【インタビュー】 「エリートぞろいで夢や理想が消えたキリン(後編)」『日経ビジネスオンライン』

 今朝(4月27日)の『日経ビジネスオンライン』に、「キリンの首位陥落(後編)」のインタビュー記事が掲載されています。引き続き、聞き手は中野目純一(副編集長)さん、構成は小林佳代(=ライター/エディター)さんです。>



(前編から読む)

キリンホールディングスの今の低迷は、長期的視点で夢や理想を掲げ、会社を導いていくことができなかったことが影響しているというお話でしたが、ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝氏をモデルにしたNHK朝の連続テレビ小説「マッサン」を見ていた時にも、同じことを感じました。サントリー山崎蒸留所の初代所長として日本初のウイスキー製造を指揮した竹鶴氏は、世界に通じる、より本格的なウイスキーを開発しようとニッカウヰスキーを創業します。サントリー創業者も「やってみなはれ」精神でそれをサポートしました。こうした事実からは、両社の企業文化やビジョンが明確に伝わってきます。
  一方、今のキリンには、そうした明確な企業文化やビジョンをなかなか見いだせないという印象です。

小川:会社というのは本来、夢を実現するための器、手段です。けれど非常に規模が大きく、伝統があり、エリート社員がそろったキリンのような会社では、働いている人たち自身も、自分たちが何の夢に賭けようとしているのか、分からなくなっているのかもしれません。

キリンも草創期には、日本で初めてビールという大きな事業を創り出す夢に賭けていたわけです。けれど、会社が成長を続け、社員が増えていく間に、その夢が消えてしまった。官僚化してしまったと言えるのではないでしょうか。

決してキリンだけが特別なわけではありません。ある程度成功した伝統的で大きな規模の企業は、どうしても官僚的になりがちです。

サントリーやニッカでは、官僚的な体質になりかけた時にオーナーが存在感を発揮してきました。オーナーが夢を持ち続ける限り、それは社員に伝わり、社内に浸透します。夢や理想の実現を目指そうとする人がトップに立てる環境です。

昨年10月、サントリーは夢の実現のため、ローソンのCEO(最高経営責任者)だった新浪剛史氏をホールディングスの社長に招聘しました。こういうことができるか否かというのは非常に大きな違いだと思います。

キリンは官僚化してしまった結果として、人事でも本来はトップに立つべき人が立てなかったということでしょうか。

小川:伝統的で規模の大きな企業は、利益を減らさない、事業をつぶさないなど、「失敗しない」という要素で人を評価する傾向があります。安定志向の強い非ベンチャー的な人が上に立ちやすい環境です。

本来、キリンは消費財メーカーですから、お客様のことがよく分かっていて、社内のリソース(経営資源)をうまく組み合わせることができる、ある種のマーケターがトップを務めるべきです。商品開発や営業出身の人たちがキリンの事業を引っ張っていかなくてはならない。

ところが実際のところ、歴代の社長には財務、人事、総務出身の人たちが多くトップに就いてきました。トップ人事レースの中で夢や理想の実現よりも、短期的に社内をうまくまとめ成果を上げる人、博打をせず賢く経営する人が押し出されてきたのです。この点、アサヒやサントリーとはずいぶん様相が異なります。

(この続きは、『日経ビジネスオンライン』で)

 http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20150420/280161/