ライフのオーガニック&ナチュラルスーパーマーケット、ビオラルの一号店が大阪の阿波座にオープン

 昨日、日本で初めての本格的なオーガニックスーパーが開店した。初日の来店者数は、約3000人。売り場面積800平米の小型スーパーとしてまずまずの出足である。店内を一周して、日本にもこんなにオーガニックがたくさんあったんだ、と感激してしまった。阿波座店は、オーガニックがそこそこ売れていた店舗だそうだ。

 

 そこに、ナチュラルスーパーの企画を提案したのが、近畿圏営業企画部の事業責任者、竹下太課長。三年の準備期間を経て、昨日開店にこぎつけた。
 これまでも、「マザーズ藤が丘」(夢市場)のような独立系のオーガニックスーパーは存在していた。しかし、大手食品スーパーのチェーンが標準業態としてオーガニックエコをMDの中心に据えて、チェーン展開するのは日本では初めてのことである。
 このあと、大手としてはイオンがフランスのチェーン「ビオセボン(・ジャパン)」と組んで、輸入加工品を中心にオーガニックスーパーを出店することになっている。詳細は明らかになっていないが、こちらも、国産の有機農産物をどのくらい集めることができるかが課題になるだろう。
 いずれにしても、オーガニック農産物の調達は、わたしたちの課題でもある。高品質なオーガニック農産物の供給が出来ないと、オーガニックスーパーの業態が成立しない。加工品だけだと、ドラッグやコンビニのレベルになってしまう。

 ライフへの商品供給は、主としてビオマーケット(京阪グループ)が調達を仲介している。ライフの阿波座店は、友人の徳江倫明さん(ftps代表)が悲願にしてきた量販のモデル業態である。今後は、一般流通で、慣行品をオーガニックで置き換えていくことになるのが、食品SMのオーガニック業態だろう。先はまだ正確には読めないが、いまようやくそのタイミングが来ていることはまちがいない。
 ライフの試みで重要なことは、スーパーが自らのリスクで、有機農家グループと直接取引で農産物を集荷していることだろう。入り口から入ってすぐの一番良い場所に、オーガニック野菜のコーナーがある。このコーナーは、塩尻有機栽培研究会など、約35軒の農家に協力を仰いでいる。
 販売されているオーガニック農産物の価格は、実際のところは卸売の値段だ。これがいいか悪いかは判断がむずかしいところである。塩尻の農家が作った有機栽培のキャベツがひと玉198円。この値段だとライフでは利益が出せないだろう。当面はオーガニック普及のために、販売リスクをライフ側でとることになる。
 このキャベツはしっかりした商品で、本来ならば298円で売られている商品だ。この価格での販売がいつまで続けられるか。後で述べるが、そんなに値引きしなくて良いから、わたしは売り方を変えたほうが良いように思う。

 開店2日目の本日(6月26日)、わたしたちのチーム(小川、青木、花畑)は、ライフ阿波座店に10時半に入店した。午前中のこの時間なのに、そこそこ店内は混んでいる。昨日の開店日は、業界関係者が多かったらしい。実質的には、本日が通常営業の初日である。見ていると、お年寄りよりは、20代から30代の若い客が多い。
 最近、近所に500戸超のタワーマンションが建設され、若い子育てファミリーや独身女性など単身世帯が増えたという。やや地価の高いところでもあり、オーガニックの理想のターゲットである。もともと、オーガニックの売上比率が高かったらしい。

 ビオラル一号店では、全商品の約10%がオーガニック(農産品、加工品)で構成されている。たしかに、棚を見るとそんな比率である。「有機JAS」の認証マークがついたものだけを「オーガニック」として表示している。非認証有機農産物は、有機農産物としては販売されていない。これらの一部は、こだわりの農産物に分類されている。
 オーガニック野菜には、棚札に緑の丸いシールが貼られている。また、「BIO-RAL STYLE」と表示された農産物は、こだわりの商品である。無農薬、低カロリー、グルテンフリーなど、これにはブルーの丸いシールが貼られている。このシールは、全商品の5%適度はありそうだった。両者を合わせて全商品の約15%が、「自然を感じるくらし、もっと身近に」というビオラルのコンセプトを具現化した商品群である。

 わたしが、責任者の竹下さんに率直な感想として述べたことは、次の4点である。

1.オーガニックを売るためには、とくに野菜コーナーでは、説明用のPOPが決定的に不足している。有機やこだわりの農産品は、例えば、有機JASの表示だけでは絶対に売れないだろう。マネキンをつけた試食の試みは良いが、基本はサイレントコーナーでの販売になる。だから、こだわりのポイントを大きく写真などで説明しないと売れない。例えば、福島屋さんの売り方や、「坂の途中」の棚作りを参考にしてください。

2.有機農産品を販売するコーナーで、最初に遭遇するのが、輸入バナナとキウイでは心が寂しい。陳列量を多くして見せたいのはわかるが、一番目立つ場所には、有機農産物で意外性のある商品が欲しい。たとえば、「坂の途中」の京都店内で見た、風鈴かぼちゃとか、コリンキー(サカタの育種)とか。わたしの好きな、イタリア料理に使う様々な変わりダネ野菜とか。そうでなければ、国産の在来種で作ったナスとかキューリとか。

3.農産物を加工した惣菜コーナーで、この場所(入口の有機農産物コーナー)に展示してある商品を、惣菜などとしても食べられるように陳列してほしい。お弁当の具にこんな物にも使えるのですよ、と見せて体験させること。オーガニックは食べてもらわないと、その良さがわからない。デリカコーナーとの連動を。

4.オーガニックだから、高くていい、旬や味を無視していいわけではない。そうではなくて、同じ品種で慣行品と戦う必要はなく、在来種を採用したり、数量限定で販売してもよいのではないか。ライフのようなスーパーは、従来型の野菜の売り方を改めるべきではないか。今日見た店頭の状況では、和歌山のJAが供給している慣行品の方が美味しく華やいで見えた。見た目が不味そうでは、有機農産物が負けてしまう。プレゼンテーションも含めて、全面的なMDの見直しを提案したい。

 とはいえ、とにかくライフのビオラル一号店は走り出した。昨日の若手二人(NOAFの次世代の会:西辻さん、小野さん)の議論でも出てきたが、上手なオーガニックの作り手を大量に輩出することはむずかしい。
 マイファームのアグリイノベーション大学校では、毎年100人超が卒業していく。その三割が新規に就農する。しかし、休耕農地を耕作地として維持するために必要な人的供給には全く追いつけない。どうしたら担い手を増やすことができるのか。解決は、かつてコンビニ業界がなしえた方法にヒントがあるだろう。
 農業フランチャイズ展開によるパツゲージ化。技術と教育の標準化だろう。販路は、ライフやヤオコー、ローソンやカインズが拓いてくれる。美味しくて、見た目がきれいなオーガニックさえ作れれば、チャネルは開け始めている。
 ライフの試みは、オーガニック農家にはうれしいグッドニュースである。ただし、作りたいものと売りたいものには、未だ落差があるようだ。新規参入のオーガニック農家は、慣行品と同じ種子を作りたいとは思っていない。