「食のデザイン・カンパニーに(上):契約栽培で素材力磨く」(日経MJヒット塾)
2017年7月17日号 岩田弘三氏(ロック・フィールド会長兼社長)・聞き手 小川孔輔
—売上高は2017年4月期に初めて500億円を超え、利益も過去最高を更新したようですね。
「外食市場が伸び悩む一方、中食は2015年に9兆6千億円と40年前の3千億円規模から伸び続けています。そんな中で中食に専念し、『新しい日本の惣菜(そうざい)をつくろう』と取り組んできました。人に良いと書いて食。物に心を込めた野菜と書き惣菜。日本の惣菜である以上、野菜を中心にしようとサラダが持っている多様性を生かしながら、健康とおいしさを追求してきた結果です」
—かつては、「神戸コロッケ」の会社というイメージがありました。
「神戸コロッケは1989年です。冷凍コロッケが主流でしたが、チルドでこだわりの味を売りにしようと百貨店に頼み込み、最初に入れていただいた高島屋大阪店では初日40万円売れました。単品のど迫力を出そうと特化したのがよかった。生野菜中心のサラダが本格的にスタートしたのは、静岡県の磐田市に安藤忠雄さんに設計していただいた基幹工場が完成してからです」
—「RF1」ブランドで展開し始め、顧客を大きく増やすきっかけとなったことはありましたか。
「1994年の『30品目サラダ』の発売です。当時、厚生省(現・厚生労働省)は食生活指針で栄養をバランスよくとるため1日30品目を目標に食べるよう勧めていました。お客さんからすれば、わざわざ30品目の食材を買って作るよりもいい。エクスキューズができたわけです。主婦が家で炊事をするのが当たり前の時代に、外でお惣菜を買うのに何となく後ろめたい気持ちがありましたから」
—健康にいい、食材を買いそろえるより無駄がないという免罪符ですね。
「最初の頃、数えたら29品目しか入っていなかったとクレームが来ました。それで大体30品目前後入れていますが、すごいですね、そこまでしっかり見ていただいている。我々は1品1品、絶対的な競争力がある生産者と連携しています。なぜ当たったかといえば、その素材力があったからです」
—食材の調達は契約栽培が中心でしたね。
「葉物の生野菜で70%以上、根菜でも60%ぐらいが契約栽培です。例えばジャガイモは北海道の北見で生産してもらっています」
「以前は、ジャガイモを機械で掘り出す前に葉や茎を枯れさせる薬剤が使用されていました。食の安全・安心が一番ですので、我々はオランダで使われているチョッパーという粉砕機を寄付し、枯凋(こちょう)剤を使わずに葉や茎を処理してもらいました。あまりにいいジャガイモなので、雪中備蓄しています」
—ただおいしいのではなく隠れた理由があると。
「この貯蔵方法ですと、少しずつ糖化が進むため、出荷時期によって甘さが微妙に違ってきます。味に飽きがこないということになるのではないでしょうか」
—季節感も取り入れ、多様性を重視しているので売り場の鮮度が高い。
「毎月およそ300種類のサラダを作り、店舗に毎日届ける。トヨタ自動車さんに教えていただき生産管理の仕組みを変えました」
<キーワードプラス> 雪中備蓄:
品質のよい男爵イモを1年間通して使えるように、雪を詰めたコンテナで貯蔵庫内の壁を覆い、その中で保存する。雪室(ゆきむろ)を応用した方法で、凍りつかないよう少しずつでんぷんを糖化させるため、甘みが増し、味わいの変化を楽しむこともできるという。
<岩田弘三 いわた・こうぞう>
1940年生まれ。65年神戸市内に欧風料理店を開業。72年ロック・フィールドを設立し、持ち帰り総菜1号店を大丸神戸店に出店した。サラダ・洋総菜の「RF1」など約320店(2017年4月末)を全国に展開。16年5月から現職。
◇聞き手は小川孔輔・法政大学経営大学院教授。5月31日の日経MJヒット塾特別セミナーでの対談を再構成しました。