ひとつの共同プロジェクトがスタートしそうである。テレビ視聴に関する共同研究である。昨年の暮れから、日テレの岩崎さん(法政大学大学院IM研究科客員教授)との会話から、テレビというメディアが「見る」から「聞く」に変わりつつあるという仮説を持った。CM制作は、その役割の変化に対応して作り方を変えべきではと考えている。
そうした仮説を得た根拠は、岩崎さんたち(朝日大学の中畑教授との調査)が、「メディア環境と視聴行動:予備調査」を実施したデータがもとになっている。若い子供たち(10代の女性:T女)は、もはやテレビを彼女たちにとって無くてはならないメディアとは考えていない。もっとも大切なメディアは、携帯である。PCにも触らなくなっている。
以下は、岩崎さんが実施した「予備調査」の結果である。簡単に要約して紹介する。
調査対象:首都圏在住の13~49歳男女
回収サンプル:600サンプル(性年代別に各50サンプル)
調査期間:2009年9月25日(金)~29日(火)
<主な結果>
・平日夜のゴールデンタイム(19~22時)にテレビ視聴時、手元にあるメディア。
携帯が56.2%で1位、パソコンが44.4%で2位。
・テレビ視聴時、友人とコミュニケーションする際もっとも使うデバイス。
携帯メールが84.3%、携帯電話での通話が28.3%、PCメールが25.3%。
・ドラマ視聴時、会話はだれと、また何人くらいとするか。
友人が89.2%で圧倒的な1位、家族が2位。平均2.21人と会話している。
・テレビ視聴時のPCの使用頻度。
すべての層で60%を越えているがF2、M2層(男女34~49歳)ではおよそ8割。
・テレビ視聴時、テレビとPCどちらが正面にあるか?
テレビが11.2%、PCが68.3%、どちらも正面にない13.7%。
テレビは正対して見ていない状況。
PCに正対して、「メディアながら」の状況。
・帰宅時、テレビとPCのどちらを先につけるか?
テレビが54.8%、PCが33.3%。まずつけるのはテレビが1位。
・なくてはならないメディア。
携帯が31.7%で1位、パソコンが30.6%で2位、テレビが24.6%で3位。
T層では携帯が40% を超えて1位。
テレビとPCと携帯、それぞれが置かれている位置関係を調べてみたことが面白い着眼点である。人々、とくに、若い女性たちは、テレビをみていない。テレビは聞くものである。なぜならば、彼女たちは、人気ドラマを聞きながら、携帯で2、3人の友人たちと「会話」をしているのである。
ある意味で、メディアの主従について、逆転現象が見られる。携帯が主メディア、テレビはサブメディアに転落している。去年、どこかのテレビ局が、若い女性の一日をビデオで際杖異していた。わたしも一番おどろいたのは、お風呂のなかで、携帯メールをしている姿であった。
あまりひとに言ったことはないが、この年齢にして、わたしは一日に携帯メールを50本送信する。受信は20本程度である。学生たちとの連絡もすべて携帯メールである。仕事の連絡は携帯が主で、PCは詳細な情報を伝えるためである。旅行に出かけるときに、重いのでPCは持たない。代わりは携帯の充電器である。
「先生の携帯は武士の刀です」とは青木恭子さんの言葉である。本HPへのアップは、地方や海外からは携帯経由である。テレビを見る時間がないのと、PCを持ち運ばない点。わたしは、メディア行動的には、間違いなく「T女」に所属している。
岩崎さんとの次の共同プロジェクト名は、「デジタル多チャンネル時代の視聴行動分析:”見る”から”聞く”へのテレビ視聴の変化と広告制作への意味づけ」である。乞う、ご期待を。