6/23から、2020年度の「フラワービジネス講座」が始まる。初回の講師は、わたしと大田花きの内藤さんである。わたしの担当科目は、いつものように、「お花屋さんのマーケティング」。今年度からは、教室での講義からオンライン講座に切り替わる。
おかげで、対面での講義とは異なり、受講者が全国に広がっている。オンライン講座のよいところだ。研修事業としても集客の方法が変わって、収益性が高くなった。
今回は本題とは別に、コロナ後の花業界を俯瞰してみることにしている。新型コロナウイルスの蔓延で苦戦している外食やアパレル、サービス業全般と同様に、花産業の変化は、つぎのような基本トレンドの変化を反映したものである。
<トレンド#1> ダイレクト販売への切り替え
今回のコロナ騒ぎで被害甚大だったのは、生産者と輸入商社である。市場流通が全く機能しなかったので、グローバルに見ても切り花や鉢物が行き場(出口)を失った。コロナ後の最大の変化は、現状の流通チャネルの見直しである。生産者も輸入商社も、市場の流通に頼るのではなく、自らの販売経路を構築する努力を始めている。花屋さんにとっては、これは二重の意味をもっている。①商品の調達が楽になったことと、②自らの販売力が試されていること。環境の変化は、チャンスとピンチの両面をもっている。さて、あなたは、このピンチを自力で乗り切ることができるか?
<トレンド#2> ECの好調と店舗の小商圏化
花屋さんの商売にとって最大の打撃は、自粛中に店を開くことができなかったことである。いつもは来店してくれるお客さんは、ネット経由で花を購入するしかなかった。対応できた店舗では、母の日前後は、「母の月」の効果で需要が分散できた。その結果、花材調達と作業効率では楽になった面もあった。そして、コロナ後の消費者の動きで大きかったのは、来店客が近くの店を選ぶようになったことである。都心部の商業施設はもちろんのこと、郊外でも人々は電車やバスに乗らず、徒歩や自転車で買い物をするようになった。小商圏化である。店舗からの配送や商品の店舗ピックアップが増えている。
<トレンド#3> 業務用からホームユース向けに規格が変わった
3ヵ月の自粛期間で、花業界は業務需要を完全に失ってしまった。このトレンドは一過性のものではなく、この先も続く傾向である。そのことを反映して、自粛期間は小さなサイズの花が売れるようになった。一部の花市場では、60~70センチの長いサイズより、40~50センチの短い花のほうに高値がつくという逆転現象が見られた。コロナで需要構造が変わったと考えてよいだろう。プラス面はふたつ。①国産でも輸入品でも、短い花の方が物流費は格段に安くなる。そもそも運べないのだから、コンパクトな花を安く運んだほうが利益率は高くなる。②生産者にとって、栽培方法と選別のやり方を抜本的に変えないといけなくなる。
以上に、3つのトレンド変化以外に、つぎのような傾向に花産業は抵抗するのではなく、適応していかなければならない。
<トレンド#4> 花屋以外の業種が花を扱い始めている
ライフスタイル提案のひとつとして、ユニクロが切り花の販売をはじめた(6月末現在、3店舗)。無印良品が、9年ぶりに花の販売を復活させた。母の日の期間限定だが、すき家などの飲食店で花(カーネーション)を販売していた。
<トレンド#5> 売り方(プロモーション)の抜本的な見直し
ECでの販売と同時に、集客の方法が変わってきた。花店も生産者も、SNSで自社の商品や花店ブランドをプロモーションするようになった。待ちの経営から、攻めの経営(販売促進、集客)への変化である。自ら変わろうとしなければ、そのままのたれ死にしてしまう。