「気候変動への対応:沖縄から千葉の花生産者への助言」『JFMAニュース』(2019年10月20日号)

 世界的な気候変動により、日本の上空でも大気の動きが様変わりしている。今年に入ってから、大きな台風が二度も日本列島を襲った。9月の第2週(9~10日)には、台風15号が千葉県を中心に猛威をふるい、とりわけカーネーションやカラー、ひまわり、アジサイ、草花類を栽培している花生産者が多い南房総は大きな打撃を受けた。そして、先週末(10月12~13日)には、台風19号が東日本の広い範囲に洪水やがけ崩れを引き起こし、100人近い死者や行方不明者を出している。

 

 地震や台風などの自然災害の影響は、農業生産者の経済活動にも深い傷跡を残している。週明けのテレビでは、長野のリンゴ産地が消滅の危機に瀕しているというニュースが報道されていた。洪水や地滑りで斜面が崩落し、リンゴの木が根こそぎ倒壊している痛ましい写真を見た。十数年をかけて育てたリンゴの成木を、被災した高齢者が再生することは不可能だろう。

 同じような事態は、台風で被害を受けた花生産者の間でも起こっている。冒頭で述べた房総の花の産地でも高齢化が進んでいる。台風15号が去った後、両親の畑を後継した若い花生産者のところに、年配の農家から電話がかかってきたという。「もう花の生産は継続できそうにない。被災した温室と畑を引き取ってくれないだろうか」という相談だったらしい。 

 花農家から相談を受けた若手の生産者は、自分の温室と畑も大きな被害を受けていた。途方に暮れていたところだった。被災の様子が心配だったので、わたしは若手の生産者のところに「お見舞いの電話」を入れたら、年配の農家からの電話相談の話になった。「それなら、皆さん(地域の高齢者)を助ける意味で、生産規模の拡大に取り組んでみたら」がわたしからのアドバイスだった。被災したばからの農家に対して、すこし無責任な助言だったかもしれないと後で反省した。ところが、間接的に知り合いから聞いたところによると、わたしのアドバイスが、「かえって励ましになったみたいですよ」とのことだった。とはいえ、規模拡大の提案は、それだけでは何のアドバイスにもなっていない。30代後半の若手農家にとって、具体的な助言が必要になるだろう。

 参考になるのは、台風の通り道にあたる花生産地の対応だろう。そう思って、知り合いの花生産者に電話してみた。以下の2つの質問へコメントをお願いした。最初は、台風への対応についてのアドバイス。二番目は、若手の生産者が栽培規模を拡大することに対する助言である。

1 台風への対応

 台風対策として、その産地は二つの方向で栽培を維持してきた。以前は台風の後で苗を確保するため、海外に直営農園を設立した。年間1500万本の苗を確保し、3月の彼岸出荷の計画栽培が達成できた。現在は、12月出荷のために平張りネットハウスを導入し、年末出荷に備えている。同ハウスは、風速50Mまで耐えられる設計になっている。

2 規模拡大への助言

 花の種類にもよるが、例えばカラーのような花は需要もあるし、規模拡大は可能だと思う。ただし、留保条件がひとつある。それは、規模を拡大しても品質を落としていけないことだ。なぜ品質が落ちるかといえば、人手不足で管理レベルが低下するから。首都圏に近いところでは、特徴のある草花類に対する市場は十分にある。10時~4時で働いてくれる質の高いパートが雇えるのであれば、若手の農家は規模拡大にチャレンジすべきだろう。