【新春セミナー講演録】 小川会長あいさつ(2016年1月11日)

 日本フローラルマーケティング協会(JFMA)が主催した「2016年新春セミナー」(@ボアソナードタワー、法政大学市ヶ谷キャンパス)の講演録である。4つのファイルがある中で、小川の開催挨拶部分を公開する。花き産業とJFMAの15年間を回顧して、この先の15年間の改革を提言している。



『農と食の流通を変える-花き流通は?』
(2016年新春セミナー、開会挨拶)

日時:2016年1月11日(月)13時00分~16時00分
場所:法政大学ボアソナードタワー26階 スカイホール(東京都・市ヶ谷)
主催:一般社団法人 日本フローラルマーケティング協会(JFMA)
共催:法政大学イノベーション・マネジメント研究センター

要 旨

Ⅰ 開会挨拶
挨拶:JFMA会長・法政大学経営大学院教授
小川 孔輔(おがわ こうすけ) 氏

1.「JFMAと花き産業の未来」
 「新春セミナー」は、お花の団体である日本フローラルマーケティング協会「JFMA」が主催して、毎年1月に開催している。今回は法政大学の経営大学院とイノベーション・マネジメント研究センターに共催をいただいており、花業界以外の方も出席されている。そこで、JFMAや今日のセミナーの趣旨について説明してから、ローソンの玉塚社長の講演につなげたい。玉塚さんの講演については、SNSの投稿やメディアへの掲載は控えていただきたい。
 JFMAは2000年の5月28日に設立された。5年後の2005年6月28日に、僕らはJFMAの30年計画を立てた。時期を3期に区切り、7つの目標を掲げた。ここで、それぞれの目標を挙げ、成果を振り返りながら紹介したい。

(1) 第1期:最初の10年(2000年~2009年)
 最初の10年の目標は、花産業のインフラを作るということだった。

① 目標1:花業界のインフラと標準を作る
 花業界のインフラと標準を作るという最初の目標については、農水省の支援も得ながら、花の日持ち保証販売を始めた。MPS(花き産業環境認証制度)を創立した。MPSはオランダの認証で、農薬を抑えながら生産を行う仕組みで、10年かけて日本に導入した。

② 目標2:ビジネスと情報の交流の場を設ける
 交流の場作りという点では、幕張で、毎年、国際フラワーエキスポ(IFEX)を開催してきた。

③ 目標3:花の市場を10年で2倍に伸ばす
 当時、花の市場が1兆円を切りそうだったので、10年に2倍にするという目標を立てた。 そして、フラワーバレンタインキャンペーンを始め、バレンタインに花を贈ろうという運動を展開している。
 さらに、2015年には「花の国日本協議会」を設立した。バレンタインだけでなく、他の日にも花を贈る習慣を広めようという意図がある。青山フラワーマーケットの井上社長に、会長に就いていただいている。

④ 目標4:業界を支える人材と組織を生み出す
 業界を支える人材や組織を生みだすという目標に対しては、フラワービジネス講座(2010年~)も開催してきた。

(2) 第2期:次の10年(2010~2019年)
① 目標5:日本からアジアへ
 日本からアジアへという目標については、JFMAをアジアでAFMAとして展開することを考えた。この目標に対しては、2014年8月には、中国伝化という日本の花王のような会社と協力していくということで、そこの幹部とともに、調印式に臨んだ。今年から実際に、日本の花や園芸用品、植物を中国で販売するという包括的な契約をしている。また、2015年に中国・杭州の中日園芸技術マーケティングセンターを設立した。

② 目標6:花業界の社会的地位の向上
 また、花業界の社会的地位の向上についても努力していく。

(3) 第3期:最後の10年(2020~2030年)
① 目標7:花業界を越えた組織に(事業ドメインを拡張)
 最後の10年は、事業ドメインを拡張し、花を越えた組織にすることを目標においている。
 第3期への準備として、2016年からは、異業種の知恵に学ぶコラボレーションを開始したい。そこで、今回のセミナーでは、異業種の経営トップを招くことにした。「食べる」ことではローソンの玉塚元一社長、「暮らす」ことではカインズの土屋裕雅社長、そして「飾る」ということで、青山フラワーマーケットの井上英明社長に登壇いただき、ディスカッションを行う。

2.業界を取り巻く環境の変化
 次に、花業界およびそれを取り巻く農業の環境の変化について、考えてみたい。消費者、小売、生産、中間流通、輸出の将来について予想した2010年の発表資料を引用しながら、説明する。

(1) 日本人消費者と小売業:消費者は何を求めているのか
 消費者の側では、安全、安心への希求と、健康な食と鮮度への要求が高まっていく。ディスカウント時代は終焉するだろう。そして、プレミアムブランド商品と差別化商品を持つアップスケール業態が、トレンドになっていくはずだ。

(2) 生産環境と規制緩和
 私は、2010年以前から、農地法の改正をはじめ、規制は3つ緩和されるだろうと読んでいた。
1つ目が農地の規制緩和、2つ目が株式会社の農業分野参入だ。野菜・果樹分野で動きがあり、ワタミに続き、セブン& i、サイゼリヤなどが有機野菜生産を始めている。ローソンファームはオーガニックではないが、株式会社としてローソンも農業に参入している。3番目は農業フランチャイズの動きである。農業資材、商品販売をめぐり、JAとコメリは戦っている。

(3) 中間流通の変化
 中間流通では、卸、市場の存在意義が問われている。市場法が改正され、業務の境界線が消滅し、サービス業との垂直的な価格競争が生じると考えた。実際に、流通では、ダイレクトモデルが登場している。コストダウンと鮮度維持の達成には、物流はダイレクトにしたほうが効率がよい。

(4) 国境を越えた戦い:切花輸入の限界
 切花輸入には限界が来るだろう。花業界にも「地産地消」の波が押し寄せる可能性がある。根拠としては、エネルギーコストが上げられる。また、食糧危機の到来で、農産物の輸入規制もありうる。一方、国内では農業改革と物流改革が進む。発展途上国が成長段階を終えたところで、食料と水を巡る「新ナショナリズム」の時代が来る可能性がある。

3.ローソンがセブンを超えるための条件
 ここで、1つお願いがある。これから玉塚さんにご講演いただくが、テーマは微妙な内容を含んでいる。「ローソンがセブンを越える日」というタイトルは、私から玉塚さんに提案したものだ。メディア関係者の方もいらっしゃると思うが、玉塚さんの講演内容は、記事にしないでほしい。内容については、1年以内に、私が責任をもって世の中に発表する。
今日は、ローソンがセブンを超える条件として、3つ挙げておきたい。

(1) ユニークなストアコンセプト
 通常のコンビニは、「近くて便利」をコンセプトにしている。だが、ローソンはそれだけではなく、「食の安全、安心、健康、美容」を強調している。この方向を徹底的に進められるかどうかが、鍵になる。

(2) 3つの「飛び道具」の使い方
 次に、ローソンの持つ3つの「飛び道具」の活用だ。大手コンビニ3社のうち、ローソンだけがマルチブランド展開で、しかも、ナチュラルローソンというプレミアムブランドを持っている。2つ目は、分散型農業FC事業としてのローソンファームである。3番目は高級食品SMとして買収した、成城石井である。この3つをどう活用するかが、セブン超えの条件になってくると思う。

(3) 若い経営トップとモチベーションの高い社員
 最後に、他のコンビニに比べて、ローソンは、経営トップがダントツに若い。また、ここ1年くらい、私はローソンのいろいろな部署の方とお会いする機会があったが、社員のモチベーションが高いと感じている。

 以上、3つの条件が重なれば、私は、ローソンはセブン-イレブンを超えることができるだろうと思う。後の話は、玉塚さんに譲りたい。