IFTEX(国際フラワー展示会)の開場で、クリザールアフリカのFlavio社長から、ケニアの花産業の今をレクチャーしていただいた。5年後の再訪問にあたって、2015年にデータがアップデートされた。以下は、ケニアの経済成長の軌跡でもある。
<*>は、プレゼンに対する小川の補足コメント。
1 ケニアの一般的な経済状況(2015年)
・GDPの成長:経済成長率は、2015年で+5.4%(2011年、+6.1%)
・GDP(国民総生産):610億ドル(2010年、330億ドル)
*経済成長率は鈍化しているが、GDPが5年で倍に伸びている。車の渋滞が頻発するわけだ。
・人口:4490万人(2010年、4190万人)
・一人当たりGDP:1290ドル(2010年、786ドル)
*約50%増加しているので、これがすべて人件費に跳ね返る。
昨年、コロンビアでほぼ同じ状況を見てきた。国民生活が改善される反面で、農産物一次産品の採算は悪くなる。
2 ケニアの花産業
・欧州(世界需要の約半分)への花き輸出の約31%を、ケニアからの輸出が占めている。
・これまでは、ケニアの輸出金額と輸出量は、つぎのように成長してきた。
2008年 4.2億ドル 9.3万トン
2010年 3.8億ドル 7.6万トン
2014年 5.4億ドル 12.0万トン
2015年 6.1億ドル 13.7万トン
*リーマンショック後の停滞から、5年間で約50%輸出を伸ばした。この間の輸出単価もほとんど変わらない。
・花産業の直接雇用者が、6.5万人~7.0万人、関連産業の間接雇用者が約50万人。
・トータルで、200万人(1家族4人として)を養っている。ケニア国の5.2%に生活を支える産業。
*花とコーヒーと魚(淡水魚)が、メインの輸出産業であることが分かる。
3 ケニアの輸出先国(2015年)
・オランダ51%(そのうちの65%が再輸出)
・英国13.4%
・ドイツ6.7%
・ノルウエー6.3%
・その他ヨーロッパ3.5%
・日本は、1.4%
*日本の輸入金額の6%だが、この数値は伸びている
*オランダ以外(日本も!)は、オークションを経由しないで直接販売で、この比率は年々高まっている。
4 ケニアの生産者
・180社
・合計栽培面積:3500ha(ほぼ施設)
・大規模生産者(>⒖ha)が97%を占める
・上位20社で、輸出の70%を占める
*大規模生産者の上位集中度が高い
・平均利益率(マージン率)が10%を切っている(>9%)
*収益率が落ちている
5 近年のトレンド
・直接販売(オークションを経由しない取引)
*鮮度とコスト
・原体から花束での販売を志向する
*添え花(フィラー)やサマーフラワー(草花類)を増やす傾向
・高品質でプレミアム市場を狙う
*逆に、中規模生産でモノブーケに代わっているところは、コロンビアと同じ
・海上輸送の試み
*海上輸送はカーネーション中心で、バラではまだ本格化していないらしい。
このところは、FW(フラワーウォッチのデータと矛盾している)
*海上輸送でコストは約半分になる(物流費が30%から15%に低下)
ただし、欧州まで6~8週間かかるので、需要とのマッチングがむずかしい
6 ケニアの課題
・欧州経済の好不調に振り回される
*とくに、東アフリカ関税協定(ケニア、ウガンダ、タンザニアと欧州)
との間のEPA(自由貿易協定)
・ケニア経済の不安要因
・エチオピア、コロンビアとの競争
・コスト圧迫要因
人件費、環境負荷低減、化学品への規制
*どこの国も同じような課題を抱えている