予想通りといえば、それまでのことだが。まあ実際に起こってみると、やはりそうなったのかという気持ちにはなる。ファミリーマートとサークルKサンクス(ユニーグループのコンビニ部門)の統合に向けて交渉がはじまった。この先、サントリーとキリンのような破断劇は起こりようがないだろう。
新聞報道によると、「お互いテーブルに着いて将来考えましょうとなってきたのは(去年の)年末くらいから。ブランドを3つも新会社にさげてという形態はありえない。一緒のブランドにする必要がある」(ファミリーマート 上田準二会長:6日の記者会見で)。
両社の経営統合が実現すると、ファミマ+サークルK+サンクスの3ブランド合計で、売上高は2兆6000億円になる。ローソンを抜いて、業界第2位のコンビニエンスストアが誕生する。ちなみに、店舗数ではトップに躍進する(セブン‐イレブンは1万7177店、3ブランド合計で1万7465店)
ファミリーマートは伊藤忠商事傘下の企業である。サークルKサンクスの親会社ユニーグループも、小さな持ち分比率のはずだが、伊藤忠商事が出資している。だから、間接的には関連会社である。
かなり前から、両社の経営統合、とくにコンビニ3ブランドの再編は時間の問題だと考えられていた。3年前の春(2012年2月下旬)に、わたしは伊藤忠商事の社内講演会に講師として招聘されている。『ブランド戦略の実際(第二版)』を刊行したばかりで、同じゼミに所属していた同級生の岡藤社長からの要請だった。いわゆる、「友情出演」による講演会である。
そのときの講演テーマは、「伊藤忠商事のブランド戦略」。もちろん、傘下にある流通ブランド「ファミリーマート」「サークルK」「サンクス」の経営についてだけ述べたわけではない。しかし、コンビニ一強時代(セブン‐イレブン・ジャパンの圧勝)を迎えて、業界の再編は待ったなしだった。
わたしの推奨策は、当然のことながら、「早急に2社を経営統合し、3つのブランドをひとつにまとめるべし」だった。というのは、コンビニ業界では、3.11以降に激しい出店競争がはじまり、「コンビニ5万店飽和説」どころか、いまや全国のコンビニの店舗数が6万店を超えそうな勢いにあった。
ローソンもファミマもサークルKも、セブンには日商で15万円以上の差をつけられている。そのような状況の中で、ファミリーマートとサークルKサンクスが経営統合の交渉に入ることが明らかになったわけである。
ところで、統合が決まったとしても、経営課題は山積みである。とりわけ、当面のセンシティブな問題は、「ファミリーマート」と「サークルK」「サンクス」のブランド名をどうするかである。
読者のみなさんは、つぎの3つのオプションうちのどれを選ばれるだろうか? 両社の経営幹部は、この問題に対して、「年内に結論を出す」と言ってはいるが、そのような悠長なことでいいのだろうか?
【選択肢】
(1)経営統合後も、「ファミリーマート」「サークルK」「サンクス」のブランド名は統合せずに、新会社の下にぶら下げたままで残す。
(2)「ファミリーマート」「サークルK」「サンクス」のいずれかを残して、一つのブランドに統合する。この場合は、ファミリーマートがいちばん有力だろう。
(3)統合と同時に、新しいブランドを立ち上げる。ブランド名やロゴマークの選択については、さらに二つの選択肢がある。
(3-A)もとのブランド名の一部を残して、合成されたブランド名を発案する。たとえば、「ファミリーKサンクス」など。自分で書いて笑ってしまった。個人的には、「7&i」(ブランド名と看板!)のような路線はやめてほしい。最低のブランド名だから。ありえないだろうが。
(3-B)まったく新しい名前にする。その場合は、どのようなコンセプトのブランドにするかで、ブランド名が決まってくる。清新な名前を期待したい。
ちなみに、わたしの選択肢は、(3ーB)である。ただし、こうした統合劇には、どんでん返しがつきものである。だから、出来ればなのだが、旧来からのプレイヤーはリングの外に出ていただいて、行司役の伊藤忠商事の社名やカンパニーカラーが前面に出てくるようなブランド名だとおもしろい。
たとえば、、やっぱり、やめておこう。