前年4月の緊急事態宣言時は、スーパーとEC、ファストフード(テイクアウト主体)がビジネスを有利に進めた。売上・利益ともに異常とも思えるくらいの「幸餅」が天から降ってきた。本日、2度目の緊急事態宣言が発令された。社会的な帰結はどうなるのだろうか?私たちの台所と胃袋を支えてくれている、フードビジネスが心配だ。
その中でも、外食産業がもっとも厳しい試練にさらされることは目に見えている。前回は休業補償があった。今回は、閉店繰り上げ補填金が6万円ほど出る。夜8時まで中途半端に2時間だけ営業するよりも、一か月間、閉店してしまうほうが経営的には有利である。人件費や食材の確保が必要なくなるからだ。
「喪が明ける2月7日」まで、休業していた方がビジネス的には負荷が小さい。小さな店ならば、その間に自分や従業員を休ませることを考えるだろう。自分でアルバイトを探して働く方がよいかもしれない。外食のデリバリ-やスーパーのバイトは人出不足になるはずだ。そして、今回はコンビニに勝機があるかもしれない。
わたしの周囲では、実際に次のようなことが起こっている。具体的な名前は差し控えるが、神楽坂の行きつけのレストランから、今朝方にBCCでメールがやってきた。
本年も、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
未だ終息の見えない大変な状況であることを心よりお見舞い申し上げます。
昨年は、コロナ禍という世の中の皆様にとりまして厳しい一年でした。
その状況の中、ご来店頂きましたお客様、また沢山の応援を承り、大変感謝申し上げます。
早速ではございますが、
緊急事態宣言の発令に伴いまして、一旦休業することに致しました。
期間:2021年1月10日(日)~2月8日(月)
営業再開の際は、ご案内させて頂きます。
何卒、宜しくお願い申し上げます。
スタッフ一同
わたしが住んでいる高砂駅周辺の飲食店でも、神楽坂のレストラン同様に、2月まで30日間休業するレストランが出てきた。この店は、正月明けの5日に「休業することにしました」の張り紙を出していた。この先は、両店のように、休業のお知らせがどんどん増えてくる気がする。アルコール主体のバーなどは、商売がむずかしくなるだろう。街に人はいなくなる。実際に来れないのだから。
個人的な推論になるが、首都圏とりわけ都心の飲食店は、いずれ2~3割程度が1月中は休業を決断するように思う。これには、相乗効果が働く。周囲の数軒が店を閉めてしまえば、その界隈には客が来なくなる。行く店がなくなるからだ。短期間とはいえど、「街が寂れた感じ」になる。
そうなると、心理的な効果がこれに加わる。休業補償インセンティブ(6万円)もあるのだから、「無理をして店を開けておいても、それならば」となる。そんなわけで、政府が思っている以上に、「夜間8時以降の営業停止」は経済的には劇薬になる可能性がある。
賢い官僚たちは、シミュレーションを終えているのではないのかと疑ってしまう。「7時のオーダーストップ」の補償金6万円は、図ったような金額である。わたしは、この金額が全面休業への誘因になると考えている。ある飲食店チェーンのオーナーは、つぎのような感想を述べていた。
「明日からの営業ですが、協力金があるので助かります」と。このチェーン店は、アルコールを提供していない。しかし、8時で店を閉めれば、早期閉店の協力金が入ってくる。どちらにしても、店を閉めても補填は十分に来るのだから、経営的な危機は免れる。国の借金はまたしても増えるが、飲食業にとっては、救いの雨(飴)であることはまちがいなのだ。
それでは、消えてしまった飲食需要は、どこに向かうのだろうか? またしても、スーパーとECとテイクアウトだろうか? 今回は前回とは少しちがうように思う。本命は、食品スーパーでも総菜部門など、調理済みの食品の売り場だ。コンビニを含めた中食にも、今回はチャンスがある。なぜなら、長く続くコロナ禍の期間、一般家庭では「料理疲れ」の傾向が見えるからだ。
ところで、わたしの想定通りに、首都圏の飲食店が2~3割ほど休業してしまうと、実態として夜間の外出が意味をなさなくなる。食べる場所がなくなるからだ。このことは、結果としてコロナの感染拡大を阻止することに貢献するだろう。いまの感染者の急増は、年末の人の移動と会食(外食)によるものである。
明日から始まる連休中には、心理的にも人出が激減するはずである。これまでは、わたしの周囲では感染者がほぼゼロだった。ところが、一昨日あたりから、「身内に感染者が出ました」という密かなメールでもらうようになった。孫が通っている幼稚園でも、先生がコロナに感染してしまっている。本日、幼稚園は休みになった。
これから先は、実質的に「ロックダウン」に近い状況が出現するのではないだろうか? 「食料品の買いだめがまた始まっている」とのうわさが流れている。となると、明日からの三連休の間(1月9日~11日)が、わたしたちにとっては、日本の社会を正常な状態に復元させるチャンスになる。
東京人はコロナの勝者になることができるだろうか? 結果的に、わたしたちの個々人の行動がそれを決めることになる。だから、みんなで一か月間は、再度の「巣ごもり」で我慢をしましょう!