今回は、以前から温めてきた能代市の産業振興の話を紹介します。栽培を提案するのは、チューリップやダイアなどの切り花球根です。地球温暖化と国際貿易の基調変化が、能代を切り花球根の産地として育成する条件が整ってきています。いま農業分野には比較的容易に補助金が落ちてきます。
「能代をチューリップの球根産地に:地域農業発展の起爆材に」
『北羽新報』2016年12月23日号
『北羽新報』2016年12月23日号
能代高校の同期生で、合併前に二ツ井町長をしていた丸岡一直君と、東京の神保町で再会することがありました。8年ほど前のことです。
きっかけを作ってつくれたのは、「(株)夢市場」の社長している小野敏明さんでした。夢市場は、神奈川県横浜市の青葉区(田園都市線)で「マザーズ藤が丘」というオーガニックスーパーを運営しています(現在4店舗)。
この店では、できるだけ農薬や化学肥料を使わないで栽培された切り花(MPS認証品)を扱ていました。販売していたのは、わたしが会長を務めているJFMA(日本フローラルマーケティング協会)の子会社(MPSジャパン)がオランダから導入したシステムにしたがって栽培された花。バラやキクやガーベラにまじって、春先にはチューリップやフリージア、ユリの花があったことを覚えています。
きっかけを作ってつくれたのは、「(株)夢市場」の社長している小野敏明さんでした。夢市場は、神奈川県横浜市の青葉区(田園都市線)で「マザーズ藤が丘」というオーガニックスーパーを運営しています(現在4店舗)。
この店では、できるだけ農薬や化学肥料を使わないで栽培された切り花(MPS認証品)を扱ていました。販売していたのは、わたしが会長を務めているJFMA(日本フローラルマーケティング協会)の子会社(MPSジャパン)がオランダから導入したシステムにしたがって栽培された花。バラやキクやガーベラにまじって、春先にはチューリップやフリージア、ユリの花があったことを覚えています。
チェーリップは、新潟県白根市の生産者(西脇農園)が供給していました。新潟県の対岸はロシア大陸です。MPS参加者の西脇博雄さん父子は、新潟のチューリップ生産者としてはじめてロシアのウラジオストックに国産のチューリップ(2万本)を輸出した農家として有名でした。現在、農水省が国策として取り組んでいる「国産農産物(花き)の輸出プロジェクト」の優良事例のひとつでした。余談になりますが、チューリップ一本の小売価格は、輸出が始まった当初は400円~500円だったようです。日本の小売価格(100~150円)と比較すると約3倍の値段です。
そんな話をしていたら、「そういえば、浅内の浜に黒鉱の鉱滓堆積場跡地があったよね」と丸岡さん。彼は素波里ダムから水を引く、大規模な農地開発があり、減反対策との兼ね合いで、うまく利用できないでいる農地が多いことを教えてくれました。とにかく、能代山本地区には遊んでいる土地は山ほどあるらしいのです。
「それなら、能代をチューリップ球根の一大産地にしてみてはどう?」とわたしから提案してみました。しかし、ふたりともその後は仕事が忙しくなり、球根の産地形成のアイデアは、休眠状態のまま約8年が過ぎていました。黒鉱の跡地にはその後、能代浜から浅内浜にそって30基ほどの風力発電用の風車が林立しています。今年の夏も能代に帰省しましたが、そのときもガンガン音を立てて回っている風車を仰ぎ見ていました。
「それなら、能代をチューリップ球根の一大産地にしてみてはどう?」とわたしから提案してみました。しかし、ふたりともその後は仕事が忙しくなり、球根の産地形成のアイデアは、休眠状態のまま約8年が過ぎていました。黒鉱の跡地にはその後、能代浜から浅内浜にそって30基ほどの風力発電用の風車が林立しています。今年の夏も能代に帰省しましたが、そのときもガンガン音を立てて回っている風車を仰ぎ見ていました。
さて、思い立って8年ぶりで丸岡君に電話をしてみました。堆積場の跡地がどうなっているのかを知りたかったからです。実は、わたしたちが忘れていた8年間で、チューリップの輸入球根をめぐる情勢が大きく変わっているからです。
まずは、当時は為替レートが1ドル=80円の円高でした。いまは115円の円安に変わっています。新潟の西脇農園のような輸出用作物の栽培業者にとって、円安は願ってもないチャンスです。つまり、能代でチューリップの球根を作っても儲かる条件が整ったのです。
仙台や東京にチューリップの切り花を出荷するでは、鮮度保持の問題もあるので、商売上は不利です。消費地には運びにくいので、国内の切り花生産者向けにチューリップやユリの球根を作るのです。
チューリップの産地は、富山県や新潟県と思われるかもしれません。ところが、地球温暖化の影響で、球根栽培にとって適地が北上しているのです。いまはむしろ北海道や東北地方のほうが条件がよいのです。よく似た例があります。ワイン用のブドウの産地は、山梨や長野から青森や山形に移っています。気温が上昇したおかげで、50年後には樺太に産地が移動するのではないかと言われているくらいです。
そして、貿易にまつわる国際情勢の変化です。TPP(環太平洋経済連携協定)は、先ごろ国会を通過しましたが、米国が簡単に批准すると思えません。農産物全般でも、水不足や土壌流出で、世界の三大穀物地帯がピンチです。輸出規制がはじまる可能性があります。
また、世界最大の花貿易国オランダの情勢を見ていると、球根生産は機械化に適した平坦な土地が有利なのです。粗放型の農地で、自動運転のトラクターで耕作できる条件が整った場所を国内で探せばよいのです。その適地は、輸送に難がある北東北地方にあるのではないでしょうか。
まずは、当時は為替レートが1ドル=80円の円高でした。いまは115円の円安に変わっています。新潟の西脇農園のような輸出用作物の栽培業者にとって、円安は願ってもないチャンスです。つまり、能代でチューリップの球根を作っても儲かる条件が整ったのです。
仙台や東京にチューリップの切り花を出荷するでは、鮮度保持の問題もあるので、商売上は不利です。消費地には運びにくいので、国内の切り花生産者向けにチューリップやユリの球根を作るのです。
チューリップの産地は、富山県や新潟県と思われるかもしれません。ところが、地球温暖化の影響で、球根栽培にとって適地が北上しているのです。いまはむしろ北海道や東北地方のほうが条件がよいのです。よく似た例があります。ワイン用のブドウの産地は、山梨や長野から青森や山形に移っています。気温が上昇したおかげで、50年後には樺太に産地が移動するのではないかと言われているくらいです。
そして、貿易にまつわる国際情勢の変化です。TPP(環太平洋経済連携協定)は、先ごろ国会を通過しましたが、米国が簡単に批准すると思えません。農産物全般でも、水不足や土壌流出で、世界の三大穀物地帯がピンチです。輸出規制がはじまる可能性があります。
また、世界最大の花貿易国オランダの情勢を見ていると、球根生産は機械化に適した平坦な土地が有利なのです。粗放型の農地で、自動運転のトラクターで耕作できる条件が整った場所を国内で探せばよいのです。その適地は、輸送に難がある北東北地方にあるのではないでしょうか。
ダイヤの育種家として世界的に著名な鷲沢幸治氏は、秋田県の出身です。秋田空港近くで、「雄和ダリヤ園」を開いています。そして、能代でのチューリップの産地形成に応援してくれるそうです。技術と資金の投入が問題ですが、取り組んでみる価値はあるようです。