小川研究室による「有機表示調査」の速報をお届けする。「擬似オーガニック」の表示調査は、11月から12月にかけて、都内の食品スーパー、自然食品店、百貨店、コンビニエンスストア、化粧品店、ドラッグストアなどの店頭で実施された。ここでは、一般的な傾向をポイントで記述してみる。
なお、誤解してほしくないのだが、わたしは、「オーガニックもどき」を否定しているわけではない。「有機成分を含んだ食品や化粧品を使用しています」は、オーガニックを普及させるために、基本的に悪いことではないと考えている。消費者も、体に良いもの、美容に良いものに関心を示している証拠である。
その象徴として、オーガニック的なものを求めている。40年ほど前から、日本のオーガニック生産者や専門流通業者が、「有機の質」と「有機の信頼性」を高めてきた結果である。明らかに「有機農業運動体」の遺産である。
そのうえでいえば、せっかく打ち立てた「オーガニック」の良いイメージを壊さないためにも、「有機に関する表示」に対してガイドラインを設けるべきだと考えている。以下は、そのための実態調査である。あまりに野放図な有機表示の放任は、有機のイメージを破してしまう。
有機市場の健全な発展に、行政には正当な表示基準と制度を設けてほしい。それを願っての調査である。
<「有機」の表示調査:概要>
●時期:2014年11~12月
●場所:東京都内の食品スーパー、自然食品店、百貨店、コンビニエンスストア、化粧品店、ドラッグストア、
●対象:加工食品・飲料・日用品・化粧品
「オーガニック」「有機」の語句があるが、「有機JAS認証マーク」のない商品
●実施:法政大学経営大学院小川孔輔研究室
(調査担当者:青木恭子、一部、小川孔輔編集)
1 有機JAS認証マークのない商品
(1)加工食品
① 有機表示の適切性に疑問
一部の主原料でない素材や調味料のみが、有機と表示がされている。
例:「生あみの佃煮(有機醤油使用)」
ドトール・日レスホールディングス子会社の自然食品店で共同開発・販売
② 優良誤認の恐れがあるもの(「有機」の表現乱立)
有機JASマーク付製品と、店頭で同じ棚に並んでいることが多い
例:ソース、ケチャップ(食品スーパーの棚で目立つ)
トマトなど「主素材」で、「有機栽培品を使用」、「JAS認証」などの記述があるが、
ロゴや認証機関名等の情報はない。
原材料に、甘味料、果糖ぶどう糖液糖などを使用しているものもあり。
③ 自然食品系のメーカー・小売店(PB)の「有機」表示
有機認証を多くの製品で取得済だが、認証なしの商品では、生産者名表示や自社ブランドで信用担保している。
例1:自然食品店「ナチュラルハウス」
ナチュラル系惣菜・弁当で基本的に有機JASマークはなし
例2:自然食品の店「F&F」
店の方の話では、小豆も玄米も有機認証を取っているが、製造工程の関係で、有機JAS表示はない。
例:商品は「レトルト包装有機国産小豆入り玄米小豆ごはん」
例3:「OBENTO(池袋西武など)」
野菜は基本的に有機栽培(店の方の話)、「有機塩麹のハンバーグ弁当」など
棚で表示を使い分けるケースもある
例4:デイルズフォード
棚にマークで表示、有機JASと海外認証(Soil Association)
例5:ナチュラルハウス
棚に表示基準、「有機JAS」「有機JA認定原材料含む」「海外認証」
④ 「有機JAS認証」記述のみ、有機JASのロゴなし
・一部の原材料のみ有機の場合(酒類に多い)
・海外認証機関のロゴのみある場合(消費者にはわかりにくい)
例: 海外認証マーク(ドイツ)があるのは、日本ビール「有機農法ビール」
例:サッポロワイン
ポレール 有機プレミアム、「果実酒(有機農産物加工酒類)」
「有機JAS認証のぶどうを100%使用」があると書いてあるだけで、製品にJASマークは無し。
⑤ 海外有機認証・ロゴはあるが、有機JAS認証がない
日本の有機JASを取りにくい場合
例:デイルズフォード(日本では片岡物産)
Soil Association有機認証、有機JAS認証なし
ハチミツ、乳製品使用の場合など、日本で認証が取りにくい(店の方の話)
(2)化粧品、ヘアケア用品、歯磨き粉など
「有機」「オーガニック」乱立、有機JAS法施行前の農産物のような状態
① 不適切あるいは疑問の残る表示
・一部で少量使用、「有機」「オーガニック」表現
・一部成分は「有機認証」と記述、合成保存料等併用
・何がオーガニックなのか、記述なし
例1:無印良品
「オーガニック オールインワン美容液ジェル」
オーガニック成分について記述なし
例2:「植物性ナイーブ ボディソープ」(クラシエ)
「Organic オーガニックMIX成分配合」
「*オーガニックMIX成分 オーガニック認証素材を含む植物成分」(裏面)
例3:「ティモテ ヘアトリートメント」(ユニリーバ)
「オーガニック認証成分配合」(表)(ロゴ風の円形デザイン
「Organic-Certified Ingredients Infused」「これはデザインの一部です」と記述あり)
② 有機栽培・天然成分使用、認証なし(ナチュラル系ブランド)
例:ナチュラルハウスPB、
「BLESS THE EARTH モイスチャーハンドクリーム」
大型サイズでは生産者名等も記載、パンフレットでは有機成分等全配合成分を記載
ナチュラルハウスは、PBの他のラインでエコサートの認証品を販売している
③ 海外認証のみ
例:「Dr.ブロナー社製 マジックソープ」(米国輸入品)
「メイクupアーティストやモデルなど、プロの口コミから広がった無添加、
オーガニック石鹸」 ドラッグストアによく置いてある
米国OTCOオーガニック認定書取得 日本の有機JAS認証はなし
④ その他
・ペットフードや、オーガニックコットン
以下は、調査を担当した青木さんの気づきメモ(レポート)
2 気づいたこと
(1)有機JAS認証マークのない「有機」表示が多いのは、
① 既に認証付製品を多く扱っている加工業者や小売
② パン、惣菜、弁当、デザート類
③ 酒類(マークなし、わかりづらい)
④ 化粧品
認証付は高級品・輸入品、普及品では、2番手以下の企業で「有機」多用傾向
(花王やP&Gなど最大手は機能性訴求が多い)
⑤ 海外認証品
原材料の多い加工食品や、成分の多い化粧品では、
「100%」有機だけでなく、「○○%有機」表示が多くみられる。
3 「○○%有機」表示
*小川推奨:MWO(Made With Organic)の実態
(1)現状
海外の化粧品を中心に、「%表示」
① 有機認証
USDA(米国)、ACO(豪州)など
例:Dr.ブロナーマジック マジック オーガニック リップバーム
「このロゴは、米国農務省(USDA)がオーガニック認定した証です」
「この製品は、100%天然成分で、その内98%がオーガニックです」
② 有機認証+メーカーの自主表示
例1:「ニールズヤード」(イギリス)
AOC (豪州)認証+「91%有機」 表示
例2:「ニールズヤード」(イギリス)
100%有機 →認証マーク(Soil Association)
90%有機 → 自社でラベルに表示(パンフレットには記載なし)
例3:日本の事例「メイド オブ オーガニクス」(たかくら新産業)
同社のオリジナルブランド(世界のオーガニックメーカーとコラボ)
「ホワイトニング トゥースペスト」(歯みがき)
「AOC認定オーガニック成分配合率 96.5% 水と塩と加工助剤を除いた
全原料中のオーガニック成分配合率、天然由来100%で作られている
オーガニック認定のホワイトニング歯みがき。合成化合物、界面活性剤不使用」(裏面)
③ メーカー自主表示のみ
HPなどで成分詳細情報を公開 有機成分を区別
(3) 参考
「健康食品・サプリメント機能性表示新制度(2015年)」
安全性情報は消費者庁のデータベースに登録
消費者が検索でき、広く情報発信 → オーガニック表示にも活用しては?