あ~あ、とんだ勘違い

 20年くらい使用してきた玄関の郵便受けが壊れた。「アメリカン・ポスト」という名のデザインで、横長でかまぼこの形。色はメタリックのシルバーで、取り出し口のフタを引き下げるタイプのものである。米国の映画によく登場するので、ご存知の方も多いのではないかと思う。



 いまのポストは3代目である。駐車場わきにあるので、長い年月、雨ざらしになっている。ずいぶん手荒にも扱ってきているから、ふたのヒンジ(蝶番)が外れてしまった。手先が器用でないわたしには手に余る。もはや修復が効かない。新しいものと取り替えることにした。
 かみさんは着付けの仕事で、早朝に家を出ていた。携帯からメールがあって、「玄関のポストが完璧に壊れてます。カインズさんで、新しいポストを買ってください。形も材質もお任せします」。デザインにとくに指定はなかった。「おなじ形がいいよな」と思った。
 ホンダのCR-Vを飛ばして、千葉ニュータウンのカインズホームまで買い出しに出かけた。自宅からカインズまでは、10キロ以上は離れている(実測は13KM)。それなのに、なぜか10分くらいでカインズモールに到着した。通称「100メーター道路」と地元で呼ばれる国道464号線が、スピード違反の心配をしなくてはならないくらいに、これもめちゃ空いていた。

 金曜日の午後4時である。ホームセンターの売り場も、予想の通りに閑散としている。とはいえ、ある程度の数客はいる。レジはそんなに空いてはいない。よく見ると、列ができていないレジがひとつだけあった。20代前半の若い子がレジ担当で、手持ち無沙汰にしている。
 その子に、「ポストはどこにあります?」と尋ねてみた。 新人さんなのだろう、ポストのある場所が正確にはわからないらしい。「ベイシアの方に、外の方にあったと思いますが、、、」と外通路の方を指さしている。ベイシアとは、食品スーパーマーケットのことだ。千葉ニュータウンのカインズモールには、グループ会社の食品スーパーが隣り合わせで入居している。
 怪訝な顔したので、彼女は自らポストのところまでわたしを案内してくれようとした。わたしとしては、「店も空いていることだし、悪いけどまあいいか」くらいの感覚だった。彼女は自分の持ち場を離れることになる。安全のため、キーでレジを閉めた彼女は、売り場の外に出てベイシアの方にわたしを連れて行ってくれた。

 園芸売り場の手前まできたとき、彼女は「そこですよ」と壁の方を指さした。「そうか、ポストって、エクステリアの売り場にあるんだよね」と、わたしは園芸売り場の先にあるエクステリア部門に進もうとした。
 しかし、待てよ、、、彼女の指の先にあるのは、郵便受けが置いてある売り場ではなく、壁際にある「赤いポスト」だった。んんん、ポストって、日本郵政所属のポスト? そうなのだ。彼女はわたしが「手紙かなにかを投函したい」と思ったらしいのだ。そうではなくて、わたしは自宅の郵便受け(ポスト)がほしかったのだった。
 あー、またしても、説明を省略するからこんなことになる。かみさんの高笑いが聞こえる。「でしょ、だから誤解されるんですよ」。

 結局のところ、「緑の48番」の売り場に置いてあったアメリカンポストを無事に購入できた。従来のものとまるっきりデザインが同じ、シルバーでかまぼこ型。不器用なわたしが、苦労していま設置を終わったところだ。「よくできました!」とかみさんに褒められることまちがいなしだ。
 買い物をひとつするにも、わたしの場合は、こんな頓珍漢な事件が頻発する。それには理由があることが、最近になって妻の指摘からわかった。わたしの場合は、自分と相手を表現するときの主語と目的語が逆転するのだそうだ。
 ふつうの人とはちがって、自他の感覚が異常なのだそうだ。そのことについては、別のブログ記事で紹介する。誤解のされかた(仕方)も楽しく感じていただけるはずだ。