ホールフーズ・マーケット旗艦店 オースティン探検記(1)

世界最大のオーガニックスーパー「ホールフーズ・マーケット」の本社(Austin, TX)に併設された新しい店舗を訪問した。


テキサスA&M大学のプロジェクトメンバーと会食した直後、7月25日夕刻のことである。同店は、最近開店したばかりの同社旗艦店(WH Landmark Tower)である。そこで、食と健康に関する新しいコンセプトを発見することができた。一言でいえば、「健康と食の体験型店舗」である。
 以下に、同社HPにある新旗艦店舗についての記述を複写添付した。一部日本語で翻訳をしてあるので、参照されたい。
 今年の3月末には、前もって、サンフランシス湾岸地域の調査で、サンフランシスコ市内と郊外(南サンフランシスコ、サンノゼ、サンマテオ地区)の数店舗と、カットパック野菜の供給業者である「アースバウンド社」(本社:San Juan Bautista,CA)の事務所を訪問していた。さらにその前日には、モントレー/サリナスの野菜供給農場(慣行栽培と有機栽培)を視察し、南サンフランシスコの市場にある物流センターに“潜入”してきた。ちょうど商品の流れを農場から順番に小売りの現場まで降りてきたことになる。後方現場体験を踏まえて旗艦店をみると、ホールフーズがさらに進化している姿を感じとることができる。感慨深いものがあった。

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Our New Landmark Store
(http://www.wholefoodsmarket.com/stores/lamar/)
Welcome to Whole Foods Market at Sixth and Lamar. Whole Foods Market at Sixth and Lamar represents a fresh and often surprising approach to the grocery shopping experience – as cooking demonstrations, food sampling, sit-down dining and takeout selections mingle with thousands of fresh and all natural ingredients in every department.
Located just blocks from where Whole Foods Market began as a small neighborhood grocer 25 years ago, the new store at the corner of Sixth Street and Lamar is the company’s largest, at 80,000 square feet. Though much larger in size, the store retains the charm and accessibility of its first location, with an intimate, village-style layout and passionate, attentive Team Members eager to assist guests
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 「ラマール(通り)本店」は、売り場面積が同社最大規模の約7千㎡(2千坪+α)である。売り場レイアウトは、ほぼ真四角である。それだけ大きい割には、あまりだだっ広く感じさせない。一般に、米国人は日本人より買い物を苦痛だと思っている人の割合が高いと言われている。しかし、この店は、顧客にあまり疲労感を与えない設計になっている。それは、以下の理由によるものである。

(1)自然な形でのワンウエイ・コントロール(左回り)がうまくできていること。さらには、店内の客動線が“蛇行しながら”曲線を描くように、通路と棚・ラック・冷蔵ケースの配置されている。青果部門の導入部などは、通路が“ジグザグ”になっている。
(2)各食品関連部門間(入り口から順に、青果部門Produce、鮮魚部門fish、精肉部門meat、ワインwine & cheese、補助加工食材spice?、総菜部門delicatessen、飲食部門eat-in)の連携が緩いつながりをもっている。部門の区別は明確であるが、完全に途切れた感じがしない(自然に次の売り場に入ることができる)。
(3)非食品部門は、副通路と棚をパーティションとして利用し、店舗の中央売り場部分を明確に仕切りながら配置されている。それぞれが個性的で滞留して楽しいのは、商品が体験できるコーナーがあるからである。自然化粧品部門、サプリメント部門、軽衣料部門(女性下着の品揃えが厚い!)には、“テスター”が設置されている。
(4)一般のスーパーと違って、食器や調理器具などのハードウエアが、食材に取り囲まれるように(調理関連商品として)陳列されている。それも、自然食やオーガニック系テイストを感じさせるように並べられている。

 新して試みとしては、以下の点に注目したい。

(1)食と健康の体験型店舗: 料理の実演、食品の無料配布、イートイン・コーナー、テイクアウトなど、新鮮な驚きを与えるような買い物体験が楽しめる。とくに、強調したいのは、総菜売り場に、イートイン・コーナー(クッキング・オーブンと食事のためのカウンターがついた“プチレストラン“(女性シェフ付き!)が、島のように併設されていることである。それも、イタリアン、エスニック、ジャパニーズ(スシ)など、タイプ別の構成になっている。これは、二重の効果を持つと見られる。その場での一瞬のシズル感覚、そして、いったん体験しておいしいと感じたならば、次回来店時に、関連食材あるいは調理用パック(セット)を購入してくれる。つまりは、「知らしめる前に感じさせてしまう!」戦略。
(2)ミールソリューション志向と関連商品のプレゼンテーション: 例えば、精肉部門は次のように「代替的案な形態の商品」が提示されている。まず、壁際の陳列ケースには対面販売用のカット済み精肉、通路を挟んだチルドケースにはスパイスなどで味付けされた肉、そのさらに調理済みやグリルされた肉が置いてある。その中から買い物客は商品の選択ができる。要するに、同じ売り場部門で、生鮮素材からデリカまでのうち、どれかを同時に選択できるのである。なお、鮮魚部門の陳列ケースの横には、(魚の)料理本、シーズニング(しょうゆ類)、包丁やグリルなどが関連販売用に陳列されている。
(3)観葉植物や鉢物などの大量ディスプレイ: くつろいだ自然な雰囲気でなかで買い物を促進させることをねらっている。ふつうならば、ホテルのロビーで利用されているような植物(観葉、鉢花)が、店内ディスプレイに多用されている。なんとなく、店舗の外観からして、アジアスタイルの“よしず”張りのすだれや木と草の素材を使用しているのが目に付く。
(4)健康志向の女性への配慮: ターゲットは明らかで、若い富裕層の女性とその家族である。凝った料理を作っておいしく食べたいけれど、ほんとうは「主婦しない」顧客が主役である。健康なライフスタイルを重要だと考えており、それを実現するために、自然派の美容とファットの少ない食事を通してダイエットを実現したい若い女性である。だから、冷凍食品であれ、食材には、無添加やダイエットが強調されている。
 (to be continued)