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【柴又日誌】 #6:庭づくりと借景

NEW!下町に移住することを決めたときから、新居の庭の設計と施工は山田さんの事務所にお願いしようと思っていた。「森のテラス」(北秋田と東京・仙川)や「庭のホテル」(東京・水道橋)の作庭工事を手掛けているのが、山田茂雄造園事務所である。秋田県出身の山田茂雄・雄太郎さん親子が経営している造園設計施工会社だ。

 

 山田さんに庭の設計と施工を依頼しようと思ったが、わたしたちが葛飾区高砂に購入した敷地はとても狭かった。

 特急電車の停車駅(京成高砂駅)で、駅近(徒歩4分)であることを優先させた結果である。敷地面積はわずか37.5坪。建ぺい率が60%なので、三階建てとはいえ、庭のために活用できる面積はそれほど大きくはない。ベランダを含めてせいぜい3坪のほどの広さだった。

 そのうえ、2世帯ともに駐車場を持ちたいと希望した。ぜいたくなことだと思う。葛飾区高砂は、都内の便利な場所である。買い物も、歩いて行けるところにヨーカ堂やダイエーなど、いくつもの食品スーパーがある。

 息子のアウトバック(スバル)の一台だけでじゅうぶんではないか、とわたしは思った。しかし、かみさんは、自分のコンバーティブルの軽自動車(ダイハツのコペン)を維持したいと思ったらしい。家族が協議した結果、二世帯で二台分の駐車場を確保することになった。

 

 というわけで、最終の設計段階になって、庭のために利用できる敷地は、南側の和室の外の空間だけになった。予想していたように、わずか3坪ほど。リビングとわたしの書斎兼寝室の窓外の細長いスペースと合わせても、全部で5坪にも満たない。狭い空間で、どのように樹木や植物を配置するのがよいだろうか?

 その狭隘な空間を現場で見た祐太郎さんは、それでも悠然と構えて腕組みをしていた。そして、「すてきな庭ができますよ」と自信満々で応えてくださった。

 それからしばらくして、わたしが作庭を依頼したことを忘れそうになったころ、PCのメールアドレスに簡単な庭の完成予想図が届いた。色鉛筆で描いたスケッチような、小さな庭の見取り図である。そのパースには、ウッドデッキの向こうに、デッキと同色の木製のフェンス(塀)が配置されていた。ヒノキの板塀を背景にして、こじんまりとした雑木林風の庭に仕上がっていた。

 細長い坪庭の設計図をみて、かみさんは、「素敵な絵になってはいるわね」と怪訝そうな反応を示した。本人は、「秋田森のテラス」も水道橋の「庭のホテル」も見たことがない。実際に山田さんが設計した庭を見たことがない人にとって、完成予想図面は「絵に描いた餅」にしか見えなかったのだろう。

 それはそうだろう。しかし、山田さんの作品を自然の中の森(秋田森のテラスやダリヤ園)やホテルの庭(庭のホテルの植栽)を実際に見てきたわたしは、完成図を興味深く眺めていた。狭いけれど、案外と素敵に設計されているのかもしれない。

 

 途中経過は省略するが、庭の工事は明日で終わる。ウッドデッキと植栽の工事はすでに完了している。あとは、隣のアパートに張り出した植木の剪定と、ライトアップのための電飾の設置作業を残すのみ。想像していた通り、我が家の庭はとても素敵に仕上げていただいた。

 植物を扱っている何人かの知り合いに、完成したデッキと板塀、植栽の画像を送ってみた。ついでに、家の中から見た庭の様子も撮影してメールに添付してみた。外庭と室内の鉢物(パキラやドラセナ)が、うまくコーディネートされている様子を評価してもらいたかったからである。

 誕生日に、花を届けてくださった自由が丘の花屋さん(今井英之さん)から、「植栽によってだいぶ変わるのですね。もみじが紅葉していて、たいへん素敵です。塀とベランダの床が全てマッチしているところが素晴らしいと感じました」との感想をいただいた。届けてもらったタイミングが引っ越しの前だった。部屋の中には家具もほとんど置いておらず、ずいぶんと殺風景だったはずである。

 庭を設計する前提として、室内のインテリア(+インドア・プランツ)と窓外の植栽を一体化してデザインするように、雄太郎さんには依頼していた。一階の居住空間も室外の庭も狭いので、トータルで植物を配置するよう頼んであった。期待していた通りに、それ以上に、みごとに庭が仕上がってくれた。

 

 昔から敷地が狭い日本の家屋では、外の景色(庭や樹木)を活用して空間を広く見せることに腐心してきた。借景の発想を、今回は自宅の作庭に取り入れたわけである。インドアプランツとアウトドアの植木を一体的にデザインしてもらう発想は、いつごろから持てるようになったのだろう。

 これまで、世界中のすてきな商業施設や飲食店、美しくデザインされた店舗や街並みを見てきた経験からきているのかもしれない。その成果が、自宅の庭のデザインというのも不思議な因縁だと思う。経験が生活のための知恵とテイストを作り上げてきたのだろう。

 とはいえ、山田さんの作庭のセンスがなければ、こんな素敵な庭は完成できなかったはずである。植物の神様たちに感謝である。山田さんの造園作品の一部は、わたしのインスタグラムにアップしておくことにする。参考まで。もしかすると、わが庭の写真を見て、山田茂雄造園事務所に、自宅の庭を頼んでみたくなる家族が現れるかもしれない。

 山田さんも、ぜひ営業のページとしてご活用ください! とにかく、ありがとうございました。持つべきものは、いい庭師です。きっと今後は庭のメインテナンスがたいへんになるだろうな。そう感じています。

| Kosuke Ogawa | 10:25 | - | - | pookmark |

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