スシロー高砂店の品切れに見る、商人魂の欠如

 自宅のある京成高砂駅の構内に、スシローが新規開店した。先月までは、パン屋さんが入っていた場所である。店内は手狭なので、テイクアウト専門の店になった。午前11時の開店に合わせて、改札口前の店舗を観察しに出かけてみた。開店後すぐの11時半で、お客はそこそこには入っている。

 

 お店は、京成金町線への乗り換え通路の角にある。通行客が必ず目にする好立地である。開店時刻の11時から、従業員さんが店の入り口でチラシを配布していた。チラシに掲載された寿司セット(例えば、わらべ¥630~かぐら¥1100)や海鮮ちらし(¥630)、3貫セット(例えば、アジ¥195~穴子¥220~中とろ¥440)をバスケットに入れてレジにもっていく(すべて税込み価格)。きわめてシンプルな仕組みだ。

 太巻き寿司(¥290)や鉄火巻(¥390)、まぐたく巻(¥310)などもある。納豆巻やかんぴょう巻がないのは、いつものスシローである。孫の夏穂は、文句を言うだろうな。そう思いながら、それでも最低限の品揃えでリーズナブルな値付けである。テイクアウトの店だから、制限された品揃えは致し方がない。

 問題は在庫管理だと思っていた。通常のスシローならば、スマホで注文してお店でピックアップする。店舗で注文をすることもできる。しかし、ここは駅構内のテイクアウト店である。初出店ゆえに、商品の売れ行きを予測するデータがない。開店初日にどのくらいの在庫を持つかは、思い切った決断が必要になる。

 

 残念ながら、特急電車の停車駅なのに、高砂駅周辺にはテイクアウトの店があまりない。ラーメンの日高屋も、天丼のてんやも、ケンタッキーフライドチキンも、隣り駅の青砥と京成立石まで行かないと持ち帰れない。おそらくスシローができたので、思っている以上にテイクアウトの需要はあるだろう。

 もしわたしが店長ならば、初日は思い切った品揃えにするだろう。その根拠はふたつだ。金町線の乗換駅で、かなりの乗降客が店に入ってくれることが期待できる。寿司店を含めて、近くにテイクアウトができる競合店がほとんどない。ファミマの小さい店はあるが、スシローは小型のコンビニとはほとんど競合しない。

 さらに言えば、たくさん商品を準備しないと、明日からの商売にデータが集められない。早すぎる時間に品切れを起こしてしまうと、真のニーズ(需要)が読めないだろう。だから、初日のロスは仕方がないと思って、広く品ぞろえをすべきだ。

 

 そんなことを思いながら、オンラインセミナーの講師(平石さんとの対談で、Infarmジャパンの紹介)が終わった夕方5時に再度、スシロー高砂店に夕飯(もちろん、寿司各種)を買いに出かけた。仕事中のかみさんと義娘のアズちゃんに、チラシを写メって送った。

 「4時半までにほしいセットの注文を! スシロー開店初日に限り、わたしからのプレゼントになります」と。4時すぎに、ふたりからは注文が入ってきた。アズちゃんからの注文は、「マグロ3貫、はまち3貫×2、鉄火巻、いくらまぐろのたたき。お願いします」。かみさんからも、それより少し早めにオーダーが入っていた。「ひかりもの3貫、いか3貫、穴子3貫。以上、お願いします」。

 夕刻で品切れを心配して、駅まで足早に歩いた。改札前のスシローに到着すると、悪い予感がした。チラシを配っている店員さんがいない。レジ前に10人ほどが並んでいる。ゴンドラ(冷蔵品)を見ると、寿司セットがすべて売り切れている。まぐろの3貫セットや太巻きなどはまだ置いてあるが、閉店時間の8時までは完売になりそうな気配だ。

 スマホのなかにある二人からの注文を見て、ゴンドラから商品を小さなバスケットに拾っていった。アズちゃんの注文の品は、すべて調達できた。ぎりぎり最後の1個の商品もあった。鉄火巻といくらまぐろのたたきだ。

 ところが、かみさんの注文の品は、すべて完売である。代替品を用意するしかない。でも、食べてくれるかな? 穴子は鰻に、イカはタイに。ひかりものは、マグロに置き換えてみた。絶対に、「だから、午前中に用意しておきなさい!と言ったのに、、、」と後で言われるに決まっている。

 

 店内に4人ほどの従業員さんがいた。所在なさげに、レジの前で立っている。レジは一台だけ。営業時間は、11時から20時までと表示してある。閉店時間前には、用意した商品が完売なりそうだった。まだ3時間を残している。自分が店長だったらどうするだろう。

 近くにスシローの奥戸店がある。高砂店は、テイクアウト専門お店である。店内にキッチンはない。だから、商品の補充ができないのだった。しかし、である。奥戸店にいまから追加のオーダーを出したら、商品は一時間以内には入荷する。軽トラックで運んでくればよい。

 手持ち無沙汰にしている4人にむかって、「奥戸店に追加発注をかけてみたら?」と言ってみた。どなたも動く気配がない。スシローは、むかしは「あきんどスシロー」というブランドだった。現場に権限移譲をできないのか? 店長が商人魂を失っているようだ。

 現場が動けば、この店の初日の売り上げが、さらに10万円~20万円は増えただろうに。そして、高砂駅で降りる顧客の真のニーズも把握できたはず。わたしが店長ならば、、、残念な商人魂の欠如である。この会社(F&LC)は、ちょっとやばいと思った。