開するフランチャイズモデルは質が急速に低下し、上手くはいかなかったが、不動産モデルにより資金はなくとも人生をかけて事業に乗り出したオーナーが運営する店舗は継続的な結果が出ていた。クロックは人をモチベートし、やる気のあるオーナーが資金はなくとも始められる仕組みを見出したことが、成功につながったと考える。

 もし、マクドナルド兄弟が一定成果の上がっていたモデルのままで、クロックの見出した仕組みを他社が構築していたのであれば、マクドナルドは競争に負けていた可能性があると考える。一定の成果は保守的な考えに固執しやすく、新たな方策を放棄するというイノベーターのジレンマに陥りやすい。クロックは完全に外(他社)の立場ではなく、マクドナルドを内からビジネスモデルの変換を図り、成功に導いた。この点はジレンマを脱却する事例として意義があるように思えた。

 日本の企業でイノベーションが起こらないと言われて久しい。技術は失われた訳では決してなく、クロックが実施したように業態を変えるといった内からの変革により、新たなビジネスが生まれる可能性もあるのではないかと私は考えた。

 

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【ビジネスイノベータ育成セミナー】第一回レポート課題
~マイケル・キートン主演『ファウンダー:ハンバーガー帝国のひみつ』を視聴して~
21W0110 小田川将大

 

#1「マクドナルド兄弟とレイ・クロック、どちらをマクドナルドの創業者と考えるか?」
 私たちが認識しているマクドナルドの創業者は、レイ・クロックだと考える。理由は、現在のマクドナルドのビジネスモデルを構築したのが、レイ・クロックとハリー・J・ソネンボーン(財務コンサルタント)の二人だからである。
 まず、言葉の定義を明確にする。ここでいう創業者の定義は、「最初に会社のコアとなる事業を始めた人」とする。また、マクドナルドというと、米国の「Donald’s Corporation」と、日本における店舗及び運営会社の「日本マクドナルド株式会社」があるが、本レポートでの対象は「Donald’s Corporation」とする。
 では本題として、米国マクドナルドのコア事業は何であるかを財務状況より判断する。図表1はマクドナルドの直近の売上高構成比を示しているが、米国マクドナルドの売上高の半分以上は「フランチャイズ収入」から得られており、直営店売上高に対する割合は131.8%となっている。また、フランチャイズ収入の内訳を確認すると、「家賃収入」が6割超である。つまり、マクドナルドのコア事業はフランチャイズの家賃収入と考えられる。
 したがって、コア事業である「不動産業」を始めたレイ・クロックが、マクドナルドの創業者であると考える。

 

 図表1:マクドナルドの売上高構成比(2020年実績)
 (出所)各社HPより(省略)

 

#2「企業家としてのレイ・クロックをどのように評価するか?」
 J・A・シュンペーターの考える企業家の定義に基づくと、レイ・クロックはその特徴に当てはまるため、理想的な企業家として評価できる。
 矢野(2001)によると、『企業家を定義づける特徴とは、「単に新しいことを行ったり、すでに行われてきたことを新たな方法で行うということ」であって、企業家は「必ずしも新しい物を作り出す者である必要はない」とシュンペーターはいう』とのことである。さらに、『新しいアイデアを提供する発明家と、新しいアイデアを具現化する企業家とは、同一である場合ももちろんあるが、その本質的機能は異なる』とも述べた。
 以上のことより、マクドナルド兄弟が提供した新しいアイデアを具現化させ、かつ全米に普及させたレイ・クロックは、企業家としての重要な役割を果たしているといえる。

 

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「ファウンダーハンバーガー帝国のヒミツ」について

学籍番号:21W0135
氏名:渡辺 大祐

 

■質問①
 マクドナルド兄弟とレイ・クロック、どちらをマクドナルドの創業者と考えるか?

 

 私はマクドナルド兄弟が創業者であると考えます。「創業」の言葉の意味は、「事業をはじめること」とあるので、事業をはじめたマクドナルド兄弟が創業者となります。ではレイ・クロックは何かというと、営利を目的として物資の生産・販売などの事業を継続的に行ったので、企業家であると考えます。

 映画のシーンの中で、レイ・クロックが創業の頃の話を聞かれ、スムーズに回答が出てこないシーンがありましたが、マクドナルド兄弟であれば創業のエピソードはスムーズに沢山回答できると思います。もし、「創業者」の定義を「創業の頃の話を語れる人」とするのであれば、やはりこの点においてもマクドナルド兄弟が創業者であるといえます。

 

■質問②
 企業家としてのレイ・クロックをどのように評価するか?

 

 50州に1600店舗のチェーンを作り、海外5カ国で7億ドル近く売り上げたことは、マクドナルドへ大きく貢献したので高い評価であると考えます。聖書を売っているユダヤ人をオーナーにし、その奥さんが客の家族へアメを配りお店のファンをつくるというシーンがありましたが、こうしたホスピタリティある接客はマクドナルドの現在の接客サービスの基礎を作ったと思います。こうしたマクドナルドのブランド価値を高めてきたという点においても大きく貢献してきたといえます。
 個人的には、最も評価できる点は、レイ・クロックの「執念」です。映画のシーンの中で、マクドナルド兄弟に出会ったころからいつか必ずマクドナルドを手に入れると考え続けてきたと言っていました。52歳からマクドナルドの展開をレイ・クロックはスタートしましたが、私は現在40歳。レイ・クロックと同じく52歳となったときに、同じような何かに対しての執念を持てるか?というと、持つことは不可能だと思います。そこまで執念を発揮して実現したいというものに出会うことすら難しいのではないでしょうか。
 「執念」は言葉だけだと悪い意味に取られがちですが、企業家として成功するには絶対的に必要な要素であると思いました。目標以外には見向きもせず、一心不乱に執念をもって取り組む。これは企業家として成功するには必要条件だと思います。

 

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『ファウンダー:ハンバーガー帝国のひみつ』を視聴して

 武笠直子(学籍番号 21W1011)

 

 企業情報を閲覧すると、創業年月と設立年月が併記されている場合がある。設立年月は法人組織として登記した日であり定義が明確であるが、創業年月は事業を始めた日であり、法的な意味はなく何を創業とするかは曖昧である。

 「マクドナルド兄弟とレイ・クロックのどちらが創業者か?」という一つ目の問いに対して、映画を見終わった直後はレイ・クロックが悪者に感じられ、マクドナルド兄弟が創業者であると考えた。しかし、少し時間をおいて創業者とは何かを考えると、マクドナルドという店名をつけ、メニューの絞り込み、スピードシステム、セルフサービスを導入することで、質の高い商品を安く早く提供する仕組みを確立したマクドナルド兄弟も創業者であるし、画期的なハンバーガー店を発見し、フランチャイズで全米展開を試み、各店舗が均一なサービスを提供するため、店舗経営を堅実な夫婦に任せる、土地のリースという仕組みを採用するなど様々な試行錯誤をし、世界的な企業へと成長させたレイ・クロックもまた創業者であるといえる。

 作中に「マクドナルドという名前がアメリカを表現していて素晴らしい、他の名前では成功しなかった。」というレイ・クロックのセリフがあった。日本マクドナルド創業者の藤田田氏は著書の中で、アメリカでは社名を「マクダーネルズ」というが、日本では「マクドナルド」とした。理由は日本人の排外思想を刺激しないために日本製かアメリカ製かわからないというオブラートに包むためと述べている。

 藤田田氏は日本で成功するアメリカのビジネスモデルを見出し、日本の市場に合うようにアレンジして展開することで成功を収めた。創業者とは新しいサービスや商品を生み出した者だけではなく、既存のビジネスをアレンジし、新しい価値を消費者へ提供し浸透させた者が含まれ、後者のほうが割合としては多いと考えられる。バーガーキングやウェンディーズはマーケティングに失敗し日本市場に浸透する事ができず一度撤退し、再度日本に出店していることからも、単に流行っているビジネスをそのまま持ち込むのではなく、いかに未開拓の市場に合わせたマーケティングができるかが創業者の手腕にかかっているのである。

 

 次に二つ目の問い「起業家としてのレイ・クロックの評価」について考えたい。

 自宅を担保に入れようが、友人や家族を無くそうが、自分の信じたものに対して熱意を持ちつづけ、マクドナルドを世界的企業に成長させたことは大いに評価されるべきである。マクドナルドのシステムは画期的ではあるが、五つ星レストランのシェフのようにその人でなければ提供できない技術や才能ではない。レイ・クロックとマクドナルド兄弟の出会いは偶然であったかもしれないが、事業が拡大したことは偶然ではなく努力の末の必然だったのではないか。

 レイ・クロックに限らず、サンバーナーディーノの常連客やアルバイトがサービスを模倣し別の店名で創業するチャンスは多々あったと思われる。普通の人は素晴らしいサービスだと感じても、それをアレンジして企業するという発想に至らないしその熱意が湧かない。レイ・クロックはマクドナルドの可能性を100%信じ、一種の社会的使命感を持ち、すべてを犠牲にする覚悟を持って臨んだことが起業家として評価されるべきである。

 一見無駄に感じられたニワトリと卵のセールストークでの営業経験も起業家としての成功の基礎になっているのではないか。レイ・クロックがいなければ日本でマックシェイクを飲むこともなく、全く別のハンバーガーチェーンのチーズバーガーを食べていたかもしれないと考えると、レイ・クロックのやり方はいささか強引で非情ではあるが評価したい。