2018年が終わろうとしている。平成最後の大みそかに、日本のこの先10年を展望してみたい。世間で言われている「日本の未来像」はきっと当たらないだろう。これまでもおおむね外れ続けている。予想とは逆のことが起こるものだ。東京オリンピックまでの二年間と、10年後の日本を透視(投資)してみよう。
<逆張りの大予言>
わたしの思考傾向は、他人と逆に考える「逆張り」の発想だ。これまでも、一貫して世間の常識とは逆を予想してきた。8割の確率でそれが当たってきている。外れた予言は、「中国共産党の崩壊と内部分裂」だけである。
ファーストリテイリングが、2003年に年間売上高を、一年で1千億円ほど失ったことがある。このときの世間の柳井評は、「フリースブームの終焉=ユニクロの終わり」だった。しかし、その根拠は単に「流行は終わるものだ」。ただそれだけである。足元をみれば、売り上げは減少していたが、利益率は世間が問題にするほど下落していたわけではなかった。データを見れば、その後のユニクロの復権は予想できたはずだった。
同様に、4つのテーマに関しても、一般の予想は、「混乱と悲観」(東京オリンピック、働き方改革)と暗い時代の到来(少子高齢化、地方経済)である。メディアの論調のように物事は進展しないものだ。わが未来予想図とその根拠を述べてみたい。
1 第2回東京オリンピックの贈り物
第一回東京オリンピックが1964年に開催された。日本は高度経済成長の真っただ中。オリンピックが残していったものは、その後の経済成長だけではなかった。日本人の生活様式がオリンピックを境に大きく変化した。簡単に言えば、和風の生活が洋風に変わったのだった。
オリンピックの5年後から、つまり1970年代に入って、飲食店の新しい業態として、ファストフード(マクドナルド)とファミリーレストラン(すかいらーく)が誕生した。住生活では、ホームセンター(ドイト)やドラッグストア(マツモトキヨシ)がうぶ声をあげた。ほとんどの生活サービス産業は、チェーン化して企業規模を大きくしてきた。
洋式のホテル産業も、この時代の産物である。その根底にあったのが、生活の洋風化である。和食から洋食へ、魚から肉へ、畳からフローリングの生活へ。日本人が、それでも肥満にならなかったのは奇跡としか言いようがない。
さて、第二回の東京オリパラの開催が残していくものはなんだろう。一般的には、公共投資へのお金の使い過ぎが非難されているだけである。財政の負担以外に、マスメディアはまっとうな議論がほとんどなされていない。日本国と東京都の財政へのマイナスの影響しか議論がなされていない。
大胆に予言してみたい。2020東京オリンピックが残すものは、
(1)インバウンド観光ブーム
現在のフランスやスペインのように、5年後の2025年に、年間1億人が日本に観光に来るようになる。なぜなら、日本の食とサービス、地方の自然資源への注目が加速化されるからだ。世界の食品サービス業が日本化していく。標準的な生産性は追わないプレミアム産業が、この先は高い利益を生む時代が到来する。美しい食べ物と癒しの温泉。地方経済の復権が、ここから始まる(後述)。
(2)和風文化への回帰
トレンドのねじ式は、1964年と逆の方向に回っていく。2020年を境に、日本人のクリエイティビティは、本来の意味で、洋風と和風の折衷文化を生み出す。どちらかといえば、外向きには「和」が受けるので、「和式」にプレミアムの経済価値を見出すことになる。換言するならば、小売業や食品サービス業、住宅産業からの提案も、オリジナルの日本文化に回帰する。
(3)「植物の時代」の到来
食の風景が変わる。オリンピックに参加するアスリートたちは、ヴィーガンやベジタリアンが主流である。ロカボの食事は当たり前で、肉を食べない人がふつうだから、キャンプ地や競技場の食堂もベジタリアン対応にならざるを得ない。オーガニック食品へのニーズも、いまはそれほど騒いではいないが、事前のキャンプ地でそして大会が始まれば、食の景色は完全に変わるだろう。
(4)文化の輸入から輸出へ
ここまでの論点でお分かりいただけたと思うが、1964年は、「生活文化の輸入」の時だった。第二回の東京オリンピックは、日本にとって、「食文化と自然の輸出」の年になる。そのスタートが2020年だ。
2 少子高齢化の影響
(1)土地価格の下落を通した若者世代への所得移転
この先の10年で、家族の形は大きく変わるだろう。同時に人々の住まい方が変わっていく。基本にあるのは、人口減少と高齢化ではある。高齢化社会が到来することでもっとも大きなインパクトを受けるのは、若年労働力の確保ではない。年寄りが去ることで、住宅と土地が「希少なもの」ではなくなることである。
人口減少とともに、土地の価格と住宅の建設コストが劇的に低下していく。商業地も農地も宅地も、例外がなく大幅な下落を経験する。それにつれて、ひとりが占有できる土地と住宅面積が広くなる。これは良いことだろう。
生活に支出するお金の中で、世界中の大都市で、家賃がもっとも大きなウエイトを占めていることが知られている。その現象は、東京だけに当てはまるわけでない。ニューヨークやパリ、ロンドンや上海でも同様なことが起こっている。しかし、2020年から先は、若者にとって生活がしやすくなる。若者に対する所得移転は、価格メカニズムを通して自然に進むことになる。
(2)独居から共同居住へ
さらなる朗報は、ひとびとの住まい方が、独居から共同居住に変わることだろう。もちろん非婚化やLGBTの影響で、家族の形が変わることにはなるだろう。その結果は、血縁でない共同居住がふつうになることである。
共同居住と関連して、相続など複雑な問題が起きるだろうが、それはなんとか解決できるだろう。人々がバラバラに孤独に暮らすのではなく、一緒に住まうことに価値がある。住まいの形が変わって、日本人は悪名高い「ウサギ小屋」から解放される。
(3)農地と商業地の生産性
農地も同じである。GHQが農地解放したことで、戦後は農地が小規模分散することになった。農家の高齢化とともに、戦前のように農地の集約化が進む。先進国の農業人口(全産業に占める割合)は、そもそも世界的にも2%程度である。日本が特殊なわけではない。農業生産は、植物工場の普及で一部は生産性が飛躍的に高まる。
その他では、とくに生産性が低い日本では、集約化によって生産性はまだ上昇する。2030年ごろ、日本は農産物の輸出国に変わる。現在の食糧自給率39%が50%を超える。それどころか、2040年には自給率が60%を超えている。その根拠は別の機会に論じたい。
というわけで、少子高齢化はおそれることではない。人口減少による働き手の不足は、自動化技術で補うことができる。老人はいずれ社会の真ん中から消えていく。若者が残るのだから、それでよいのではないだろうか?老人介護も大事だが、若者にもっと投資をすべきだとわたしは考える。
*この後に、つぎの予言が続くが、すでに2018年は終わりそうだ。3~5は、来年に持ち越しとする。
3 鎖国時代の地方経済
4 間違いだらけの働き方改革
5 その他もろもろ