【紹介】松井忠三(2015)『無印が世界でも勝てる理由』KADOKAWA(★★★★★)

 シリーズの4作目になる。明日(15日)、商業界の仕事で松井さんと対談することになっている。その前に読了しておくことにした。内容、構成ともにおもしろい。これまでの三作は、ビジネスモデル(仕組み)について書かれているが、今回は商品まわりの議論が多い。



 今回は、書籍の内容ついては、読者の判断にゆだねる。それよりも、経営者としての松井さんについて感想を述べてみたい。松井さんとは、阿部社長が無印良品の店内で、テナントして「花良品」を運営していたころからのお付き合いである。
 最初にお会いしてのは、「花逸品」のお披露目の時だった。パーティーには、元社長の木内政雄さん(元西友社長)などもいらしていた。立ち居振る舞いを観察していたが、物言いが淡々としている。経営者としてだけでなく、人間として尊敬するところがあった。

 第一に、松井さんはおごることがない。言葉を荒げるさまを、少なくともわたしは見たことがない。たとえば、松井さんは「SPRING」(サービス生産性協議会)の副会長(秋草会長、富士通)を務められている。生産性本部会長の茂木友三郎氏の前で、いつも幹事会の司会役を担当されるのだが、実に淡々と司会をこなされている。
 第二に、人間として安定しているので、多くの方から信頼される存在だろうと感じる。昨年現役を引退されたが、その後、複数の上場企業から社外取締役を依頼されている。それは、的確な判断と助言力(実力)もさることながら、松井さんの人柄によるものだと思う。
 第三に、松井さんは、現代日本企業に稀有な「侍」だと感じることがある。そのことを最後に、現代の武士たる松井忠三氏について、まとめておくことにしたい。
 
 わたしの「侍」の定義である。真正の「侍」とは、生活は質実剛健ながら、ふだんから仕事について鍛錬を忘れず、困難に遭遇した時も慌てることなく、恬淡と構えて難局を乗り切る人のことをいう。
 そうした人柄と企業人としてのキャリアが、本書にも反映されている。

 *この続きは、三田病院での診察が終わってから。