【柴又日誌】 #22:「うちんちの赤ちゃん、ちゃんと見とってな」

 本日(1月10日)は、神戸の孫、諒(りょう)くんの誕生日。晴れて満4歳になった。諒は個性的な子で、性格が優しい神戸の親どもを、いつもてこずらせている。先日も神戸から上京してきて、わが家に5日間滞在していった。ところが、一日に最低3回は”拗ねて”しまうので、取り扱いが難しい。

 

 諒くんは、地べたがとても好きだ。気に入らないことがあると、床に転がってしまう。起き上がらせようとしても、床に貼りついているので、びくともしない。小さな牛のように強情だ。

 そんな諒くんだが、本日は、王子様になれる日だ。早朝から家族lineで、「お誕生日おめでとう!」の祝福を受けている。母親の奈緒さんからは、「本日の諒くん」の写真が送られてきた。「ありがとうございます(ニコマーク)。保育園のシールを貼ってもらい、ノリノリです」。

 幼稚園に到着したばかりの諒くんの胸には、ケーキの絵のシールが貼ってある。幼稚園の先生からいただいた、誕生日のプレゼントなのだろう。いつもより明るい表情で、お兄ちゃんになったように見える。

 

 その諒くんが生まれたときの話である。

 その日、神戸の長男から、「無事に男の子が生まれたよ!」の連絡を受けたかみさんは、早朝に新幹線に飛び乗った。長女の紗楽(さら、当時3歳)が家にいるので、誰かがさらの世話をするために、神戸のマンションに出向く必要がある。ふつうならば実母にアシストを依頼するものなのだろうが、なぜか奈緒さんはかみさんを頼りにしている。諒の出産に当たっても、かみさんが神戸に出向く約束になっていた。

 病院に着くなり、かみさんの顔をみて奈緒さんは涙を流したらしい。たいへんなことがあると、奈緒さんはいつも涙目になる。隣には、長男に連れられてきた3歳3か月のさらが立っている。お姉ちゃんのさらはしっかり者だ。

 生まれたばかりの諒くんが、奈緒さんの隣で眠っている。奈緒さんの面倒を見てくれている看護師さんに向かって、さらが一言。「その赤ちゃん、うちんちの子やから、ちゃんと見とってな」。立派な関西弁で、お姉ちゃんの役割を果たそうとしたのだろう。

 この名言は、いまでも家族の間で語り草になっている。強情な諒くんだが、だから一生、お姉ちゃんのさらには頭が上がらない。