東芝の不正会計事件で、総額1500億円を超すお金が消えた。東芝は、2003年に委員会設置会社に移行して、16人いる取締役のうち、4人の社外取締役を選任した。元外交官が2人と学者がひとり、元経営者がひとりである。この陣容で不正会計が止められなど誰も期待はしないだろう。
4日前の『日本経済新聞』(7月25日号、朝刊2面)に、「社外取締役 3つの不安」というコラムが掲載されていた。3つの不安とは、①社外取締役の経歴(元官僚や学者、弁護士などが多すぎる)、②経営からの独立性(銀行や取引先などからの出向者が多いことに対する懸念)、③監査役から社外取締役への横滑り(形式的な要件を満たしただけ)である。
6月に、『新潮45』(2015年7月号)に、「社外取締役は本当に必要か?」という記事論文を掲載させていただいたいが、その予言どおりに、東芝の事件が発覚したが、メディア(世間)は社外取締役にその責任があることを強烈に追及しない。なぜか?
5月からの制度改革(上場企業は、原則として複数の社外取締役を選任すること)により、この1年で社外取締役が1000人増員された。東証一部の合計では、その数は総勢で約3500人にも及ぶ。しかし、結局は、社外取締役を増員しただけでは、企業の不正などは防げないし、株主委託の監視機能など期待できないことを、賢い企業人はよく知っているからだろう。
問題は、だれが社外取締役の役を担うかである。(社外)取締役の選任プロセスを熟知している友人の経営者から聞いた話では、実際には友人・知人や仲間内からで選任するのだという。ファッションセンターしまむらの元会長である藤原秀次郎さん(良品計画の社外取締役を10年間務めた)も、「おひざ元の米国でも、要するに、お仲間が社外取締役を引き受けてますよ」とおっしゃっていた。
その企業のために監視や助言ができる社外取締役は、友人知人であってもよいが、その資格があるかどうかをきちんと評価する仕組みがないと、制度は形骸化せざるを得なくなる。日本で会社法を書き換えるにあたっては、企業統治に関して実質的な議論が無いままに、社外取締役に関しては「員数あわせ」だけが先行した。
本来は、実績のある元経営者がその任にあたるべきである。しかし、弁護士と会計士(③の「横滑り」)、見栄えのいい学者と女性が多く選任されている。1000人の増員のうち、天下り官僚がなんと多いことか!
今後も同じような事件が起こる可能性がある。オリンパスやソニーを見ていればそれがよくわかる。社外取締役の数を増やしただけでは、外部から企業をまともにコントロールできるわけはないだろう。
わたしの知る限り、世界的な傾向として、四半期データや月次業績がR情報として外に出なくなってきている。社外取締役の責任がますます重くなるのだが、東芝事件のようにもし責任は全うできない場合は、罰則規定などあるのだろうか?