スターバックスが3年間で失ったもの: スタバがCSでランキング上位から外れた4つの理由

 JCSI(日本版顧客満足度指数)の2017年度の調査結果(6月実施)が、サービス産業生産性協議会からリリースされた。カフェ部門で、CS第1位はドトールで三年連続。話題になっているのは、スターバックスが上位4社から外れたこと。業界6位に転落して、タリーズとは僅差だが72点。

 

 この得点(>72点)は、サービス産業全体で見れば、立派に合格点だ。しかし、スターバックスは2014年度にはCS(顧客満足)で1位を獲得していた。それが、2015年度に3位、2016年度には4位に後退していた。今年度(2017年度)の調査結果が注目されていたが、とうとう業界の中央値(上位4社まで順位を発表)から外れることになった。

 カフェ部門の調査対象ブランドは、ベローチェ、コメダ、サンマルク、スターバックス、タリーズ、ドトール、ミスタードーナツの計7社。スタバは、7社中の6位にCSが転落した。これまで(2009年~2014年)は消費者から圧倒的な支持を得ていたのだが。

 ここにきて、顧客満足(CS)だけでなく、今年も一位を維持することができていた顧客期待や知覚品質、推奨意向でも、評価スコアが微妙に悪化してきている。あるメディアが指摘しているように、その他のカフェのスコアが上昇したことが原因ではない。わたし自身が、さまざまな講演会で伝えてきた通りで、二年前からその予兆はあった。

 

 今朝の大学院の授業(マーケティング論)は、「サービスマーケティング」がテーマだった。利用経験がある大学院生(約40人)に、スタバがカフェ業界で顧客満足度の優位性を失っている理由をたずねてみた。彼らがスタバについて指摘したのは、4つのポイントだった。

 (1)コーヒーの値段が高い、(2)コンビニやマックは半値以下、その割にコーヒーが圧倒的に美味しいとは思えない、(3)店内の混雑がひどい、(4)一緒にいる客(中高生)がうるさい。

 JCSI(顧客満足度指数)の調査では、主要6指標やSQI(サービス品質指標)で、(1)~(4)の理由をすべて確認できる。実際に調べてみると、以下のようになる。

 

(1)値段が高い

 スタバのお値頃感(知覚価値)は、65点。業界最下位である(ドトールは72点)。もともと値段が高いことは承知の上で消費者はスタバを利用している。自宅と職場以外の三番目の場所(サードプレイス)を提供するブランドなので、その点はかつてはほとんど問題にはならなかった。しかし、(3)と(4)が満たされなくなった。今、お値ごろ感を失ったことで、CSがじりじりと低下してきている。

 

(2)美味しいコーヒー

 セブンカフェやローソンのマチカフェ、マックカフェが100~150円で美味しくなった。相対的に、スタバのコーヒーが魅力を失なったと言えるだろう。SQIの評価では、「Q10 メニューやサービスに特徴がある」では、高い評価(5.27点:7点満点)を得ているが、「Q12 商品・サービスの価格表示は適切である」の項目(4.88点)では、他のすべてのチェーンより評価が低い。価格と品質のバランスが崩れていることを推測させる。

 *2013年ごろ実施したブラインド調査(小川研究室)で、スタバのコーヒーは、美味しさでセブンとマックに負けていた。

 

(3)店内の混雑

 「Q19 店内で客が多すぎずすくな過ぎず」の項目は、3.83点。カフェ業態では唯一の3点台。マクドナルドの3.90よりスコアが低い。ある社会人大学院生は、「混みすぎて落ち着かないから行かない」と憮然として話していた。ただし、「Q20 従業員の身だしなみがよい」や「Q21 従業員の知識」などでは、他のカフェを上回る評価を得ていた。

 

(4)一緒にいる客がうるさい

 その通りの結果が出ている。「Q15 他の顧客のマナーが良い」で、スタバは4.50点。ベローチェ(4.22点)やドトール(4.38点)よりは上だが、その他のカフェよりは低いスコア。スタバはその昔は、客層が良いことが自慢だったはずだ。

 

 データを総括してみよう。スターバックスの現状は、従業員の接客と清潔度(業界一位)を除くと、かつてのような差別的な優位性が見られなくなった。この先、スタバはどうなるのだろう。値段を下げても解決にならない。問題は、(2)~(4)に対してどのような手を打てるかだろう。

 駅ナカや空港など、たくさんの中小規模店を出してきたことで、日本中でスタバが氾濫してしまった。珍しさがなくなって、働く職場としての魅力もかつてほどではない。1990年代にマクドナルドが「サテライト店」を出して失敗したことに通じるものがある。

 なお、ブランドに驚きがなくなったことで、感動指数(49.4点、ほぼコメダの水準)も並みのブランドの水準に落ちている。さらに問題を指摘すると、混雑や他の顧客のマナーなど、理由は多々あるのだろうが、ブランドに対する失望指数(19.9点、ミスドでも18.1点)が異常に高くなっていることが気になる。