JFMAドバイ、ナイロビ、ロンドンツアー#4: 動物王国のサファリツアー@ナイロビ国立公園

 ナイロビと東京の時差は6時間。日本の正午がケニアでは朝6時。旅の途中、ずいぶん遠くに来たものだと感じるのは、時差の違いや異国の街頭風景ではない。ホテルの浴槽においてある石鹸やシャンプーの匂い、排水栓の形状やドレインの仕組みなど、何気ない形で現れてくる文化の差を感じるときだ。



 このホテル(Southern Sun Mayfair Nairobi)のシャンプー(バスソープも!)は、ココナツの甘い香りがしている。お湯につかってプラスティック包装のパッケージを読むと、ブランド名は”LANOVERA(Nourish and Protect)”。
 ケニアの5つ星ホテルが採用している素敵なシャンプーの販売会社は、シドニーとロンドンとニューヨークに支店がある。ところが、裏面を読むと、ココナツ・シャンプーは”made in China”だった。原産地を知ってしまうと、ちょっとがっかりする。せっかくなら、Juliqueなど自然化粧品の国であるオーストラリアで作ってほしかった。そう思えるのも、遠くに旅をして、ふだんとちがう建物の造作や販売してあるブランドに接触することができるからだ。
 わたしにとって、JFMAが主催する海外ツアーは唯一、フレッシュな時間が確保できるチャンスである。いつもギューギューに詰まっている毎日のスケジュールから逃れて、10日間ほど悠々自適で羽が長く伸ばせるとき。
 そんな旅の楽しみ方ができるのも、あと何年だろうか?

 JFMAツアーは、これまでは仕事優先してきた。どの国に行っても、2時間ごとに密に訪問先(農場や加工会社)を入れていた。ふつうでも3~4件の農場を朝早くから日没まで回っている。ところが、昨年から少しだけ観光の要素を取り入れるようになった。参加者が年齢を重ねて、体力が落ちてきたことが一番の理由だろう。
 今回のツアーでも、参加者10人中、ふたりを除いて8人が60歳代の男女である。もっとも、高齢化が「吉」と出ることもある。昨年の南米ツアーで行った、サンパウロ美術館がその典型的な例だ。
 思いもかけずに訪問することになったサンパウロ美術館。ブラジルが美術品(絵画)に関して、あれほどのコレクターだったとは知らなかった。自由な時間を確保するようになって、ようやくその恩恵を受けるようになったわけだ。

 そんなわけで、今回のドバイ・ケニア・英国ツアーでも、4日目(昨日)に、ナイロビ国立公園でのサファリを計画してもらった。
 5年前にも同じパーク(100万平米)でサファリを楽しんでいる。そのときは、エチオピアからナイロビ空港に到着した後、わすか2時間だけのサファリだった。参加者の人数が多かったこともあり、ごく短い時間でキリンとシマウマとインパラを遠くから見て楽しんで終わった。
 その点からいえば、昨日のサファリはまったく違っていた。わたしたちが泊まっているホテルまで、旅行社(日本旅行)が8人乗りのランドクルーザーを二台、直接わたしたちに差し向けてくれた。完全装備の4WD2台に、2組5人ずつで分乗することになった。前回のように、国立公園の玄関で降りて、見物用の20人乗りのサファリバスに乗り換えるのとはわけがちがう。
 ホテルの玄関から、すでにサファリ気分で気持ちが盛り上がっていた。ランクルは、トヨタ自動車の4WD。20年ほど前に一度だけ、キャンベラでカンガルーを追いかけるために運転したことがある。泥んこや石道の悪路も平気で超えていく優れものだ。大きな水たまりや急坂も絶対に止まらないよう、頑丈に作られている。

 サファリツアーは、朝7時にホテルを出発した。ナイロビ市内では、例によって渋滞にあって、ナイロビ国立公園の正面玄関にたどり着いたのが8時ちょうど。3時間のサファリを予定していたので、全員お手洗いに行って出発に備える。玄関わきで、最初に遭遇したのはマントヒヒ。100匹ほどが側道でわたしたちを見ている。
 サファリは、人間と動物の立場を変えてみると、おもしろいことがわかる。サファリとは、大草原や森の中に寝そべっている動物たちを、完全防備の自動車で移動しながら眺める野生動物園だ。しかし、わたしたちを観察している動物のほうから見れば、人間たちの一団がつぎつぎと自分たちに近づいてくる行列である。
 実は、どちらが観察していて、どちらが見物されているかわからないのだ。そう考えると、サファリパークとは、人間の動物園なのかもしれない。

 さて、最初の2時間は、収穫がほとんどなかった。2時間かけて見つけられた動物は、シロサイとキリンとインパラ。それもキリンもサイも数匹だけ。ところが、3時間目(10時を過ぎたあたり)から、急に草原が騒々しくなった。水牛(バファロー)が目の前に現れたところから、まったりでやや退屈な旅の大転換がはじまった。
 それは、わたしたちの運転手さんが、水辺でライオンの足跡を発見したときだった。”You like a lion?”の問いに、通訳の海下さんが、”Of course”と答えたところから、約1時間にわたるライオンの追跡が始まった。
 わたしたちが乗ったランクルは、男子だけ5名。女子2人を乗せた別のランクル(5人乗り)とは、しばらくは離れて別々に行動していた。ところが、ライオン狩りについては、情報を交換しながらの共同行動になった。

 でこぼこ道を時速50~60Kmで走った追跡は、水辺の平原で終わった。運転手さんが、「しー」と日本語で「さわがないように」と指示を出した。ライオンが、こんもりと茂った藪の中で眠っているらしいのだ。ランドクルーザーを静かに?そのやぶの近くに移動させると、こんもりと茂ったライオンの寝床があった。三匹のライオンが、じっと昼寝をしている。
 一匹は小さなオスのライオンで、二匹はメスのライオンが。子供のライオンは、まだ鬣が十分に発達していない。なので、わたしはメスが三匹とばかり思っていた。あとで、松島さんと野口さんに指摘されてわかったことだ。
 そのあと、二度ほどライオンを藪から出てのっそり歩いている場面にも出くわした。野口さんが撮った写真では、狩りに出た小さなライオンが、獲物のインパラを狙おうとしているショットがあった。子供ライオンはまだ狩りには慣れていないらしく、どうやら狙いは外したらしい。
 母親たちに指導される修行中の身にあるらしい。それにしても、パークでライオンに出くわせるのは珍しいことらしくラッキーなサファリだった。ライオンを追いかけながら、その前後に写真に収めた動物のリストを列挙しておく。

 *日本にいる友人たち数人に送ったメールから引用(現地時間:2016年6月9日):
 「こんにちは。午前11時です。もうすぐSafariが終わります。明日の朝に写真を送りますが、ナイロビ国立公園で遭遇した動物のリストです。朝8時スタートのSafariにて見たのは、

 サイ、キリン、コカタピス、ガゼール、オストリッチ、ライオン、インパラ、ゼブラ、クロコダイル、バッファロー、そして、名前を覚えられなかったたくさんの鳥たち。さらには、イボイノシシ、、、、」
 「まるで、ライオンキングの世界です!」とある女性からの返信が。

 最後にどんでん返しが。サファリのすべて行程を終えて、正面玄関に戻ろうとしたとき、12時ごろ。前を走っていた女子2名を乗せたランクルが、森の入り口で煙を出して止まった。事故ではないかと思い肝を冷やしたが、エンジンが焼けて白い煙をだしたらしかった。オーバーヒートである。
 四輪駆動車といえど、坂道あり水の中ありの悪路を猛スピードで飛ばしたせいだろう。さすがに、長時間にわたるライオンの追跡で、ランクルのエンジンもヘたったらしい。あと2キロの地点で歩き始めた5人を、8人乗りのランクルに収容して、つぎのランチのために「カーニバル」(焼き肉店)に向かった。
 その話は時間があるときに、ブログで紹介する。そうそう、一昨日のバラ農場訪問(Pigot Farm)も、昨日の展示会のことも、本日のブログでは紹介する時間がない。これから市内ショッピングセンターを見学の後、ドバイ経由でロンドンに向かうことになる。