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【学生感想文】市来 広一郎 著『熱海の奇跡』東洋経済新報社
NEW!読書感想文優秀者6名を掲載する。
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『熱海の奇跡』を読んで  4年 山崎 大


 本書は、熱海出身である著者の実体験を元に衰退した観光地熱海が、なぜ再生できたのかが書かれている。そして、この熱海での取り組みはビジネスによって自立した街が増えていけば、日本全国が復興するという経済全体を向上させるヒントを提示している。

 本書を読んでまず感じたことは、私は熱海のことを何も知らないということだ。本書を読む前の私の熱海に対するイメージは、都心から近く時代を問わず老若男女に愛される街だった。しかし本書を読み進めていくと、人口減少や多くの旅館が倒産するなど苦労と挫折を経験してきた街であることが分かった。
 そんな熱海が再び活気を取り戻すことができたのは、「リノベーションまちづくり」が成功したからである。リノベーションまちづくりとは、遊休化してしまった資源を活用し、そこに新たな価値を発明し、街を再生する取り組みのことである。街の文化を見直し、魅力を高め、経済力を増強することで活性化するという考え方である。

 私はこの「リノベーションまちづくり」を、肌で感じたことがある。それは、小川先生と共に訪れた海の京都である。海の京都とは、京都府北部(宮津市・京丹後市・舞鶴市・福知山市・綾部市・伊根町・与謝野町)を海の京都と位置付け、地域活性化と観光振興を目指して、さまざまな事業を実施している。平成27年、京都縦貫自動車道が全線開通し、アクセスが飛躍的に向上したことから観光客が増加している。
 そんな海の京都の中でも、私が最も印象に残っているのが伊根町の舟屋である。舟屋は船の収納庫の上に住居を備えた、この地区独特の伝統的建造物である。重要伝統的建造物群保存地区に選定されているために国内外にも知られている。もともとは漁師町として栄えた伊根の美しい景色と非現実的な舟屋群は観光客の目に留まり、海の京都を代表する観光地になった。熱海と同じくリノベーションまちづくりをし、成功した地域と言えるのではないだろうか。

 しかし、熱海が再び活気を取り戻すことができた最大の要因は、地元の人々が熱海の魅力を再認識し熱海を活性化させたことである。つまり、他の地方観光地は熱海が行った施策を真似するのではなく、人々の精神を学び活かしていくことが重要であると感じた。
 私は現在、小川先生のもとで実践的マーケティングを学ぶべく、フィールドワークを行なっている。具体的には、富山県魚津市のブランディングをしており、現地の市役所の方やJTBの木村さん、松川弁当の林社長など多くの人の協力を得て活動を行なっている。このフィールドワークを行なっていく中で強く感じるのは、関係者たちの魚津市をより良くしたい、もっと知ってもらいたいという強い思いである。そしてその思いは行動にも現れていて、いつも刺激を受けている。実際にその行動は結果に現れてきており、魚津市は少しずつではあるが「食の街魚津」として認知度が拡大してきている。
 本書に書かれているように、熱海のようにビジネスで自立した街が増えていけば、日本全国が復興し経済が発展する。つまり、著者や魚津市プロジェクトの関係者のような人々が増えれば、地方観光地は活性化し日本全体として成長していくことができるのではないだろうか。

 本書を読み終えて、行政ではなく民間企業が利益をあげてこそ、持続可能な街づくりになり活気を取り戻すということが分かった。そして、地元住民がまず魅力を認識し新たな価値を見出していくことが最も重要である。
塵も積もれば山となるということわざのように、小さなことでも積み重ねていけば熱海のように、再び活気を取り戻すことが出来る。1人の行動が周囲の人を動かし、街全体として活動し始める。映画みたいな話だが、熱海で実際にあったことである。他の地方観光地も地元の魅力を再認識し、その魅力を広めていって欲しいと感じた。


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『熱海の奇跡』を読んで  4年 大川真奈


 熱海。私の実家からは車で2時間ほどで着く場所だ。熱海へは何度か行ったことがあるが、それは熱海再生後だったので、私にとって熱海=観光地のイメージが強い。しかし今回本書を通じて、現在のように活気ある熱海になるには、様々な思いや仕掛けがあったことを知り、さらに熱海への魅力が増した。
 本書を読む前は、衰退した観光地を回復するには、何はともあれお客さんを集めなければ、という動きに走ってしまいそうになると思ったが、熱海は違った。まず地元の人が地元のことを知り、街そのものの魅力を高めることから始めたのだ。
 以下、熱海がV字回復するに至るまでの取り組みにそって、熱海の奇跡をみていこうと思う。

 「オンたま」。2009年から始まり、熱海ファンをつくることを目的とした、地元を楽しむ体験交流ツアーである。地元の人も知らなかった熱海の魅力を伝えるために、海を活用した“シーカヤックツアー”や、“路地裏昭和レトロ散歩”といった昭和レトロな街並みを歩きながら喫茶店などを紹介するツアーなど、様々なプログラムが開催された。
 オンたまによる変化は徐々に現れた。街なかを歩いて楽しみ、お店に立ち寄る“喫茶めぐり”では、数十年の歴史があるにも関わらず、中が見えなくて入りにくい雰囲気のお店をガイドしていくことで、お店の存在を知り、入るきっかけを作った。そして、口コミによって熱海の喫茶文化が伝わっていったのだ。観光客からすると、やはりネットや本に載っていないお店へ行くことは難しい。こうした新たな熱海の魅力が発掘され、その土地にしかないお店や風景を知ることができたら、旅の醍醐味である非日常を体験できて素敵だなと思った。
 オンたまを通じて地元の人々の意識改革が行われ、熱海ファンが増えた。地元の人が地元を知ることで、どれだけ街の印象に変化をもたらすか、がわかる取り組みである。

 「CAFÉ RoCA」。熱海の中心街である熱海銀座を変えるために空き店舗をリノベーションし、コンセプトを“家でも職場でもない第三の場所”としたカフェである。
 なぜカフェなのか。その目的は3つあるという。1つ目は、「オンたま」の拠点としてのカフェ。2つ目は、リノベーション街づくりの拠点となること。3つ目は、街と里をつなぐこと。カフェを通じて、熱海銀座の可能性を広めていったのだ。
 しかしカフェは営業的に厳しく、閉店してしまった。また、目的の1つ目と2つ目は実現したが、3つ目は十分に達成できなかったという。その上で、筆者はカフェを“失敗事例”だと述べている。いくらいい場所を作っても赤字事業ではダメということを痛感した。
 一方、経営的には失敗だったが、「何か面白いことが起こり始めている」という認識が生まれ、熱海銀座に点を打つことが出来たのは、CAFERoCAの素晴らしい役割である。また、本書にでてくる「失敗したらまたそこから次を考える、失敗してもいい、チャレンジしていこう」という考えは人生においても大切な教訓だと感じた。

 「ゲストハウス MARUYA」。”旅すること“と”住むこと“の間のグラデーションある暮らし方をつくり、熱海の街なかに人を呼び込む仕掛けだ。
 私にとってゲストハウスと聞くと、外国人のバックパッカーが泊まるという印象しかなかった。しかしこのゲストハウスは、外国人だけでなく東京など近くの都会に住む人が多く泊まりに来る。都会とは違う、もうひとつの日常を熱海で時々過ごすことで暮らしの豊かさを感じることが出来るのだ。
 また、都会からそう遠くない場所で熱海の暮らしを体感できるだけでなく、地元の人や泊まりに来た人と交流を楽しむことができる。旅先で地元の人と仲良くなれるのは、忘れられない旅の思い出にもなり、素敵だなと思った。新たな出会いの場として活躍しているゲストハウスに、今後もますます目が離せない。

 本書では様々なプロジェクトが紹介されているが、いずれも困難に直面している。赤字経営や資金調達、地元の人からの反感など。しかし、どんな困難にぶち当たっても決して熱海のまちづくりを諦めない著者の気持ちの強さに感銘を受けた。だからこそ、一緒になって街を変えようと協力してくれる人が現れ、熱海は活気ある街へと変化した。行政ではなく、“民間主導“で行ってきた熱海再生。たった一人からでもアクションを起こせば何かが起こる。チャレンジすることの大切さをあらためて実感させられた一冊である。


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『熱海の奇跡』を読んで  4年 大戸恵


 今回読んだ『熱海の奇跡』は、私も訪れたことがある熱海のまちづくりについて書かれており、筆者の正直な体験談は心に響くものがあった。私が熱海を訪れたのは2年ほど前で、そのころには商店街に活気が戻り観光地らしいなと感じていたが、陰で努力している人間がいたからこそ生まれた光景なのだと分かった。全国さまざまな地域で地方活性化やまちづくりイベントなどが行われているが、何を、何の目的で、どのように活動してきたのか、体験談と共に読み進めて行くことができたので、とても読みやすく感じた。

 私がこの本を読んで真っ先に頭に浮かんだのが、神奈川県にある三浦半島のまちづくりについてだ。三浦半島といえば「みさきまぐろきっぷ」が有名で、電車賃、食事券、バス乗り放題券、おみやげ券を含めて3500円ほどのとてもお得なきっぷが販売されている。若者の間でも人気で一度は訪れてみたいと思う場所である。このきっぷを発売している京浜急行電鉄株式会社の方から、以前みさきまぐろきっぷの誕生についてお話を伺う機会があった。
 話によると、このきっぷでは鉄道会社に入ってくるお金は通常の電車賃の分くらいなものでそれ以上の利益はほとんどないのだそうだ。ただ、人口が減少し活気がなくなりつつあった三浦半島をどうにか盛り上げたいという思いで、地元の方々の強い協力が得られ、他に類をみないお得なきっぷが発売可能になったとのことだった。実際に2009年の発売時は1万5千枚程度だった年間販売数も、5年後の2014年には10万枚を上回り絶大な効果があった例だといえるだろう。

 熱海と共通している三浦半島の成功要因として、
・地元店(民間)がビジネスとして成り立っていたこと
・日帰りで気軽に少し遠出をしたいという新しいニーズを掴みアプローチしたこと
・使えるネットワークは最大限活用すること(京急電鉄との協同)
が挙げられるのではないだろうか。
 また逆に相違点として感じたのは、熱海は中の意識を変えること、外からの人を呼ぶこと、どちらにも力を入れバランスよく向上したのに対して、三浦半島では外からの人が数年で爆発的に増えてしまった為に中の人がそこについていけてないように感じた。実際に私がみさきまぐろきっぷを使用した際、飲食店のホールが2人で手が回っていなかった。空席があるにも関わらず新規客をすぐに案内できない状態となっており、人手不足を感じたことを覚えている。
 まちおこしをするにあたって、内外の改革はバランスよく進めて行かなければならないのだと感じた。


 熱海のまちづくりにおいて、できることを着実に進めていったその活動方法やプロセスは大きな成功要因であると思うが、筆者の信条を貫く姿勢や常に目の前の問題に対して適切な解決策は何かを考え続けたことなど、精神的な部分もまた大きな成功要因の1つと言えるだろう。
 この本を読んでいく中で、人からのアドバイスを真摯に受け止め、失敗を認める、目標に向かってできることは全てやるなど、筆者の人柄が垣間見えた気がした。これらのことはまちづくりにおいてだけでなく、今後1人の大人として成長していくために必要なことだと感じ、私にとってこの本はちょっとした自己啓発にもなった。
 最終目標に向かって活動する中で、アドバイスを聞き入れ、失敗を認め次に繋げる、周りの人たちとの信頼関係を築くことの大切さを学んだ。

 全国でまちづくり活動がされている中で熱海が成功したのは、あらゆる要因が線で繋がったからなのだと改めて感じた。問題解決意識を持ち続け常に次を見据えることはとても大切だろう。でもやはり一番大切なのは、地元民との信頼関係を築き、みんなで盛り上げて行こうという意識改革だと思う。
 人の気持ちを動かすのは人の気持ちだと思うが、熱海が再生したのは活動の主軸となった人が市来さんだったからこそだと改めて感じた。また、ものごとに取り組む姿勢という面から学んだことが非常に多く、来年から1社会人として生きて行く上で活かしていきたいと思った。本の内容がとても面白かったので、もう一度読みなおそうと思っている。


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『熱海の奇跡』いかにして活気を取り戻したのか  4年 中川 里紗


 かつて首都圏近郊の温泉地として栄えていた熱海であるが、人口減少やバブル崩壊、群発
地震といった様々な要因で衰退していた。しかし、熱海は数年で V 字回復を遂げた。熱海
再生の実現には、民間プレイヤーの活躍が大きく影響している。民間から経済循環を生み出
すことが、地域の繁栄に繋がっていく。具体的には、空き店舗にカフェやゲストハウスなど
の、リノベーションを行った。それら通し、人々や行政を巻き込み、街のファンやプレイヤ
ーを増やしていったのだ。

 著者は初め、地元の人が熱海を知り好きになってもらうことから始めた。街づくりは「街
のファンを作ることから」。地元の人たちが熱海の魅力を知らないという現状があったそう
だ。あるとき、熱海に観光で遊びに来た女性が、観光協会にクレームを伝えて帰ったという。
「何もないって一日に三回も言われた」。お土産屋さん、タクシー、そして旅館に戻って聞
いても同じことを言われたそうだ。もし、私が同じように観光をしに訪れた土地で、何もな
いといわれ続けたら、再び同じ土地に行こうとは考えないと思う。
 私はこの部分を読み、フィールドワークの魚津を思い出した。私は、魚津班として魚津の
魅力を首都圏に広げるために活動している。そのために、今年の夏、実際に魚津に足を運び
視察を行った。
 両親の親が、横浜と東京にいるため、田舎という田舎がない私には、富山県の自然の豊か
さや人の温かみは非常に魅力的に感じる。一方で、市役所の方々とお弁当開発会議に参加し
た際に、市役所の方たちから、魚津市への“愛”というものをそんなに感じなかった印象を
受けた。JTB の木村さんや、山形弁当の社長さんのほうが、魚津の魅力を必死に広めたいと
考えている感じがした。それは、魚津の魅力を外側から見て、気づいているからなのかもし
れない。地元の方々は、当たり前の環境過ぎて、魅力に気付いていないのかもしれない。

 このような当たり前すぎて気づいていない、「何もない」と返答するような、地元の人た
ちのネガティブな熱海のイメージを変えることが最初の課題であると気づいたという。
なぜ「何もない」と感じてしまうのか。地元の人がネガティブなイメージを持っているの
は、地元のことを知らないからだと考えた。そこで「あたみナビ」という取り組みを行った。
自分たちも地域のことは分からない、だからまずは自分たちが地域の面白い人、活動を取材
し、それを発信するサイトを作成した。
 また、熱海の自然の魅力を伝えようと「チーム里庭」を結成し、農業に関心のある人を集
めるための体験イベントを開催した。やはり、ただ情報を発信するだけでなく、体験し、直
接人と関わることの重要性を感じた。
 私は以前、四国に旅行をしたことがある。そこで、みかん狩りを行った。その作業を通
して、愛媛の気候だとか、おすすめのお店だとか多くの情報を頂いた。老夫婦で経営してい
た農家で当たったが、二人の馴れ初めなども聞いて随分親しくなった。
 また、旅行中レンタカーを借りて移動していたのだが、エンストして車が動かなくなるハ
プニングがあった。東京だったら、放置されてしまいそうなところ、愛媛の方達はみんなで
車を押したり、点検してくれたり、助けてくれた。すごく心が温まったし、一生忘れない思
い出だ。

 観光や移住、目的が異なったとしても、何かの体験を通し、人とコミュニケーションを
とるということは非常に大切なことであると感じる。畑作業を楽しみながら、人と関わる中
で、新たな美味しいお店を知ることができたり、自然の魅力を再発見できるだけでなく、人
の魅力はその土地の大きな財産であると思うからだ。
 終始、魚津のフィールドワークの活動と重ね合わせて読んでいた。現状やもともと持って
いる資源等も異なるから、全てが当てはまるわけではないかもしれないが、街づくりにビジ
ネスで取り組むという考え方を学ぶことができた。いかに壮大なプロジェクトに携わって
いるのかということを、再認識した。1 年という短い期間、まして残り半年を切ってしまっ
ているけれども、少しでも爪痕を残せるように、班員全員で頑張ろうと思った。喝を入れら
れた一冊だった。

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「熱海の奇跡 〜いかにして活気を取り戻したのか〜」を読んで  3年 長野 瑞生


 私は去年の10月頃に2泊3日で父親と祖母と私の3人で熱海を訪れた。それまで熱海に行ったことがなく、私の熱海に対するイメージは、年配層向けの温泉エリアというくらいだった。しかし、実際に訪れてみると私の街の印象は、意外と中心街が店舗と観光客で賑わっているということと、若者が多く訪れているというように変化した。だから、この本を読んで、熱海の街おこしのためにたくさんのエネルギーや努力が重ねられたことがわかった。
 
 本書の中でも述べてられていたが、旅行の目的は変化してきている。かつての日本の温泉地は、団体旅行でただ旅館やホテルに宿泊するだけだった。しかし、現在、観光客が求めているのは、旅行で日常には無い体験ができることである。
 私は熱海旅行に行く前に、リトリップという旅行キュレーションメディアを使用して情報収集をした。リトリップでは、あるテーマに沿って街やエリアの旅先の観光スポットやご当地の食べ物、アクティビティなどが紹介されている。だから、自分にあったテーマやタイトルから検索して旅先について簡単に知ることができる。
 私がリトリップで「熱海」と調べた時に多くのサイトに掲載されていたのが、「熱海プリン」だった。2017年に熱海銀座のメインの通りにオープンした小さなお菓子屋さんである。ビンに入ったプリンをメインに取り扱っている。温泉に入っているカバのイラストがビンにプリントされていることが特徴だ。あえてビンに入れることで昭和の牛乳瓶をイメージしているそうだ。また、店舗自体も使用されず朽ちかけた50年前に立てられた商店をリノベーションしており、レトロな雰囲気が可愛らしかった。実際に店舗に行ってみると、小さい店舗に対して行列ができており、さらに今年の7月に2号店を同じく熱海に出店し、成功している。本書には挙げられていなかったが、熱海プリンもリノベーションによるまちづくりの代表的な例だろう。

 私がリトリップで検索したように、人々はかつてのパッケージの旅行よりも、自分の目的に合った旅行を求めているだろう。そのために、温泉街である熱海本来の特徴やレトロ感を残しながらのまちづくりは必要不可欠だ。そこから、まちのファンを形成し、リピーターになってもらう。それらのファンが熱海を外に発信してもらうことが重要だと私は考える。

 また、私は熱海の成功事例を読んで、島根県出雲地方でもゲストハウスを作った方がいいのではないかと思った。私自身、東京で生まれ育ったため、著者のような地元を復活させたいという熱い情熱を持っている場所はない。だから、私にとっての唯一の田舎と言える出雲地方だ。なぜなら、私の父親の実家が出雲周辺で、幼い頃は毎年、祖母に会いに行っていたからだ。出雲地方を本書に挙げられている事例と比較してみると、魅力的な宿泊場所がないことが頭に浮かんだ。

 島根県と言えば、出雲大社というイメージが強い。「ご縁の国しまね」として有名タレントを用いてPRに取り組んでいるがその知名度は低い。松江市内は年々開発が進んでいるが、シャッター街や空き家も多い。あまり知られていないが、熱海のように玉造温泉や松江しんじ湖温泉など、所々に温泉が存在する。実際に宿泊施設を調べてみると、ホテルや旅館ばかりだ。Airbnbで検索してみると、一軒家のコテージタイプもしくは旅館が主だった。熱海との共通点が多数あることがわかる。

 本書で挙げられているゲストハウス「MARUYA」のようなものが出雲エリアにもあったらいいと私は思う。空き家をリノベーションしてゲストハウスを作る。昼間は街にたくさんある神社に巡ってパワーをもらい、夜は温泉に入って、ゲストハウスで過ごす。このようなプランに対して過ごしやすいと思うファンが出来て、パワースポットに行きたい時、温泉に入ってゆっくりしたい時に、リピーターが増えるのではないだろうか。

 本書を読んで、まちづくりをビジネスとしてどのように行っていくのか、という具体的な事例を学ぶことができた。地元の人へのアプローチ、観光客へのアプローチ、さらにビジネスの誘致など様々な方向から段階的に取り組んでいく様子がよく理解できた。自分自身が地方出身ではない分、今まであまりまちづくりや地方創生にあまり関心がなかったが、この本をきっかけに興味を持つように変化した。


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『熱海の奇跡』を読んで  3年 与羽しおり


 本書を読了後、最初に感じた事は、この本は単なる地方再生の解説本ではなく、あくまでも「ビジネスの手法」を使って熱海を再生させたところが重要だということだ。地方再生というと、どうしても地方公共団体が税金や補助金を用いた政策を進めたのだと思ってしまう。地方公共団体や政策と言われると、一個人が何もないところからアクションを起こすことは難しい。そこで、「ビジネスの手法」を用いて行う地方再生なら、政治家にならずとも、やる気とビジネスの経験さえあれば誰にでもできるのではないか。本書で重要となる、熱海の再生と「ビジネスの手法」の繋がりを考察していく。

 最初に、著者はコンサルタントの業務経験から、「何が町の課題なのか。何が原因なのか」ということを常に考えた。そこで原因として挙げられたのが地元の人々が熱海を知らない現状であった。そこで、解決法として地元の人々の意識改革を行っていく。地元のユニークな活動をとりあげる『あたみナビ』では、地元の人々が自分たちの街を知る手段を作り上げた。その他にも、熱海に移住してきた人々が熱海を知るきっかけとなった『チーム里庭』の活動、地元の人々が地元を楽しむツアーである『オンたま』など、着実に地元の人々の意識改革を行った。
 しかし、「ビジネスの手法」を用いたために困難にもぶつかっている。持続可能なまちづくりにするためには、補助金に頼らず、自ら生み出した利益が必要不可欠であったからだ。補助金に頼った街づくりは事業の制約が厳しくなり、補助金が打ち切られると潰れてしまう。収益の上がらないNPO法人は持続可能なまちづくりを実現できない。「自転車の前輪で地域の問題解決をして、後輪ではそのノウハウを活かして、別の形で稼ぎつつ進む。問題解決と稼ぐことの両方があって、初めてNPOは成り立つ。」この言葉より、まちづくりにビジネスで取り組む意味がわかった。

 そこで、著者は実際に利益を上げつつ、街づくりを行っていくための様々な取り組みをしていく。カフェの運営や、ゲストハウスの設立である。カフェは利益を上げるという点では失敗に終わったが、エリアを変えるための最初の点を打つことには成功した。そして、今までの活動すべてを振り返り、熱海の中に人を呼び込む機が熟したと感じた著者は、ゲストハウスを設立する。
 本書の序盤では、このような記述があった。「観光客が求めるものが、かつてのような団体客による宴会型歓待型から、今では個人や家族による体験・交流型に変化した。」著者はこのことが熱海を含めた温泉観光地の衰退の根本的な原因としている。そこで、宿のファンを作るよりも、街のファンを作れるよう、ゲストハウスでは多くの仕掛けを用意した。熱海の街のファンを作ることを目的としていたオンたまでは、採算が取れずに継続を断念したが、ゲストハウスは事業としても利益を生み出し、継続・発展が可能な形となった。ついに街づくりのビジネスが回り始めたのである。

 東京一極集中が進む中で、それに対抗するため多くの街づくりが行われている。実際に、私の地元、札幌市でも稼げる街づくりを行なっていた。札幌駅近隣の企業・団体が「札幌駅前通まちづくり(株)」を設立し、札幌駅と大通り公園をつなぐ新しい地下歩行空間を作った。それまで札幌駅の周辺と大通公園は切り離されて存在しており、栄えている札幌駅と大通公園の2点を結ぶ駅前通りは、何故か寂しい印象が強かった。
 そんな駅前通りを盛り上げようと、冬の厳しい寒さを避けて札幌駅前と大通公園の回遊性向上のために地下歩行空間が開通した。単なる地下歩道であるだけでなく、商業施設と融合してお店が地下歩道に面して作られていたり、広いフリースペースでマルシェやアートの展示など様々なエリアマネジメント活動が行われている。歩いているだけでも楽しい地下歩行空間は、中学生ながらに感動したことを覚えている。そんな地下歩行空間は、開通するまで下降傾向だった駅前通りの地価をV字回復させることに成功した。

 稼げる街づくりは、ビジネスを行なっている企業が稼げることに加え、街全体の価値が上がることが重要である。街づくりの中で利益を生み出すことは、それまで人もお金も集まらなかった所を変化させつつ稼いでいくことなので並大抵の作業ではないだろう。実際に著者はたくさんのチャレンジを重ね、失敗も経験し、熱海を再生に導いた。補助金を用いた地方公共団体の政策としてでは、こんなに多くの新たな取り組みは行えなかっただろう。ただ単に熱海の再生の物語として読むのでは無く、ビジネス書として読み進めると、著者一人から始まった熱海の再生はやはり奇跡のような出来事である。




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