社外取締役が社内不正事件を防止できるとはとても思えない!

 『週刊文春』(12月15日号)のオンライン記事で、「大企業に義務付けられる社外取締役は役に立つのか」というコラムを見つけた。その記事を貼り付けるが、わたし自身の数少ない経験からも、社外取締役に不正防止の期待はしないほうがよいと考える。記事に同意である。

 記事にもあるように、現状では、利害関係者の知り合いが社外取締役に選出されている。もちろん株主総会や取締役会にはかけるのだが、経営陣の決定に反対できるような根拠はだれも持っていない。最高裁の裁判官を拒否するのと同じ状況だと思えば、まちがいがない。
 わたしの場合も、ある上場企業から社外取締役(監査役)への就任を打診されたことがある。仕方がないので、補欠ならばよいと言った。注意深くご覧になっている方は、わたしの名前を某社のリストに発見することができる。
 この案件以外にも、社外取締役を打診されたことがある。すべてお断りしている。

 経営に関与しない理由は簡単である。期待されている役割(不正防止や経営へのアドバイス)に対して、責任が持てないからである。頼んで来るのは、創業経営者か昔からの友人である。
 オリンパスや大王製紙のようになったとき、相手の意向には逆らえるはずもない。それがわかっているから、引き受けないのである。周囲には、早稲田大学大学院の川本教授(週刊文春の記事を参照)だけでなく、大手企業の社外取締役を引き受けている大学教授が少なからずいる。
 わたしの知る限り、女性教授に社外取締役が多いように思える。会社側からすれば、女性や有名教授のイメージを活用しているのだと思う。現実的なアドバイスを期待しているわけではない。
 就任を受ける側からしても、危険極まりない行為だと思う。それも、業務内容をよく知っている1~2社が限度だろう。
 
 というわけで、学者以外の場合は、さらに利害関係者と密接な関係にある。すべての場合に当てはまるとは思えないが、そのような基準から選出された社外取締役は、不正防止に役立つことはありえない。
 海外のケースは知らないが、人選や推薦の方法を、根本的に変えない限りは、制度だけをいじっても無駄である。社会や株主に対する責任などは、とても果たせない。
 そもそもが、道徳の問題である。解決はしないだろう。  

 以下に、記事の前半部分を、そのままに引用する。

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 オリンパスや大王製紙など、経営者の相次ぐ不祥事には呆れるばかり。政府も経営の透明性向上や企業統治の強化のため、大企業に社外取締役の起用を義務付ける方向で、会社法改正の検討に入った。現在の会社法では、経営方針を決める取締役に社外起用の義務はない。ただし、例えば業務の執行は執行役、経営の意思決定や執行役の監督などは取締役会と機能が分離している会社(委員会設置会社)などは、社外取締役の起用が義務付けられている。

「オリンパス、大王製紙それぞれに社外取締役がいたのに不祥事は起きた。経営監視が機能していないばかりか、利害関係を疑われる社外取締役もいて、その存在意義も問われました」(経済部記者)

 一体どんな人たちが「社外取締役」に就いているのか。

 東京証券取引所の上場企業数は約二千二百八十社で、このうち社外取締役を起用している企業は千百六十四社。社外取締役の属性を見ると「他会社出身」が圧倒的に多く、九百九十五社だ。続いて「弁護士」が百五十七社、「学者」が百三十八社、「その他」七十一社と続く。

「他会社出身」は大手企業の元トップ、現役経営者や会長が多い。例えば、茂木友三郎キッコーマン名誉会長は、カルビー、HOYA、明治安田生命など三社の社外取締役だ。「学者」では、早稲田大学大学院の川本裕子教授は、伊藤忠商事、マネックスグループなど四社の社外取締役だ。

 (後略)