日本の大学教育(ビジネススクール)では、英語で授業をしないといけませんね

 忘れかけていましたが、昨日は、イタリア人男性が女性たちに花を贈る日でした。通称は「国際婦人デー」。別名では「ミモザの日」。このシーズン、南仏からイタリアにかけてミモザ(アカシアの花)が咲くからです。そのひと房を、イタリアの男たちは女性にプレゼントします。告白の花でもあるのでしょうね。



 うっかりしていましたが、3月8日はミモザの日でした。大久保さんすいません。忘れていたのです。
 ただし、いま朝方になって思い出したように、この日は「絶対に外さない」理由があります。それは、3月8日が「ファッションセンターしまむら」の創業者、島村恒俊元社長の誕生日だからです。今年で、86歳になられたはずです。いまも埼玉県の吉見町の大沼のほとりに元気にお住まいです。
 何度か、ご自宅を訪問しています。『しまむらとヤオコー』(小学館、2011)の連載(当初は『チェーンストアエイジ』、2009~)で取材をはじめたころ、ご自宅のお庭でバラを育てていました。そのことを知ってから7年になりますが、毎年、誕生日には切り花のバラを島村さんに贈らせていただいています。
 一昨年の春には、病気をされて入院。いつものように電話で、「(お花を)受け取りましたよ」とお返事が来なかったので、心配していたものです。大分のメルヘンローズ(小畑社長)から、わたしが命名したバラをお届けしています。「Mーヴィンテージ・コーラル」。昨日も、吉見町のご自宅に届けられているはずです。

 さて、国際セミナー「アジアにおけるマーケティング移転」(文部科学省、法政大学イノベーションマネジメント研究センター後援)は、昨日、無事に終わりました。事情があって、参加者の数を制限しました。
 それでもアジアから5人(当初は6人を想定)、あとは日本人研究者12人のみに制限させていただきました。結果としては、とても楽しいシンポジウムになりました。講演者も参加者のみなさんも、喜んで帰られたはずです。
 とてもびっくりしたことがありました。ベトナムから参加された女性研究者、マイさん(Professor Nguyen Thi Tuyet Mai)が、市ヶ谷駅前のユニクロ(小型店)で、なんと!3万円分を買いものをしてきたことです。ご本人が初日(7日)の懇親会で、「さっき、駅のユニクロで買い物をしました」と話していたのです。
 それで、小川ゼミの学生、小川僚介くんが、市ヶ谷店でアルバイトをしていることを伝えました。「ディスカウントはしてもらえないけど(ビジネスが標準化されているから(笑))、聞いてみれば親切にしてくれますよ」と。ある品物(ヒートテック、ウルトラライト?)の在庫を全部かっさらってきたようです。それでもまだお土産に足りないらしく、昨日も懇親会の後で「また行くつもりです」と言っていました。

 もちろん、ベトナムにはまだユニクロの店がありません。しかし、彼女のようにアジアの国を旅行しているひとたちは、ユニクロのことを知っています。高い品質でベーシックなデザイン。日本ブランドであることも強みです。銀座のGUも、いつも外国人でにぎわっています。
 不思議なことですが、ソニーやパナソニックのような機能製品ブランドが凋落気味ですが、ユニクロやMUJI、資生堂のようなSPA(衣料品、生活雑貨の製造小売業)は、アジアで大成功しているのです。おそらくは、この3社は自前で販売チャネルを抱えた製造小売り業で、さらにはライフスタイル提案型の企業だからでしょう。
 かつてのソニーやパナソニックのコンシューマー向けの製品では、提案型企業だったのです。もはやパナソニックやシャープなどの気持ちは、B2Bに向かっています。

 昨日の懇親会が終わって帰るときに、京成線で「事件」がありました。中国人の女性(35歳前後)が、車内の路線図を見ながら友人か旅行社らしいひとと携帯で話しています。中国語ではなく英語でした。わたしはもうかなりいい気分で酔っていて、「声がうるさいので、やめてください」と言おうとしました。
 ところが、電話の説明を聞いていると、どうやら成田空港に行くのに最終電車がなくなっている。今日中にホテルにたどり着けない。困っているのがわかりました。たしかに、10時に東京スカイツリー駅(押上駅)を通過していますから、成田空港行きの直通電車は終わっています。
 日本人ならば常識的にわかることです。夜間11時を過ぎると、成田空港からは飛行機が飛び立てません。騒音規制がありますから。その時間(10時)には、成田空港に到着する電車があっても、役に立たないわけです。

 中国人は3人組で、女性以外にふたりの男性も一緒でした。重い荷物を抱えている彼らには、英語が通じないようでした。シンポジウムで中国・韓国を含む、アジア人と一緒だったこともあり、意を決して「お助けしましょうか?」と申し出ました。
 まずは、地下鉄浅草線から京成線に乗り入れている「青砥駅終点の電車」から、京成成田線の「成田行きの電車」に乗り換えないといけません。また、どうやら彼女たちの名前でホテルは予約しているわけではなく、(友人たちがいるらしい)ホテルの場所がわからないらしいのです。
 乗り換えのために青砥駅(京成線)で降りた時に電話番号を教えてもらい、ホテルに電話をしてあげました。名前は聞いたことがないホテルでしたが、電話に出たフロントの女性は感じがよいひとでした。彼女の名前を伝えて、二部屋の予約がないかどうかを確認しました。さんざん調べてくれたあとの返事は、「予約を入れているのは別の人でしょうね」とのこと。
 部屋は他にも空いているらしく、「そのままどうぞいらしてください」(とお伝えください)。このようなことはしばしば起こっている様子で、なんの動じる様子もない。成田空港の第一ターミナルからは車で10分。「16番からシャトルバスに乗ってください」(フロントの女性)。もっとも、最終電車はもうないから、成田駅からタクシーに乗ってもらうしかない。

 そう話しているうちに、青砥駅のホームには、京成線経由の「スカイライナー」が滑ってきました。3人をチケット売り場に走らせ、400円(×3)でスカイライナーの切符を買わせ、スーツケースごと車内に押し込みました。青砥駅10時25分発の成田行き。最終の前のスカイライナー。
 彼女たちはラッキーでした。わたしが助けてあげないと、本日早朝のフライト(ANAのコードシェア便、成田発北京行)に乗れなかったかもしれません。とんだ、日中友好になりました。
 わたしは最近、自らが「右翼」(民族主義者)であることを公言しています。しかし、困っている人間は、国籍を問わずに助けるべきだと思っています。その点からは、自分は「コスモポリタン」(宇宙人)だと自負しています。ひとりになって、印旛日本医大行きの電車の中から、酔っぱらった勢いでアシスタントの青木恭子にメールしました。
 「中国人をレスキューしましたよ」と。返事が返ってきました。「右翼と反中同じではない。愛国ヒューマニズムでいいではないですか」
 
 シンポジウムのとき(インドネシア人のプレゼン)に、韓国やフランスに比べて、日本がアジアからお客さんを受け入れる数が増えていない理由が問題になりました。テーマは、「日本(語)の教育と、日本への観光旅行」でした。
 インドネシアから日本への観光旅行は増えています。2013年は、対前年比で+63%。でも、人口が3分の1の韓国よりも合計の旅行者はいまだに下なのです。もちろん、日本の物価が高いこともあります。
 しかし、ほんとうに「観光客の受け入れの壁」として深刻なのは、町中のサインがわかりにくかったり、日本人が困っている外人(アジア人)を英語で助けることができないからなのです。実は、おもてなし、ができていないのでした。
 国土交通省がどんなに「ようこそ日本へ(ビジット・ジャパン)」を宣伝して、多額の予算を付けても、そもそも日本人が外国人を受け入れる体制ができていないのです。このままだと、2020年の東京オリンピックには間に合わなくなるのです。首都高速道路の改修工事の大切ですが、言語など心の準備も必要なのではと思います。

 電車で迷っていた中国人には、わたし以外、車内にいた日本人の誰も知らんぷりでした。青砥の駅では、駅員さんも冷たい感じでした。
 たしかに、10時過ぎて京成線に乗っているのは間抜けなことなのです。が、それは外国に行けば、わたしたちだってしばしば経験することではあります。
 長くなりましたが、とにかく、ハードも大切ですが、ソフトな心(実質的なおもてなし)をできる環境を整えないと。アジアのひとたちには恥ずかしいです。

 最後にひとこと。今回のシンポジウムで切実に感じたことがあります。日本の大学は、アジアの人たち(学生や社会人)に向けて、「英語で授業をやる必要がある」と確信しました。というのは、アジアの学生たちが英国や米国を留学先として選ぶ理由は、広い意味でのその国の経済力、つまり卒業後の就職機会だけだとわたしは思っていたからです。
 たとえば、米国や英国で卒業した方が国際通用性があるスキルが身につく。卒業後に、たとえば、米国のMBAやドクターのほうが、自国に帰ったときには、大学教授や多国籍企業での高いポジションが保障されるだろう。しかし、これは、まちがった考えでした。
 正しくは、どのような形であれ、その国のビジネスや文化に慣れ親しむ方法として、英語とその国の言葉の両方ができることが必須なのでした。だから、学ぶ内容は「標準化」(グローバルに共通なビジネス慣行)したものである必要はないわけです。その国の「現地化した知識」で構わないのです。教育コンテンツは現地化(その方が競争優位性がある)、コミュニケーション手段は「部分的に標準化」(共通優位性)したほうがよいのです。
 アジア諸国から日本に求められるのは、世界共通語である英語でコミュニケーションができる環境の提供なのです。日本の教育現場では、とにかく早めにその環境を整えないと、アジアから孤立してしまいます。「日本のコンテンツを理解したい。楽しみたい」というアジア人の「顧客ニーズ」が存在しているのです。ただし、学習して理解する手段(英語)が、存在していないのです。
 社内公用語を英語にしているユニクロ(柳井氏)や楽天(三木谷氏)は、その点で正しい方向なのだと思います。経営者の特徴が出て、ちょっと極端にすぎるのがたまに傷なのです。
 日本企業の中では、それほど厳密にやる必要もないはずです。やりすぎは、結局はビジネスの効率を落としてしまいます。そして、社員から反感を買います。有能な人材を社外に流出させてしまいます。英語は、とはいえ、”単なる”意思疎通のための手段なのです。コンテンツの理解が大切なのですし、それが付加価値を作ります。決して逆ではありません。