セブン-イレブンは、数店舗で予定していた生ビール(Sサイズ100円)のテスト販売を中止する決定を下した、7月20日付けの『日経新聞 朝刊』(ネットで同時配信)によると、発売前にSNSで情報が拡散されたことで、一部の消費者からクレームが寄せられたことが原因とされている。
数日前に、わたしも店頭での生ビール販売のニュースを知り、「さすがにセブンだ」と舌を巻いたものだ。創業以来、手をつけなかった店舗レイアウトを抜本的に変更し、実験店舗では売り上げが1.5倍に伸びているらしい。実際に実験店を視察したが、買いやすい売り場になっており、店内のオペレーション効率も高まっているのはまちがいない。
数年以内に、ほとんどセブンの店舗は、新レイアウトに変わっていく。おそらく二番手の二社も、セブンのレイアウト変更に追随することが予想される。コンビニのイノベーター、セブン-イレブンの面目躍如であった。
そして、セブンカフェに続く、今度の生ビールのテスト販売である。キリンビールとの思い切った取り組みだったが、セブンの本社が消費者からの意見を容れる形で、実験前から導入を取りやめてしまった。しかし、SNSが決断を鈍らせたわけではないだろう。
わたしの推測は、日経などのメディアの判断とは違っている。どちらかといえば、高いパフォーマンスを発揮してきた組織が、やや官僚化しつつあるのではないのか。成功体験を重ねてきた組織では、創業者でないマネジメントチームが極端にリスクをとることを恐れるものだからだ。
わたしの推論が当たっているとすると、この先、セブンが今回のような新商品(+新サービス)を導入することにブレーキがかかる可能性を心配する。いっぺんにはそうならないにしても、イノベーションに対して積極さを欠くようになる体質に組織が変わってしまうことを懸念するのは、わたしだけだろうか。
コンビニでの生ビールの実験は、やっていれば成功できたように思う。事実、コンビニではアルコール飲料を買う時に、レジで年齢のキーを押すようになっている。アルコール販売に法的にもチェックはかかっている。居酒屋などでも、客に「非ドライバーチェック」を課して確認しているのだから、基本的に問題はないはずである。
それよりなにより、セブンにとって痛いのは、ローソンとファミマをさらに突き放すチャンスを失ったことだ。セブンと同様に、二社は、キリンともPB商品で提携関係にある。それでも、セブンとの取り組みは、二番手の二社とは内容がちがっている。
サントリーもアサヒもサッポロも、コンビニとの関係は微妙である。キリンにとっても、今度の100円生ビール発売の中止は痛いだろう。ビール3社とコンビニとの今後の取り組みにも、セブンのテスト発売中止は大きく影響するものと思われる。
ローソンとファミマ、キリンを除くビール3社は、つぎにどのような手を打ってくるのだろうか。ここは静観すべきではないように思う。コンビニエンスストアの観察者としては、この先の一カ月間で何が起こるのか楽しみではある。