孝行息子

 2009年に日本経済新聞出版社から刊行した『マネジメントテキスト マーケティング入門』が増刷になった。毎春に刷りを重ねて、今回が8回目の増刷である。累計の発行部数は1万2900冊になった。1万冊くらいはふつうと思われるかもしれないが、この本のお値段は3800円(税抜き)。なにせ800頁を超える分厚い本である。



 通常の書籍と比べて、3倍の値段である。だから、12900部は、稼ぎで言うと、ふつうの単行本では4~5万冊の感覚になる。出版社の立場からすると、発売から7年経過後も、毎年1300部を輪転機で吐せる本は、収益的には「孝行息子」なのである。
 考えてみるとよい。ほとんど何もしていないのに、コンスタントに500万円の収入が生まれる。著者のわたしにとっても、マーケティング入門は、「金のなる木」(キャッシュカウ)である。
 ただし、事例が古くなっていくので、そろそろ改定時期だとは思っている。米国のマネジメントテキストは、ほぼ3年おきに改訂版を出していく。そこからすると、動きが遅いので、やや良心的には痛い思いをしている。が、そもそも教科書マーケットのサイズがちがっている。
 本が売れなくなっている出版社の事情を考えると、10年周期くらいでないとテキストの改定は無理なのだろう。投資収益で見れば、5年改訂でも無理があるらしい。我慢、ガマン、がまん。

 なお、発行部数で言えば、わたし個人の最高記録は、同じく日経新聞社から出版した『ブランド戦略の実際』(日経文庫)である。1994年の初版以降、2011年に改訂版を含めて、累積で約6万部を販売している。「マーケティング入門」のようには、増刷にはならなくなったが、6万部の記録は他の書籍ではまだ実現できていない。
 この先に5冊の刊行を予定しているが、1冊くらいは10万部を超してほしいものだ。読者のすそ野が広い書籍を出さないと、単なる話題だけでは冊数は出ないみたいだ。本命は、やはりノンフィクション小説だろうか?それとも、、、