(その7) 「東京マラソンの大会裏事情」『北羽新報』(2017年2月20日号)

 東京マラソ2017のエントリーが本日から始っています。わたしは明日、東京ビッグサイトに行くつもりです。去年までは、小田急ランドフローラさんのご厚意で、新宿のハイアットの宿泊予約をお願いしていました。今年からは、書斎を借りている森下(墨田区立川)に前泊となります。

 

 わたしの書斎は、墨田区と江東区を跨いだ大通り、清澄通り沿いにあります。千葉からも近いので、次男(真継)の家族(あずちゃん、穂高くん)も応援に駆け付けてくれそうです。

 2007年の第一回大会から、これまで10年間で9回も東京マラソンを走れています。銀座の目抜き通りを走らなかったのは、第二回大会のみです。それも、単にエントリーをしていなかったからでした。

 そんなわけで、大会の舞台裏について非凡でない知識と情報をもっています。エントリーの裏側を白日の下に晒してしまうことにしました。10回続けて抽選に外れているひとが多いなかで、なぜ9回も連続して走れているのか?大会のエントリーを中心に、地元紙(2月20日付)で、マラソン大会の舞台裏を紹介しました。

 

 

(その7)「東京マラソンの大会裏事情」

『北羽新報』2017年2月20日号 小川孔輔

 
 今回は、個人的な趣味の話を書かせていただくことにします。わたしは9年連続で東京マラソン(2月26日開催)を完走する予定です。第一回大会では3倍だった抽選倍率が、年を重ねるごとに人気が高まり、今年の競争倍率は12・5倍の狭き門になりました。

 歳末大売出しの抽選会でティッシュペーパーしかもらえなかったわたしですが、なぜかマラソン大会の抽選だけは強運なのです。東京マラソンは、第1回大会(3倍)、第4回大会(7倍)、第6回大会(10・5倍)、第9回大会(10・7倍)、第11大会(12・5倍)と、なんと5回も当選を果たしています。10回応募のうち(第2回大会は応募せず)、半分は抽選で外れています。

 それにもかかわらず、第3回大会から9年連続で東京マラソンに出場できているのは、一般出場者(約3万人、推定)の枠外に「特別枠」があるからです。よく知られているのは、協賛企業が確保している「スポンサー枠」(推定3000人)と、東京都が認定するNPO活動に10万円を寄付すると付与される「チャリティランナー枠」(3000人、募集人数)です。某企業のコンサルティングをしている関係で、これまで3回ほど特別枠をいただいて、東京都庁前のスタートラインに整列させてもらっています。その企業が提供するTシャツと帽子をかぶって、42・195KMを走り切ることが参加条件になります。宣伝効果を狙った「走る広告塔」の役割を演じることが義務になるわけです。

 

 ところで、東京マラソンの実現にもっとも貢献があった人物を、皆さんはご存知でしょうか?最大の功労者は、石原慎太郎元知事なのです。いまや石原元知事は、現職の小池百合子知事に豊洲市場移転問題で、当時の政治工作について不手際を厳しく追及されています。しかし、2020年に東京オリンピック・パラリンピックを誘致するため、発射台として東京マラソンの開催に尽力したのは石原知事だったのです。

 当時の状況をいまでもよく覚えています。2月は受験シーズンです。都内の大学には、地方から多くの受験生がやってきます。山手線の内側でマラソン大会を開催するわけですから、半日は都心の主要道路を通行止めにしなくてはなりません。マラソン開催には、警察や地下鉄会社をはじめ、反対意見が多数を占めていました。石原知事としては、それでも東京オリンピック誘致のため、銀座の目抜き通りを一般ランナーも走ることができる、四年に一度のオリンピック予選会レースにしたかったのです。

 強引な振る舞いに批判はありますが、ランニング業界にとって石原知事は救世主だったと言えます。2007年に東京マラソンが始まってから、大阪と神戸(2011年)、京都(2012年)など、それまではハーフマラソンだった大会がフルマラソンに衣替えしていきます。大会への参加者もうなぎ上りに増えていきました。女性ランナーも増えました。

 

 ちなみに、東京マラソンをはじめとして、日本の大きなマラソン大会を陰で支えているのは、「アールビーズ」という従業員約150人のちいさな会社です。『月刊ランナーズ』(20万部)を発行している雑誌社で、ランナー仲間にはよく知られています。編集長は下条由紀子さん。青梅マラソンをはじめて走った女性ランナーです。社長兼旦那さんは、わが友人の橋本治朗さん。法政大学出身の元写真家さんです。

 アールビーズ社は、RUNNETという大会エントリーサイトの運営で日本最大のシェアを誇っています。東京マラソンのゴールタイムが気になる方は、公式サイト(アールビーズ社運営)で「小川孔輔」と入力すると、わたしのゴールタイムがチェックできます。これまでの東京マラソンのベストタイムは、3時間58分32秒(第4回大会、58歳)です。今回も恥ずかしくない走りをしたいと思います。

 

(法政大学経営大学院イノベーションマネジメント研究科教授・能代市追分町出身・東京都墨田区在住)