ビジネスイノベーター育成セミナー第6回講義課題
「劇団四季」未来提案の最優秀作品(佐俣和典氏)を掲載する。
「ビジネスイノベーター育成セミナー」第6講課題 佐俣和典
問1:日本が世界に向けて発信するコンテンツは何か?
現在日本は少子高齢化の真っただ中にあり、国内エンターテイメント市場のボリュームゾーンは確実に縮小する。その解決策としては、大きく2つが考えられる。一つは現在考えられているボリュームゾーンを高齢者側に移動させる対策で、もう一つは海外市場を狙う対策である。
今回の課題は、海外市場を狙うために有効なコンテンツを考察することである。
確かに昨今、日本文化的な事物は海外で評価を得てきている。この評価は今に始まったものではなく、ウキヨエ・ゲイシャ・フジヤマはかなり以前から人気があり、KABUKIの海外公演も人気を博していると言う。もちろん、これらはこれからも一定の支持を維持するだろうと思うが、これらを直接展開するのでは限界があると思う。
一方、訪日外国人の多くが目的とするようになってきたものに、日本のアニメや映画がある。特にアニメの舞台となったらしき地は“聖地”のような扱いであり、日本アニメは日本の特異的文化という認識が国内外に定着しつつある。ではアニメを、あるいはアニメを題材とした舞台を作ればよいか、となると、必ずしもそれだけでは足りないと思う。
日本のアニメが海外で受けているのは、①アニメだから、と②日本の風土や日本人のメンタリティーを上手に表現しているから、の2つの理由があると思う。①は、アニメだからこそ表現できる人物描写や現実にはあり得ない表現や場面つくりができることであり、②は人情の機微を演出するに当たって日本のアニメにはこの点に優れたノウハウの蓄積があることである。
しかし、それらアニメの根底にあるテーマや素材をよく見てみると、意外と古い題材の焼き直しであったりする。日本の古典文学や古典芸能で見てきたような世界を、時代背景を変えて再現して見せているのである。だからこそ、日本の伝統的な文化の匂いがエキゾチックに魅せるのであろう。だがそれだけではない。日本のアニメが表現しているものは外国人にとってのエキゾチシズムだけではなく、その根底に、万国人類共通な人情の機微を盛り込んでいる点も見逃せない。ここが、エキゾチシズムを感じながらも共感をもって鑑賞できる作品に仕上がっているツボなのではないだろうか。
そうであるならば、日本が世界に向ってエンターテイメントを発信するに当たって心得るべきは、「日本の古典に学ぶ」ではなかろうか。日本国内で高く評価されている蜷川シェークスピアもディズニーも、あちらの古典を土台としている。
現在日本国政府はクールジャパンを唱えて日本の文化的事物を海外に輸出しようと躍起になっているが、どうもイマイチ成功していない。その原因の一つは、発信すべき土台が定まっていないからではなかろうか。日本には古来からの舞台芸術(能や文学、歌舞伎など)において素晴らしい題材となるコンテンツが存在し、古典文学においても(例えば源氏物語など)優れた作品が存在している。これらの題材を現代風に再設定して、エンターテイメントステージとして上演しては如何であろうか。「四季版・源氏物語」など、興味が持たれる。