元旦の新聞受けに、「北総線運賃値下げへ前進する新年に!」というチラシが入っていた。日本一運賃が高い鉄道で通勤・通学している千葉ニュータウン住民にとって、「北総の運賃問題・はてなシリーズ24」は実に納得のいく記事だった。高い運賃が、千葉NTのまちづくりの阻害要因になっている。
基本的に、この方たち(北総鉄道の運賃値下げを実現する会)の意見に賛同する。というのは、正月にわが家に帰省してきた子供たちと、以下のような会話をしたからである。
長男は神戸(ポートアイランド)のマンションに、次男は津田沼(谷津)の社宅に住んでいる。それぞれが、いまのところは妻一人と子供ひとりである。近々、長男には二人目が生まれることになっている。
「一緒に住むとか、ここに帰ってくる気はない?」とわたし。この問いに対して、「運賃が高くて、とてもじゃないけど暮らせないよ」と二人とも異口同音に応えた。
現状では、わたしの通勤費は法政大学が、妻の交通費は勤め先である日本橋の某百貨店が支払ってくれている。だが、子供が小さかったとき(高校生・大学生)は、わたしの給料から大枚をはたいて学割で定期券を購入していた。辛抱強い次男坊は、雨の日以外は、自転車で10KM先の高校まで通っていた。
そうなのだ。自分で家族をもって子供たちの交通費まで支払うとなると、若い子たちは二の足を踏むのだ。そのくらい高い運賃である。むかしから、この高い運賃をどうにかしてほしいと地元の住民たちが、運転の値下げ運動を展開してきた。このままだと次代の子供たちが白井市や印西市に戻ってくれないのだ。
興味深いデータが2点、チラシに掲載されていた。ひとつめは、高い運賃の実態を示すグラフである。
わたしが住んでいる西白井駅(白井市)と千葉ニュータウン中央駅(印西市)の間の距離(8KM、450円)を、北総線以外の路線だとどのくらいの運賃でどこまで乗れるかを示すグラフだ。
1 北総線(西白井→千葉NT中央):7~8分、距離8KM、運賃450円
2 京成線(京成高砂→志津):特急で35分、距離29.4KM、運賃440円
3 京急線(品川→杉田):快速で34分、距離34.3KM、運賃43円
4 京王線(新宿→高尾):特急で47分、距離43KM、運賃360円
なんという運賃格差! 京王線とだと約5倍の実質運賃の格差がある。そして、ちらしの裏面には、二つ目の驚愕の事実が、、、、
千葉ニュータウンに住んでいる人が、都心(日本橋)まで出るとなると、もっとも遠くの印旛日本医大駅から電車に乗るとなると、4つの線をまたいで運賃を支払うことになる(実際は、日本橋までは直通運転なので同じ電車に乗っているのだが)。
<区間#1>: 北総開発鉄道 印旛日本医大 ~ 小室
<区間#2>: 千葉NT線 小室 ~ 京成高砂
<区間#3>: 京成電鉄線 京成高砂 ~ 押上(スカイツリー駅)
<区間#4>: 都営浅草線 押上 ~ 日本橋
<区間#3>と<区間#4>の区間は、昔からの線で、都営地下鉄と京成電鉄が運用している。この区間は運賃が割に安い。問題は、高い運賃の<区間#1>と<区間#2>である。所有形態も線路の利用について大きな問題を抱えている。不透明な運用がなされていて、それがスカイアクセス線が完成して成田まで通じた後でも、いまだ解消されていない。
<#2>の区間:京成高砂駅と小室駅の区間(19.8KM)の所有者は、北総開発鉄道(株)である。スカイライナーや特急スカイアクセスを走らせている京成電鉄は、北総開発鉄道に線路使用料を支払っていない。つまり、このチラシによると、京成電鉄は、北総鉄道線(#2)の区間(19.8KM)を「ただ乗りしている」と指摘されている。
<#1>の区間:小室駅と印旛日本医大駅間(12.5KM)は、千葉ニュータウン鉄道(株)が所有している。千葉NT鉄道は、京成の100%子会社である。京成電鉄は、この区間(12.5KM)の線路使用料を支払ってはいるが、線路使用料の運行距離シェアは、北総(各駅停車と急行)が56%で、京成(特急スカイアクセスとスカイライナー)の距離シェアは44%。でも、支払っている金額は、北総が79%(年間23億円)で京成が21%(年間6億円)。
<#1>の区間では、支払いに関して不公平が生じている。京成は100%子会社だからということで、千葉NTの住民に負担を強いていることになる。これは、ふつうに考えると、集団訴訟に持ち込めるのではないだろうか。
裁判になる前に、京成電鉄は、応分の線路使用料を負担すべきだろう。運賃に換算してどのくらいの金額になるのだろうか?千葉NT線は京成の子会社だから、運賃の配分負荷は利益相反になるだろう。これも裁判に持ち込まれれば大きな争点になる。
とにかく、試算してみたらよいだろう。直感的には、北総線の現行運賃は、京成電鉄の「フリーライド分」+「過少負担分」を北総線と千葉NT線に振り向けるだけで、20~30%程度は安くできるのではないだろうか。
そうなれば、長期的には、ここで育った第二世代の若者が、環境が素晴らしい千葉NTに戻ってこれる。北総線の運賃が下がり、乗車人口が増加すれば、さらに運行本数も増える。最終電車の時間帯や本数が増えて、さらに利便性が高まる。
費用負担の付け替えには、もうひとつのプラス要素が加わる。2020年の東京オリンピックに向けて、外国人訪問客が増え続けている。スカイアクセス線もスカイライナーもいまの2倍に本数が増えるだろうから、線路使用料をきちんと徴収することで、運賃はさらに低下することになる。利便性が高まり、現行の運賃はいまの2分の一程度に下げられるのではないか。
運賃問題が解決していないのに、白井市の人口は増え続けている。たぶん印西市も同じだろう。これに運賃が低下すれば、都心(日本橋)まで40~50分で行けるのだから、この町の人気は高まることはまちがいない。
余計なおせっかいだが、「北総線の運賃値下げを実現する会」(白井市堀込2-1-5-704)には、ぜひとも頑張っていただきたい!(047-492-4537)。このブログを読んでいるメディアの方も、このことを記事にしてみたらどうだろうか?会社経営のいい加減さと、深刻な地域の交通問題として、学術的にも興味深いネタである。