大学院主催の「イノベーティブMBA集中講座2015」(日経Biz)で、講義を行った。12月4日もあるらしい。この忙しい中、時間を割いて資料を作成していたら、全部で4組120枚のパワポになった。青木がいないので、自分ひとりで資料を作った。2時間の講義時間だから、半分も使えなかった。
  内容は、すこし過激になっている。というか、マーケティングの基礎を教えたあと、その理論を塗り替える話をしている。時代の変わり目にあって、むかしの米国流のマーケティングは通用しない。マスマーケティングもチェーンストア理論も、根本から変えていかないといけないときだ。
  最初は、「日本でいちばん小さなエアラインが、なぜ7年連続CSナンバーワンに輝いているのか?」その理由を考えさせる質問から始まる。そして、JCSIの調査で業界トップの企業(ブランド)の認知度(参加者が何個知っているか?)を問うた。ほとんどの人は、これらのサービスを半分も認知していなかった。
  それはなぜなのか? つまりは、小さな強い企業が輝ける時代がやってきたのだ。そのことを理論的に理解してほしいと思ったから、このような質問をしてみた。そして、自らがスモールビジネスに挑戦してほしい。大きな企業も、そのための理屈を理解して実践に移してほしい。世界の企業社会は、アメーバのような組織が群れる時代に移行している。
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 「マーケティング:マーケットを理解し、市場を創造する」
 講師:小川孔輔(2015年11月18日)
0 はじめに:3つの質問
 <Q1> スターフライヤー(SFJ)というエアラインを知っていますか?
 <Q2> 日本のサービス業で顧客満足度(CS)ナンバーワンの企業(ブランド)は?
 <Q3> 業種別CSNo1企業のサービスをいくつ経験したことがありますか?
  配布資料:「スターフライヤー機内誌」(2015年12月) PDFファイル
1 マーケティングの基本
 (1)マーケティングとは?
  ・「マーケティング」(Marketing)=顧客のニーズに対応した対市場活動
  ・「マーケティング・プロセス」 = 分析、計画、実行、制御の一連の流れ
 (2)マーケティングの基本課題
  ・誰に、何を、どのように
 (3)マーケティングの立案プロセス
  ・マーケティングの枠組み
   B(事業領域の選択)
   +STP(セグメンテーション、ターゲティング、)
   +M(マーケティングミックスの決定、4P:製品、価格、プロモーション、流通)
  ・ふたつの考え方
   「マーケットイン」 ~ 顧客の「ニーズ」からマーケティングをスタート
   「プロダクトアウト」 ~ 顧客の「ウォンツ」を満たす製品サービスを提供する
 (4)マーケティングのためのリサーチ手法
  ・定量調査と定性調査
  ・もっとも大切なのは、
   「現場観察」 > 「データ分析」 > 「専門知識」(理論、枠組み)
  ・図表(マーケティング入門から)
 (5)市場開発の視点
  ・どのようにマーケットを探して、新しい事業を起こすべきか?
   「ホワイトスペース」=誰もいいない空白を探すこと
    「ブルーオーシャン戦略」
     VS レッドオーシャン(血みどろの戦場)を避けること
  ・新しい事業を評価するポイントはどこにあるのか?
   ①新規性 ~ それが、どれくらいユニークな製品サービスか?
   ②事業性 ~ ビジネスとして十分な規模できちんと利益が生み出せるか?
   ③拡張性 ~ 将来的な事業展開の可能性がどの程度あるのか?
2 ビジネス環境の変化を読み解く
 (1)ビジネスを取り巻く基本トレンド
  ・21世紀の基本トレンド
   ◆ 洋 → 和
    ◆  人工 → 自然
      ◆ 直線 → 曲線
      ◆ 標準化 → 多様性
      ◆ グローバル → ローカル
 (2)マーケティングのルールが変わる
  ・「アンスケーリング」の時代
    Unscaling ~ 規模(scaling)を追わないこと
    標準化・規格化・効率化だけに注力しないこと
 (3)マーケティング6つの法則
   ①プレミアム価格の法則: 差別化のために、価格訴求には走らない
     付加価値(プレミアム)が付く商品を開発するように心がける
   ②新製品開発の法則: 製品(商品)開発は、自社だけで計画・実施する必要はない
     提携先とのコラボレーションが良い商品を生み出す
     場合によっては、消費者との価値共創を取り入れる
   ③消費者コミュニケーションの法則:マス一辺倒では情報が浸透しない
     SNSやキュレーションメディアを有効に組み合わせて使うべし
   ④直接流通の法則: チェーンストア向けの標準品と間接流通の優位を失われた
     直販チャネルの構築と垂直統合を志向せよ
   ⑤複数ブランドの法則: 単一ブランドが優位な時代は終わった
     マスブランドの量販戦略より、強いマルチブランドを構築する戦略を
   ⑥顧客満足の法則: 従業員満足こそがCSを作る基本要素
     量販ブランドは、マス(全体市場)を相手にするのでCSを極大化できない
3 事例研究①:製品イノベーション
 (1)ザクとうふ: 相模屋食料
 (2)レモンジーナ&ヨーグリーナ:サントリー
 (3)バリ勝男君:シーラック *みんなで考えてみよう!
4 事例研究②:流通サービスイノベーション
 (1)俺の株式会社「俺のフレンチ/イタリアン」
 (2)ラーメンチェーン「日高屋」
 (3)ナチュラル系食品スーパー「福島屋」
 (4)CVS:「ナチュラルローソン」と「ローソンファーム」
 

