JFMAドバイ、ナイロビ、ロンドンツアー#7:アイルランド発のアパレルディスカウンター、PRIMARKの台頭

 ツアーガイドの米須さんに、ロンドン市内でいま一番売れているのは、ディスカウント衣料品店のPRIMARKだと説明を受けた。英国を代表する量販店のMARKS&SPENCERの衣料品部門が閉鎖になるらしいと聞いたあとだった。PRIMARKはアイルランド出身のチェーンらしい。帰国したら詳しく調べてみようと思う。



 直近の英国ツアーは2009年。Primarkは、7年前には気がつかなかった店だ。あの頃に存在していたのかどうか?わたし以外のメンバーは、2012年にもロンドンに来ている。誰も知らなかった。だから、あったとしても目立った存在ではなかったのだろう。
 この店は、ロンドン市内を中心に数百店舗はあると見られる。ちなみに、英国でも、ドイツのハード・ディスカウンター、リドルとアルディの店が目立つようになっている。それくらい、イギリスでは安売り店が増えている。

 今日もお目当てのガーデンセンター(Seals Nursery)や皇室御用達の花屋さん(Moyees Steven)の視察が早めに終わった。こちらの評判や店の評価は、特筆すべきところはあまりない。わたしのブログではスキップする。松島専務のブログを参照のこと。
 なお、モイーズ・スチーブンスの花の仕入れ先は、オランダが中心だった。イギリスにも市内に花市場があるのだそうだが、完全にオランダに首根っこを押さえられている。フランスでも見た風景だ。
 その反面で、スーパーマーケット、とりわけセインズベリーやM&Sの店頭には、ユニオンジャックのシールが目立った。国産であることを協調しているのだ。EU離脱派が勢いを得ていることと無関係ではなさそうだ。とはいえ、皮肉なことに、定番品はアフリカのケニアとエチオピアに供給を依存している。花産業は全体的にはオランダの属国の様な立場にある。

 そんなわけで、余った時間でツアーメンバーと離れて、オックスフォード通りのPRIMARK(プライマーク)で1時間ほど、売り場とお客さんの行動を観察に当てた。こういう時間が一番のんびりして、なおかつ自分で好きなことができる。団長なので、あまり単独行動はよろしくないのだが。
 日曜日の小雨の中、午後の時間(4時半から閉店の6時まで)。オックスフォード通りに面した横長の店舗だた。二層の店(建物は5階建て)は、入り口も店内も人でごった返している。おそらく地方から出てきた人や、観光できた隣国からの顧客もいるのだろう。
 一階が女性ものとキッズ、二階が男性用とティーンズ。一部の商品はめちゃくちゃに安い。例えば、7足バンドルの白の靴下が2ポンド(350円)。一足当たりだと50円。ありえない値段だ。原産国を見ると、made in china はごくわずか。バングラディシュ、ルーマニア、ベトナムが品ぞろえの中心で、トルコとインドがそれに続いてポピュラーな生産国だ。
 Atomospher(インティメイトや女性もの)が代表的なブランド(売り場)で、デニムでも別ブランド(創立が1990年代)を立てている。これは独立したセレクトブランドかもしれない。

 10年ほど前に、銀座の近鉄メルサ店で、ユニクロの中国生産グループからリクエストがあって、バンドル販売の実験をしたことがある。その時の実験結果では、5足のビュアバンドル(白のソックスだけのバンドル)にはニーズがない、売れないという結論だった。日本人の若者に、ソックスのバンドルは三足まで。現在でも、ユニクロの売り場で3足バンドルが普通である。
 しかしながら、プライマークの売り場では、5足のバンドルどころか、7足のバンドルで靴下が売られている。2ポンド(350円)である。一足が50円。圧倒的に安い。
 店内を見渡しても、それ以外の商品は、ファストファッション(Forever21やH&M、Zara)と比べて格段に安いというわけでも無さそうだ。デニムが15〜20ポンド(2500円〜3500円)、Tシャツが6〜8ポンド(1000円〜1500円)。男性用ワイシャツが20ポンド(3500円)。劇的に安くはない。
 だが、店内で買い物をしている人たちは、バスケットに商品を山のように積み重ねて入れている。日曜日の午後で、閉店前の時間帯。3〜4年前、絶好調だったユニクロでよくみかけたパターンだ。買い上げ点数が10〜20点、客単価は5千円〜1万円。なんとなく安いイメージだから、競うようにまとめ買いをしている。

 冒頭で述べたように、売れ筋商品に関しては、ZARAやH&Mのさらに下を行く価格帯で値段が設定されている。品質はあまり良くなさそうだが、安さの演出がすごい。各売り場で、「2ポンド」「3ポンド」「5ポンド」「7ポンド」と、プライスカードで値段を大きく表示してある。演出がディスカウントであるスタイルが受けているのだ。
 通りを挟んで隣に、NEXTとM&Sがある。価格をチェックしてみたら、デザインがステキなTシャツは、一枚15〜20ポンドで売られている。品質も良さそうだ。デザインも明らかに素敵だ。
 品質と価格をトレードオフすれば、わたしならばM&Sを支持する。にもかかわらず、客は圧倒的にPRIMARKに吸い込まれていく。安さの演出が優っているというしかない。そして、時代の風だ。

 日本でも、イトーヨーカドーやイオンを中心に、量販の衣料品売り場がユニクロなどの専門店に駆逐されてきた。同じことが、イギリスでも進行している。経済の状況がその傾向を加速している。Grocery部門でも、ドイツのハードディスカウントが、ロンドンでは市場を制圧している。
 そのために、テスコやセインズベリーが苦戦している。アズダが好調に見えるのは、価格感度の高い消費者が市場に対して影響力を持ってきたからだろう。他方で高額品も売れているようだから、所得格差が進行していることがわかる。
 ロンドン市内の地価が高騰している。2009年を底にして、アパートメントの取得価格が2〜3倍に上がっている。日本も同じだが、東京の都心はさておき、郊外ではそれほど地価は上昇していない。ロンドンの異常さが際立っている。
 これで、EUから離脱でもなったら。わたしたち日本人も真剣に民族の行き着く先を案じるべき時だ。欧州旅行では、そのことばからり考えていた。