【学生感想文】石井良明著 『成城石井の創業―そして成城石井はブランドになった』 日本経済新聞出版社

 学生読書感想文優秀作品 6名の感想文を掲載する。


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「『成城石井の創業』を読んで」 黒沢英五

 成城石井というとまず思い浮かべるのは、「高級スーパー」である。セレブご用達で、どの商品も品質は良いのかもしれないが値段が高いという印象を持っていた。私のような学生にとっては、スーパーに求めるものはやはり品質よりも値段なため、この成城石井にあまり親近感を持っていなかった。自宅の近所に成城石井があるが、ある時まではほとんど利用することがなかった。ところがある日を境に、少しだけこの成城石井を利用する機会が増えた。それについては後述する。それに加えて本書を読み終えると、成城石井には創業者の確かな努力に裏付けられた大きな価値があるのだと知り、もっと成城石井を利用してみたいと思うようになった。本書の中で特に感じられたのが、「妥協しない強さ」である。

 まず見受けられたのが、「消費者目線」だ。「お客様がほしい」、「お客様が選びやすい」といった表現が随所にみられた。また、魚部門の創設や惣菜の導入、営業時間の延長などは、すべて消費者の声に耳を傾け、消費者のためを考えた施策である。特に魚部門の売り上げが伸び悩んだ際、すぐさま東京の一番店に取引先を替えたという話が衝撃だった。スーパーマーケットにとって、「品質」と並んで重要な要素である「値段」を一考する余地もなく、地域で一番質の良いものを取り入れようとするところに、品質には妥協しないという精神と成城石井のブレないコンセプトを感じ取ることができた。
 さらに感じたのが、「潔さ」だ。石井氏は、一番良いものを売るために、自分の目で見て自分の舌で確かめることを決して怠らなかった。なるべく産地の市場で買い付けることを徹底し、石井氏自ら全国各地に飛び回って良質な商品を探し求める姿勢に感銘を受けた。しかしここまでするとなると、自分の舌が絶対権力を持っており、何においても自分が決める、自分が納得するものしか出さないという、頑固でワンマンな一面があるかと思われた。しかし本書の中盤で、「私自身もワインが好きで勉強していましたが、やはり素人には本当に品質の良いワインを鑑定することはできない」と述べられており、その道のプロフェッショナルの力を借りたり、コンサルタントに依頼したりもしていた。
 つまり、「自分でできる範囲は自分で、ただし、自分にできない範囲はプロに任せる」という潔い姿勢が見られた。経営者には多かれ少なかれ「こだわり」があるに違いない。したがって、自分が主導する範囲と他人に任せる範囲の区別は、非常に難しいことだと思うため、この潔さは素晴らしいと思った。そしてまたここにも、「品質に妥協しない強さ」を感じ取ることができた。

 ところで私は、ある日を境に成城石井を利用する機会が増えたと先述した。私には成城石井にまつわるこんなエピソードがある。私の家庭では、特別な日にはステーキが定番だった。とりわけ私が独り立ちするようになってからは、実家に帰るたびに母親からステーキが振る舞われた。部位はいつも決まって牛の「ランプ」。もも肉の特にやわらかい部位で希少な赤身肉とされている。そのため、私も何かうれしいことがあった日には、このランプステーキを自分で焼いて食べていた。

 さて、今年の初夏、母親が1泊2日で東京に遊びに来たときである。初日の夜は、家でお決まりのランプステーキを焼こうということになった。私がいつもステーキ肉を買うのはクイーンズ伊勢丹だった。しかし家から徒歩15分と遠いため、より近い成城石井で買おうということになった。しかし私は「伊勢丹」というブランドに捉われ、クイーンズ伊勢丹信者だったため、成城石井の肉にはあまり期待していなかった。
 ところがどっこい、いざ成城石井のランプステーキを1口食べた瞬間、舌を巻いた。母親も驚いていた。まったくクセが無く、非常に柔らかいのだ。今まで食べてきたステーキの中で間違いなく一番美味しいという意見が母親と一致した。それ以来、精肉を買うときは成城石井に行くようになったのだ。そして今回本書を読み、石井氏の「品質に妥協しない強さ」を知ることによって、このステーキの美味しさに大いに納得がいった。ぜひこの本は、母親にも読ませてみたいと思った。

 上京してきてから4年、東京にはおいしいものが集まっているとつくづく思わされたものだが、それは品質に妥協しない石井氏のような方達が一生懸命良いものを探し周り、お客様に提供したいと努力した結果なのだろう。そういった方達に感謝しながら、これからも美味しいものを食べていきたいと思った。その1つのツールとして成城石井を積極的に利用したいと思ったが、すべての食料品を成城石井で賄うには年収2000万が必要と述べられていた。成城石井を普段使いできるようになるには、まだまだ、いや、一生来ないのかもしれない…。

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「『成城石井の創業』を読んで」 八木悠太郎

 私はこの本を読みながら、よく利用するサクラテラス飯田橋店を思い出していました。2014年に法政大学のそばにオープンするまで、私は成城石井を訪れたことはありませんでした。初めて訪れたとき、おしゃれなお菓子やお酒が並んではいるが、どれも価格が高く大学生は隣のローソンで買うだろうなと考えながら店内を見て回りました。
初めて成城石井で買い物をしたときは大学の後期試験が終わった日でした。全試験が終わり晴れ晴れした気持ちで友人と帰る途中で「少し贅沢をしよう」ということで、成城石井のお酒コーナーに立ち寄りました。

 改めて見てみると本当にたくさんの国のお酒があり、ビールだけでもさまざまなフレーバービールが揃っていました。私は「ブルームーン」というあまり見かけないオレンジ風味のビールとチーズの盛り合わせを買い、友人たちと小さい打ち上げをしました。そこから私の中で成城石井は放課後のちょっとした贅沢という位置づけになりました。
これはあとで知った事なのですが、サクラテラスと一緒に建てられたマンションは、いわゆる「億ション」らしいです、マンションの住民は学生とは違い、ここで日常の買い物をしていると思うと、私自身頑張ろうという気になります。

 そんな事を思い出しながら読んでいると、私は成城石井創業者の石井良明さんの戦略にはまってしまっていると感じました。
 コンセプト決めの段階で他の大手チェーンのスーパーマーケットと競合するのではなく共存を考えたのは驚きでした。あえて普通の商品を切り捨てることで、品質の良いものを欲する層をターゲットに、成城や田園調布に店構えをすることで見事コンセプト通りの狙いを当てる事が出来ました。
私自身、サクラテラス店を利用するときは、隣のローソンを併用し、成城石井では高いお酒、おつまみはローソンの普通のスナック菓子といった「共存」を、知らず知らずのうちに行っていました。このことから一貫したコンセプトによって作られた店舗は、大きな店舗に飲まれず、むしろお互いに良い関係を構築できることがわかりました。

 スーパーマーケットを経営する上での経営者の考え方を学ぶ事ができたので、私自身が来年から社会人として働く際に、経営者の考えをしっかりと汲み取った提案をしたいと思います。食品メーカーの営業として働くと思うので、自社製品の商談の際に成城石井のような高級路線のスーパーマーケットや、イオンなどの普通のスーパーマーケットごとに、コンセプトに合った商談ができれば必ずお互いに良い関係を構築できると考えます。
他にはレイアウトについても学ぶ事ができ、営業として活かせると考えました。先月行われた内定者懇親会の際に、営業の社員の方が「自社の棚割りだけでなく、お菓子コーナー全体を考え、いかに顧客の売上に貢献できるか」という話を聞きました。
 この本では「お客様がストレスのないように並べる」と書かれており、先ほどのお店のコンセプトとお客様のニーズのバランスをしっかりととり、ふと手に取ってしまうような売場作りを心がけたいと思います。

 また、アメリカのスーパーマーケットを例に、個性的でエンターテインメント性の高いレイアウトが紹介されていました。最近の日本のスーパーマーケットでもこのような売場が増えてきていると実感します。
大型のイオンを訪れたときに、ブルボンのお菓子が電車に積まれて売られていました。お菓子売り場を通る人は少ないと言われていますが、このインパクトがあれば必ずお客様は目を惹くと思います。
このような人々が驚くような自由な発想が根強いファンを獲得し、成城石井のように固い基盤を作る事ができると考えます。

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「『成城石井の創業』を読んで」 斉藤舜人

 私は今まで、成城石井をあまり利用してこなかった人間である。なぜかというと、私の中のイメージでは、「成城石井の商品は高く、高級なスーパーマーケットだ。」というものだったからだ。しかし今回、『成城石井の創業』を読んで、成城石井の魅力に取りつかれたのが事実である。

 私は、この本を読み終えてから実際に店舗に足を運んでみた。そこで、店内の商品を見て驚いたのは、普通のスーパーでは全く見たことのないものばかりが並んでいたことだ。たしかに、商品一つ一つの価格は一般的なスーパーで取り扱われているものよりは少々高いのだが、それ以上に興味を持もてるものばかりだった。この本の中で述べられていた成城石井の戦略の中で、私が一番印象に残ったのが「差別化」である。
成城石井のコンセプトとして、他の所には置いていない一番いい商品を揃えるというものがあった。私が実際に店舗に足を運んでみて感じたのは、まさにこれだった。惣菜、パン、お菓子、全てにおいて他のスーパーとは違ったが、中でも一番はワインだった。やはり、本文でも述べられていたが、特に力を入れているだけのことはある、多種多様な品揃えであった。言い方は幼稚な気もするが、たとえ商品を買わないとしても、眺めているだけで楽しいのである。私はまんまと成城石井の経営戦略にはまってしまったのである。
 
 もう一つ私がこの本を読んで感じたのは、徹底された「消費者目線」での店づくりが行われているということだ。本書の書き出しに、「スーパーマーケットのルイ・ヴィトン」と書かれてあった。これは、「いつ行っても質も味も良い商品ばかりが置いてあり、消費者の期待を裏切らない」という信頼を得ていることだと述べられていた。
成城石井は、一番いいものを揃えることに対し、一切の妥協を許していないように感じられた。とても印象的だったのが、商品は自ら探しに行くものというところで、問屋の売り込みを鵜呑みにせず、自らの足を動かして日本全国各地のおいしい商品を探しに行くということだった。これらを通じて、いかに顧客を納得させ、満足させるかという成城石井の考えが感じ取れる。
本文の中で、「ブランドをつくる主体はお客様である」と述べられていたが、このことを実に完璧に体現しているのだと感じた。商品の質はもちろん、消費者のブランドロイヤリティがなければブランドとして確立しないだろう。成城石井は、何よりも第一に「顧客目線」だったからこそここまでの成長があったのだと私は感じた。
 
 ここまで、「差別化」と「消費者目線」について感想をのべてきたが、ここで私の体験談を書いていこうと思う。
 
 私は水道橋のバーでアルバイトをしている。いわゆる呑み屋なので、おつまみや乾き物を取り扱っているのだが、実は成城石井のものがほとんどである。そこで、「近くに他のスーパーも多数あるにもかかわらず、なぜ成城石井を選ぶのか」という質問をマスターにしてみたのである。すると一言、「他のスーパーに置いてある商品より明らかに質が違うから」という答えが返ってきたのである。そこでわたしも商品の食べ比べをしてみたが、成城石井で扱っていたもののほうが美味しく感じたのは事実である。マスター曰く、「飲食などのサービス業として接客するにあたり、お客様に満足していただくことが大前提。その中で私が、本当に質が良く信頼できる商品を置いていたのが成城石井だった。」とのことだった。この会話を通して、私は改めて成城石井の商品戦略のコンセプトに脱帽の意を感じた。
 
 今回この本を読んでみて、やはり成城石井は、一般的なスーパーとは全く違う色を持ったスーパーなのだと改めて感じた。著者である、元社長の石井氏が「迷った、難しい道を」と述べていたが、経営上の都合を優先せず、顧客目線第一に優先し、自らにストイック且つ妥協を許さない店づくりがあったからこそ、いまの絶対的な地位が確立されているのだろう。
 初めに述べた、私自身が店舗に足を運んでみて感じた魅力とは、スタッフが自ら現地に出向き、消費者ニーズに対応した絶対なる自信のある商品の数々、それを自分で体験する楽しさなのだろう。もはや、スーパーマーケットという名のテーマパークであると私は感じた。大袈裟かもしれないが、成城石井の商品棚にはそれだけ魅力が詰まっていた。一回足を運んだだけでわかる成城石井のコンセプト、これらが成城石井一番の強みであり、他のスーパーとの違いを生み出す絶対的な武器なのであろう。

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「成城石井の創業」 栗原一

 成城石井は、私がこの先活用していきたいと思っているスーパーマーケットのひとつです。というよりも、いい意味で今現在はほとんど活用しないお店であります。
 少し前に、成城石井にお酒を買いに行ったことがあるのですが、少し驚きました。いつも自分たちが飲んでいるようなお酒が見当たらなかったのです。陳列棚にはいつもスーパーで目にする商品ではなく、見たことのない商品が大きなウェイトを占めていました。少し言い方が悪いですが、どこでも買えるような安価な缶チューハイよりも見たことのない、おいしそうな缶チューハイがずらりと並んでいました。どこのメーカーでどんなものを使っている商品なのだろうと、思わず手にとって見てしまいました。単純に興味が湧いたのです。

 私が注意深く見たのは缶チューハイ周辺の陳列だけでしたが、そこだけ見ても成城石井というスーパーのオリジナリティを感じました。成城に住むお客様に向けて、一番いいものを売るという創業当初からのコンセプトが、実際に店頭に並んでいる商品から汲み取ることができました。普通のものは売らず、大手の大きいスーパーマーケットとの競合を避け、共存するというアイディアが、正に成城石井の現在を形作っていると思います。本書には成城石井のことを「専門店の集合体」と比喩されていましたが、まさにその通りで、便利な人にはとことん便利なお店なのだと思います。さらに、その人たちからみたらコストパフォーマンスが高いので、必然的にコアなファンを獲得できるでしょう。

 私のもともとの成城石井に対するイメージは、価格設定の高い、富裕層向けのスーパーでした。コストパフォーマンスが高いという事実は知らなかったので、私から見たら、なぜ価格が高いのにこんなに人が入っていて人気なのか不思議でもありました。しかしそれは、いいものを安く売ることができる「専門店」ならではの強みを追い求めた戦略の結果なのだと理解しました。そうなると、もう一度成城石井に行って商品や陳列をしっかり見てみたいと思いました。
 この専門店を追い求める過程では、人脈が非常に大事になってくると思います。本書でも述べられていた通り、特にお酒に関しては専門性の高いプロフェッショナルの力を借りなければ、良質なものをできるだけ安くすることは不可能だったと思います。石井良明氏がプロフェッショナルとの人脈を構築したからこそ、成城石井は成長したといっても過言ではないと思います。もちろん、まず周辺の情報を得なければそういった人物に出会うこともできませんし、何も始まりません。情報が人脈を呼び、人脈が情報を呼んだと言うべきでしょう。情報を価値に変えるとはまさにこのことだと思います。情報を呼び込み、人脈を広げることは商売のみならず、この先の人生において非常に役立つことなので、参考にしたいと思います。

 人事戦略においてひとつ興味を持ったのが、レジの3人体制です。私自身、コンビニのアルバイトでレジをずっとやってきたので、コンビニエンスストアとスーパーの違いはあれど、3人体制というのは斬新だと思いました。レジは来店されたお客様が必ず通るポイントであり、お客様と直接やり取りするので、良くも悪くもそのお店の印象を決めます。成城石井は、袋詰め担当のサッカーを配置して稼働率を1.7倍にできたことで、確実に良い印象を与えているでしょう。早いだけでなく、スキルのあるサッカーなので尚更です。
 また、これは個人的に思うことですが、チェッカー、キャッシャー、サッカーと、3人もの人員が同時に自分のために作業してくれるので、お客様としては心理的な部分でも早さを感じるのではないかと思います。コンビニでは、全てを1人で素早く行わなければいけません。素早さを意識しすぎるとかえってレジ操作でミスをしてしまい、クレームにつながるといったこともあります。成城石井で買い物するお客様は、ある程度成城石井に来たくて来ているお客様なので、最後のレジでのサービスで満足していただくという点はコンビニよりも重要度が高い気がします。

 成城石井がブランドとしての地位を獲得してきたのは、数え切れないほどの経営者の尽力があってこそなのだと、この本を読んで思いました。無印良品では、コンセプトとして「これでいい」でしたが、成城石井では逆に「これがいい」、「ここでしか買えない」と思わせる商品戦略をたてています。やはり商品が強いお店は強いのだと思いました。

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「成城石井の創業を読んで」 丸山梨花子

 「スーパーマーケットのルイ・ヴィトン」これは、ある英国新聞記者が成城石井を評した言葉で、本書の5ページに書かれている。私はこの言葉の〝スーパーマーケット″という言葉に違和感すら覚えてしまった。というのも、私の中で成城石井はスーパーマーケットではなく、百貨店やデパ地下などに近い〝高級デパート″という位置づけであったからだ。この認識こそ、成城石井が他のスーパーマーケットとの差別化・ブランド化に成功しているなによりの証であろう。
 成城石井がいかにして、この差別化・ブランド化に成功したかが本書で説明されていた。その中でも、成城石井ブランドを支えているのは「本物を安く売る」というぶれないコンセプトであると感じた。このコンセプトを維持し続けたからこそ、それが消費者からブランドとして受け入れられるようになったのだ。
 以下、成城石井の「ぶれないコンセプト作り」の過程とそこから学ぶべき未来の小売業のあり方を中心に話を進めていきたい。

 価格ではなくて本物の商品で勝負する。これが成城石井のぶれないコンセプトである。本書のなかでは「本物を安く売る」、「専門品の集合体」という言葉もあった。この強力なコンセプトが作られた背景には、成城石井の原点である石井食料品店時代のある出来事が関係していた。
 石井食料品店は1950年から成城学園前駅で営業を開始し、果物や酒類を中心に販売していた。しかし、1965年に目と鼻の先にOdakyu OXが開店しその威力に衝撃を受けた。そしてこの大型スーパーマーケットに対する競合対策として筆者が考えたのは、Odakyu OXに置いていない商品を置くことである。
それでは、具体的にどんな商品を置くのか。ここで筆者は成城という土地に目をつけた。成城は東京でも屈指の高級住宅街であり、一流のものを知っている人が多く普通のスーパーマーケットに売っているものでは満足できないというニーズがあった。実際に石井食料品店でも値段は高いけれども品質は良い果物が売れていたそうだ。そこで、思い切って普通の商品を品質のいい商品のみを扱うことを決めたのだ。

 このように、成城石井のコンセプトはOdakyu OXに対抗するため、成城という街のニーズに対応するために作られたものであったのだ。スーパーマーケットの広告をみるとどの店も低価格を押し出している店が多い。成城石井のこの思い切ったコンセプトは斬新であったと共に、成城石井でしか買えない商品を求めて多くの客を呼び寄せた。

 次に、成城石井がいかにしてこのコンセプトを店舗で実現したのかをみていきたい。
コンセプトは先ほども述べたように「良いものを安く売る」である。私は、この良いものに対する筆者のこだわりに驚いた。まず、仕入れの際に各部門にうるさく言っていたのが「一番良いものを売れ」ということだった。これは全ての商品に対して求める基準でああり、スーパーマーケットとはいえ全て一級品が集まる専門店のような店を目指した。
 次に、どうやっていい商品を見極めるか、それは自分の足で市場に行き自分の舌で判断するという方法だった。問屋のおすすめのものではなく、北海道でも京都でも世界でも必ず自分の舌で確かめることで、手間はかかるが他のスーパーマーケットには無い成城石井独自の商品を発掘していったのだ。
 私は法政大学のそばにある成城石井にたまに行くことがあるが、一度入ると長い時間滞在してしまうことが多い。それは、成城石井の中で新しい商品に出逢えるからだ。普通のスーパーマーケットやコンビニは見慣れた商品ばかりなのですぐ決めて買うが、成城石井こんな商品あったんだ!という発見が多くて店を回っているだけで楽しい。これは、レイアウト等の工夫とそして何より成城石井の本物をみつけるための努力を惜しまなかった結果であると思う。
こうして本物を探し続けた結果、商品の質の良さが広まり成城石井というブランドが実現したのである。

 成城石井は価格ではなく質のいい商品にこだわることでブランド化を遂げた。現在フィールドワークをしているナチュラルローソンでもコンビニエンスストアではあるが、健康食品やオーガニックに力を入れている店である。筆者も述べているように、少子高齢化や嗜好の多様性に伴ってこれからはみんな同じものを安く売るのではなく何かに突出した専門店のような店が求められる時代かもしれない。

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「『成城石井の創業』を読んで」 越阪部龍也

 正直に言うと、私は普段の生活で何かを購入するために、成城石井にわざわざ足を運ぶことがない。なんとなく無意識のうちに高級感を感じ取り、入りにくささえ感じていたように思う。そのため、どのように成城石井がビジネスを成り立たせているかが分からなかった。しかし、本書の成城石井の歴史・コンセプト・戦略を読み進めていく中で、成功の理由が理解できたと思う。本書では、石井さんが元々働いていた石井食料品店がスーパーマーケットとして、1965年に目の前にできたOdakyu OXをきっかけに他の競合店と戦うのではなく、共存していく道を選び、そのためにコンセプトや戦略を持ち、どのように確固たるブランドを作り上げてきたかが述べられていた。結論から言うと、私は成城石井のターゲットとは合致していなかったから利用する機会がなかったのである。

 石井さんが成城石井をスーパーマーケットとして成長させていく中で、私の中で印象に残ったことが大きく2つにある。まず1つ目に慎重かつ大胆に物事を進めることである。例えば、成城石井1号店や商品のレイアウト・オフコンやPOSシステムの導入・ワインをメイン商品にしていくことなどがあげられる。特にオイルショックやファストフード店の急成長を冷静に分析し、主婦が今後惣菜を買うようになるのではないかと仮説を立て、それを実行にまで移したことには感銘を受けた。当たり前だが、ビジネスでもただ闇雲に思索をして挑戦するだけでなく、常に何手も先を考え、そのための準備をして挑戦する事が大事と感じた。

 そして、2つ目に人の意見を聞き情報を集め、自分の財産に還元していくことである。私事になるが私の経験において、成城石井としてのブランドを生み出すため、石井さんがしてきたことと通ずる点があった。私はブレイクダンスという踊りを約7年程度趣味として続けている。ブレイクダンスとは簡単に言うと、リズムに合わせて頭や背中等で回ることをメインとする踊りである。
 石井さんは、多くの人に意見を頂き、多種多様な情報を収集した上で、真似するべき所は真似、取捨選択をし、その中でブランドに独自性を持つ成城石井を確立させた。ダンスも同じで多くの人の下に行き、習うだけでなく、それを習得、体現していくことが大事である。しかし、それだけでは足りない。ダンスでの成功(大会での優勝や知名度の向上)において最も大切なことはオリジナリティである。
 他の人が体現できない動き、基礎を踏まえた上での新しい動きをすることがダンスで言う成功に繋がる。ビジネスにおいても、もっと1つ1つの業態が個性・オリジナリティを出して、他と共存していく必要があると認識させられた。何よりダンスでも、ブランドでも石井さんが述べているように、お客様つまり見る人がどう評価するのかが大切であると再認識した。

 そういわれてみると個性のある業態は少ないように感じる。確かにどのスーパーマーケットに行ってもだいたい同じであるしわざわざスーパーを選ぶ機会は少ない。私が就職活動を行っていたときも、カフェ等でよく時間を潰していたがタリーズやドトール、ベックスなど多くのカフェがあるが、多少の値段や商品の違いがあるが大差はないと感じる。一方、スターバックスや成城石井は商品をメインとして異彩を放っているように思う。

 読後に改めて成城石井を訪れた際には商品力に驚いた。素人目で見ても、他のスーパーマーケットとは明らかに一線を画した商品が陳列されているだけでなく、石井さんの言うごく一般的なスーパーマーケットとは違ったレイアウトになっていたからである。やはり、少し私自身には手の出しにくい商品が多いが普通のスーパーの商品よりも見ていて面白い、買ってみようかと思わせられた。

 最終的に本書を読み、成城石井という1つの独自性を持つ店の創業を知った。それに加え、今、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ファストフード店、ネットでの通販など、いつでもどこでもある程度同じようなものを購入できるし、確かに非常に便利な時代だとは思う。でも逆にここでしか買えない、ここでしかできないし味わえないといった経験、わざわざ自分が足を運びたいと思わせてくれる店等があまりないように感じたし考えさせられた内容であった。

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