上海に移動してきた昨日は、夕方から市内のコンビニ巡りをした。とくに、7月のネット調査で絶好調だった全家(フミリーマート)の成功の秘訣が知りたかった。中山公園近くのホテルに泊まったので、近くで目に付いたコンビニをかたっぱしから探索した。
すぐにわかったのは、民族系のコンビニ、例えば、好徳(all days)などがなぜダメなのかについてだった。簡単な理由である。国営企業だからだ。市内の一等地に店を構えているが、家賃がべらぼうに安いらしい。
都市部の小売店は、家賃の負担が売上の15~20パーセントほどになる。ところが国営企業だと破格の家賃で契約ができる。だから、損益分岐点がかなり低くなる。そして、店舗開発でも優遇措置が受けられる。
こうした親方中国政府のビジネスの安易さが、店員の働き方や店内の雰囲気に現れている。日本のコンビニでは考えられないことだが、店員が客の前で、食事をしている。店はくすんでいて、全体的な印象として売り場が汚れている。蛍光灯の照度が暗いのに加えて、ほとんど拭き掃除をしていないと見える。
上海麒麟の元副社長だった張さん(ジャンウエイさん、最近まで王子製紙の中国現地法人社長)よると、公務員の店員は、シフト明けに店内の水道を利用して野菜を洗ってから帰っていたとのこと。麒麟の生茶や午後の紅茶を、コンビニに納品していたときに、しばしば見かけた光景らしい。
「公務員気質が直らないんですよ。公私混同でなんとも規律がない」(張さん)
店員の身なりもうす汚れている。客に対する対応もぞんざいだ。片ひじをついて、しごとをしている。年齢も、かなり上に行っている。公務員だから首が切られないのか?
その点、ファミリーマートの店員は圧倒的に若い。動作もキビキビしている。制服もこざっぱりしている。店内は掃除が行き届いていて、チリ一つ落ちていない。
好徳の商品は、パッケージがばらばらに置いてあったが、ファミリーマートでは、きちんとブランド名が読めるように手直しをしてあった。蛍光灯もピカピカ。床もきれいに磨いてある。
面白いと思ったのは、たとえば、ポテトチップスやラーメンで、日本ブランドと台湾ブランドを並べて売っていること。日清のカップヌードルの隣に、台湾の企業グループ、康師傅(カンシーフ)のインスタントラーメンが置いてある。というのも、上海ファミリーマートは、伊藤忠の関係で、上海のコンビニの運営は、カンシーフに任せているからだ。
台湾人脈をうまく使うことが、中国事業を成功させるポイントらしい。顧客満足度が高いだけではなく、上海のファミリーマートは店舗数も増えているように感じる。対照的に、ローソンは、10年前の200店舗と比べてあまり店数が増えていない。いまも300店舗らしい。
張さんによると、ローソンの総経理に、元ユニチャームの現地営業部長が就任したとのこと(未確認情報)。一度は、現地に任せた経営がうまく回らず、三菱商事から派遣でテコ入れを試みた。結局は、それでもうまくいかずに、日本の経営をよく理解している中国人か台湾人に、現地の経営を託すことになった。
やはり、店舗を見るだけではダメだと痛感した。張さんのように、実際にベンダーだった上層部の経営者に話を聞かないと、真実の半分もわからない。ここが統計データの限界だろう。
ジャンウエイさんには、今年中に、法政大学の大学院で、特別セミナーを開かせていただこうかと思っている。テーマは、中国に進出した日本企業の現地化のプロセス、その成功と失敗の分水嶺。
なお、セブンイレブンについても、店舗についてはローソンと同じような印象を受けた。日本に比べると、上海のセブンイレブンは、なんとなく店がくすんでいて、店員さんも元気がない。理由はよくわからない。あとで、細かく調査データを見てみることにしたい。