ドトールコーヒーの創業者が創業期の思いを綴った本である。印象としてはむしろ、書名が単行本のときのままで、『想うことが想うようになる努力』(至誠天通)であればよかったのではないかとおもう。改題しての出版なので、内容と書名がやや離れているのが気になる。創業の記録ではなく、仕事をするときの心得を書いた本であるという印象を受けた。
このところ、時差ぼけで眠れずにいる。風邪を引いたり、連載の締め切りに追われて忙しかったりある。運動もできずにいることで、生涯で初めて経験している「不眠症」に拍車がかかっている。1時間半で読んだが、それがやや辛い採点の理由かもしれない。
本来ならば、講演資料や書類を作成しなければならないのだが、試験前の学生になってしまっている。其の他(本読み)のことをしてしまった。読んだ本が、先々週、日経の堀口さんからいただいた鳥羽さんの本であった。
学生の推薦図書の候補として読んだつもりだった。けっこう読みやすくて、内容もおもしろかった。なぜか、しかし、10月の推薦図書には不採用になった。感想文の対象にならない理由を、以下にあげることにする。
(1)成功の法則が正統すぎる
7つの成功法則(ハングリー精神、危機感、負けず嫌い、責任感、夢の実現、名誉欲、使命感)が2回出てくるが、鳥羽さんの言うように、人間はそんな紳士淑女では生きられない。全部、ほんとうはみんな正しい主張なのだが・・・
(2)ライティングスタイル
とても読みやすい。読みやすぎる。学生に読ませるには、ややひっかかりがあったほうがよい。自然で流れる文章になっている。
(3)成功者のその後
本業で成功した人には、社会活動での目標などを、本書のような「ビジネス書」としては語ってほしくない。仕事はしごとである。ビルゲイツは尊敬するが、チャリティ事業をやるときは、黙ってやってほしいのである。慈善事業はまたその他のことである。鳥羽さんにも、社会事業とコーヒー事業とは切り離してほしいかったのが、わたしのあわがままだろうか?
評価できる点も多かった。
(1)事業チャンスは、注意を怠らないよく備えがある心から。
(2)慢心は怪我のもと。危機感と警戒心がひつよう。
(3)なにをおいても、ビジネスの出発は「顧客第一主義」。
とても良い本ではある。