2019年カリフォルニア便り#6:ウエストフィールド・ショッピング・センターにて

 ロサンゼルスで開業したばかり、西海岸で最大のショッピングモールに行ってみた。今回の視察で分かったことは、少なくとも西海岸に限ると、食品関係の店舗ブランドは比較的元気だということ。新しい業態もどんどん生まれている。ところが、ECに押されて閉鎖や退店、破綻に追い込まれているSCが増えている。アパレルなどの非食品系の店舗はどうなっているのだろうか?百貨店とテナントの動向を見てみたいと思った。

 

 午前中に、八木さんから紹介されたデストロイヤーで朝食をとり、午後からはウエストフィールドSCに移動した。ちなみに、昨日から移動にウーバーを使っている。イエローキャブより親切で、車も綺麗な上に値段も安いが、それだけに使い過ぎてしまう。
 タクシーのように、その場では現金を払わないから、気がついてみると請求書が多額になっていそうだ。キャッシュレスとサービスの向上で、新しい移動需要を生み出したことは間違いない。
 しかし、ドライバー間の競争もある。手取りは75%plusチップだから、新規にドライバーを志願して、そんなに儲かる条件とも思えない。サービスは良くなり価格もそんなに悪くはないが、使いすぎる上に、プラットフォーマーだけが利益を得るモデルになっている。
 わたしの印象では、ドライバーはコンビニのオーナーばりに、本部の搾取の対象になりやすいのだろうと思う。本部だけが儲かり、利益配分が一方的になりがちなコンビニのように、米国でもウーバードライバーの組合ができているそうだ。
 参考までに、ロサンゼルス空港まで帰りのウーバーの運転手は中国人だった。試みに、彼にウーバードライバーの稼ぎを聞いてみた。毎日10時間働いて、1時間当たり平均16ドル。
 160ドルの稼ぎは、日本円で約2万円。自動車のメインテナンス、保険、ガソリン代などを差し引くと、手取りは50万円くらい?コンビニのオーナーと同じくらいにはなる。悪くはないだろう。ただし、個人事業主だから、将来の生活の保障はない。

 ウエストフィールド・シティには、20分ほどで到着した。ここで感じたことをいくつか。

1.百貨店の未来
 ノードストロームに入ってみた。ここは、ブルーミングデールとメイシーズも入っている大きなSCだ。売り場の構成は、通常の百貨店と変わらない。一階はコスメとシューズだが、什器が黒で統一されていた。二階の女性ものブランド衣料品、三階の紳士ブランドも、一階と同いテイストの黒の什器を使用していた。まるで、セレクトショップのように見える。
 先々月、閉店を撤回した上海の高島屋とは異なり、客はかなり入っている。百貨店の客層も、専門店ゾーンとはかなり違っている。金持ちのための売り場になっている。アジアから来た普通の日本人はここの客ではない、とでも言いたげな接客だった。せっかくの売り場改革も、これでは無駄になる。
 中野さん推薦のColeHaanのシューズを買おうとしたが、サイズと色がない。店員さんは売る気が全くない。専門店ゾーンで同じブランドを発見、接客のあまりの違いに驚く。値段もサービスも、、、

2.日本と米国の食文化交流
 岡山の源吉兆庵が、モールに出店していた。ニューヨークから始めて、西に向かってロサンゼルスで9店舗目。焼き菓子を日本から直送して販売している。どら焼きを買おうとしたが、品切れだった。米国に工場がないので、在庫が切れたら御免なさいになる。
 35年前に、和菓子や煎餅がアメリカで商売になるとは思っても見なかった。抹茶や寿司、ラーメンや天ぷらうどんを、普通に食べている。バークレイの丸亀製麺や一風堂には長蛇の列ができていた。アメリカ人が寿司やラーメンを食べるのは良いが、なんちゃって和食になっていて、値段も本国の2倍くらいしている。
 ロック・フィールドが温野菜のサラダに取り組むのならば、いとはんで販売している和惣菜を米国に持ってきてはどうだろうか?すでにお弁当は普通の部下になっている。ヘルシーで美しい、さらに新鮮で美味しい本物を提供しては?

3.その他のテナントの発見
①サングラス専門店のWarby
偶然に、商品のディスプレイが面白かったので入店した。サングラスと一緒に、本を展示してあったからだ。読むというコンセプト体と思ったが、若い店員さんの説明によると、40歳の創業者がビジネスアイデアを考えていたのが図書館で、その雰囲気を店舗にもちこむためだったらしい。
ニューヨーク発祥で現在、全米に約100店舗。八木さんのオフィス近く、kinney streetにも路面店があった。jinsに置いてあるようなフレームを、縦型に陳列している。ユニクロ方式だが、上下に、書籍を配置してある。
商品は日本からも輸入しているらしい。多分鯖江あたりからだろう。従業員の若者によると、渋谷と代官山にあるGLOBE SPECSというメガネ専門店が世界ナンバーワン。経営者は、岡田哲也?さん。日本に帰ってから調べてみる。

②アディダスストアで靴のサイズチェック
中野さんがアディダスで靴下を買おうとした。カラフルな婦人用のものだった。6足バンドルで安い。ただし、サイズがわからなかったので、日本との比較を尋ねてみた。25センチは、サイズ7であることがわかった。
よく見ると、やや高めのスポーツ靴には、欧米と日本、中国のサイズ対応表のタグが付いている。ブランドがグローバルになると、こんなことが起こる。

③フードコート
新しいショッピングセンターなので、新しめの飲食店チェーンが入っている。
マック、バーガーキング、スタバ、ケンタなどは入っていない。チポトレ、チツクフイレ、テンダーグリーンなど、自然派のブランドのオンパレード。アイスクリームやジャーズスタンドも、ナチュラルやオーガニック、プラントベースをアピールしている。
インポッシブルのパテやビヨンドの植物代替プロテインはごく普通のこと。テンダーグリーンなどでも、植物肉がオプションで選択できる。
アジアンフードもマストアイテムの1つ。もちろんインドカレーや韓国のプルコギ、寿司バーなども。美味しくて健康で、環境によろしいは常識になってきている。

4.おまけの事故
 昨日の帰り際に、ある店の入り口でドアに衝突してしまった。まだ店が空いていると思い、中に入ろうとしたら、入り口のガラス戸は閉まっていた。衝突したときに、眉間の横を切って血だらけになった。
 そのブランドとは、エバーレーンのロサンゼルス店。院生の岩佐くんが研究対象していたブランドのeverlane。価格透明性=原価を開示してECで伸びてきて、実店舗を持つようになったとは聞いていたが、まさかこんな事故に遭うとは。
 とんだドジを踏んでしまったが、女性の店員さんはとても親切だった。わたしが、顔の眉間からダラダラと血を流していたら、ペーパーでアルコール消毒をして処置をしてくれ、傷のうえからバンドエイドを貼ってくれた。感謝。中野さんが彼女の写真を撮らなかったことを悔やんでいた。