秋田森のテラス(@桂瀬)の楽しみ方

 二日間、秋田森のテラスで自由な時間をいただいた。北秋田市(旧米内沢、阿仁合町)は、小学校3~4年生のころにふた夏を過ごした地域だ。三年前、世界的に著名なダリアの育種家・鷲沢幸治さんの紹介で、山田さん一家(オーナー)と知り合い、ほぼ毎年、桂瀬にある森のテラスを訪れている。



 今回の訪問は、ひさしぶりで蛍を見ることが目的だった。
 自分が子供のころに過ごした田舎(山本町羽立)では、田圃の中に蛍がいた。餌のカワニナがたくさん生息していたからだろう。夕方になると、わたしたち兄弟4人が蚊帳の中で遊ぶための蛍を、黒岡のキセおばさんが軽トラックでわざわざ届けてくれたものだ。
 そういえば、長い間、キセおばさんは無免許で車を運転していたはずだった。いまはライセンスを所持しているが、当時は耕運機と軽トラの運転さえ免許区分が曖昧だった。牧歌的な時代だった。
 
 昭和40年代のはじめのことである。稲作りのために、東北の農家はまだ大量の農薬を散布していなかったからだろう。夜になると、田圃のなかでふつうに蛍が飛んでいた。
 小学校の3~4年生くらいにでもなれば、逃げ足がおそい蛍なら手づかみできた。当時は、蛍ものんびりしていたらしく、短時間で簡単にかごに一杯にできた。
 その後、私が大学生になったころ(昭和45年~)には、もう黒岡の田圃では、ほんの数匹しか蛍を見つけることができなくなった。水俣病や牛込柳町交差点の排気ガス問題が、世間を騒がせるようになったころだった。

 あれから40年。一般的には、秋田の田園風景からは蛍が消えてしまった。もう蛍を見ることなどできないと思っていた。
 ところが、秋田森のテラス周辺では、梅雨のころ(7月上旬)にたくさんの蛍が自然に発生することを知った。山田さんに誘われて、米内沢や阿仁合などが町村合併してできた北秋田市に行くことになったからだ。
 一昨夜も、二年前よりのたくさんの蛍を見ることができた。森のテラスのビオトープ周辺の田圃や畑(山林を含めて26ヘクタール)では、無農薬で農作物が栽培されている。栽培される秋田こまちは、化学肥料も農薬も使用していない。そして、調理場がついている食糧庫(蔵)では、食器を洗うときも、合成洗剤は使用しない。お湯と水だけで汚れを落として流す。
 裏山からの落ちて流れてくる水脈は、そのまま棚田を経由してビオトープに流れ込む。棚田のコメは、秋田大学の研修生によって作られている。人間が自然にまったく手を加えないわけはない。
 それどころか、いや、自然のままを保つためには、人間の手がいる。農場長の片岡さんチーム(おじいちゃん1人、おばあちゃん3人)が日々努力している。オニヤンマやカエルが、そこかしこに生息しているのは人の手によるものだ。
 
 7月11日の蛍の夕べには、10人ほどが参加した。秋田県内の家族連れがほとんどだ。告知をあまりしなかったらしく、7月4日のイベントは、今年は50人ほどの参加だったという。昨年は、300人が来てたいへんだったらしい。
 最初にとても驚いてしまったのが、オーナーの山田さん一家が、蛍の季節もダリアの最盛期も、テラスの入園料をいっさい徴収していないこと。ここは個人の所有地だが、誰でも自由に入ることができるオープンガーデンだ。サンクチュアリーの環境維持基金を、金額も自由で任意に納めるだけだ。
 わたしは、当日は番人小屋(@米内沢)に宿泊した。食事代込みで3千円を支払ったが、それ以外に片岡チームの環境維持作業のために千円を”お布施”としておいてきた。

 秋には、再度ここにきて、見事に咲き誇る鷲沢さんのダリアを鑑賞してみたい。その時間をとることができるだろうか?
 そのころには、64歳の誕生日がやってくる。また、ひとつ年齢を重ねてしまう。

PS:「秋田森のテラス」について
 秋田/北秋田にある里山環境を舞台にした
 開放型個人庭園(プラーベートガーデン)
 詳しくは、
 http://www.moritera.com/akita/akita-moritera.htm