㈱ハニーズ:同じブランドでも都市と地方でイメージ評価と来店行動にこれだけ大きな違いが

 昨年夏から『チェーンストアエイジ』で連載がはじまった「マーケティング・フィールドノート」で、ハニーズを取り上げることにした。


暮れに学生が実施した調査データを見ていて、おもしろい発見をしたからである。明後日、院生の伊藤君と学部生の水越さんと3人で、半年ぶりでハニーズの本社を訪問する。
 昨夜は調査データを細かく分析していた。27日は、江尻社長の他に、ハニーズ側から、販売企画担当者のうち数人が、われわれのプレゼンを聞くとのことだった。手抜きはできない。
 アンケート調査の集計結果を眺めていたら、ハニーズの弱点が見つかった。データは公開してよいとのお許しをいただいている。ちょっとこわいが・・・HPでも発表してしまうことにする。株価が下がらなければ良いけれど(笑い)。
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「㈱ハニーズ:同じブランドでも都市と地方でイメージ評価と来店行動に大きな違いが」CSA2007年3月15日号掲載予定(未定稿)

 昨年夏から半年間、学部ゼミ生と一緒に「ハニーズ」の店舗を定点観察してきた。㈱ハニーズ(本社:福島県いわき市)は、若い女性向けのカジュアル衣料店チェーンである。SPA型の小売業で、商品の約7割が自社ブランド(J-Honeyなど4ブランド)、残りがメーカーデザイン商品である。同社の特徴は、タウンウォッチング(渋谷・原宿)などにより流行のデザインをすばやく取り入れ、中国の協力工場で小ロット(5000~8000枚)生産したのち、全国約600店舗で短期間に商品を売り切ってしまう販売力にある。売上成長率も高く、経常利益率も同業では最高水準にある。
 10月までは学生たちと、都心部と東京近郊の商業集積(錦糸町、新宿、お台場、川崎など)にあるハニーズの店舗と来店客を観察してきた。ハニーズ本社の許可を得て、簡単な消費者アンケートと友人たちへの商品使用テストなども実施した。そこで気がついたことは、少なくとも都市部の消費者に関する限り、高い業績をあげているわりに、ハニーズのブランド認知率とイメージ評価があまり高くないことであった。また、流行のデザインと価格はそれなりに高い評価を受けているものの、接客サービスとブランドイメージに関しては問題があることが指摘された。一時期のユニクロを髣髴とさせる結果であった。
 11月になって、学生たちが「ハニーズの地方での評価が知りたい」と言い出した。そこで、地方の店舗(群馬県藤岡市と館林市:85サンプル)と都市部の店舗(錦糸町と新宿:73サンプル)で、同一フォーマットで来店客調査を実施することにした(12月13日~15日)。対象となったハニーズの店頭で約8時間、入店率と買上率をカウンターで調査した。その結果の要約を以下に示すことにする。

(1)ブランド認知率:店舗ブランドの認知率は、地方(78%)の方が都市(62%)よりやや高い。しかし、商品ブランドの認知率には、差が見られなかった(どちらも48%)。
(2)入店率と買上率:通行客全体に対する入店率は、地方(43%)のほうが都市(30%)より高く、来店客に対する買上率は、都市(21%)のほうが地方(12%)より高かった。この結果から、わたしは、「店舗イメージと来店頻度は都市よりも地方のほうが高いこと」を学生たちに予言していた。

(3)来店頻度:事前の推測どおりであった。地方の(コア)顧客の来店頻度が圧倒的に高かった(図参照)。月1~2回以上が、地方では55%、都市では24%であった。
(4)(購入客の)購入理由:どちらも「値段が手ごろ」が一番の購入理由である(地方44%、都市58%)。「欲しい服が置いてある」は地方が多く(地方20%、都市5%)、「近くに店がある」は都市で多数だった(地方14%、都市20%)。

 つまり、ハニーズの地方店舗は、比較購買される競合店が少なく、地方の顧客は何度から来店して、自分の気に入ったデザインで価格が手ごろな流行の服を購入している。流行をチェックするために来店頻度が高い。それに対して、都市の店舗(顧客)は、デザインというよりは、主として値段で選択されている。頻繁ではないが、一度来店したら購入する可能性が高い。都市でも地方でも、店舗ブランド、商品ブランドともに認知率が低いことが課題である。