さすが日本発祥の地、出雲の国は人情味溢れるひとたちばかりだった

 まずマラソンの結果を先に報告します。出雲くにびきマラソン10Kの部は、10分前にかろうじてスタートラインに整列。大会実行委員会事務局から、特別に発行していただいたゼッケンナンバー「40001」で10KMを完走できました。タイムは51分49杪。60才代男子58人中20位。



 ちなみに、2014年末に申し込んだのは、60才代男子ハーフの部でした。完走したのは、なぜか10KMの部です。

 ことの顛末は、秘書の福尾に自宅から電話を入れたところから始まる。いまから一週間ほど前のことだったと思う。
 「出雲市のタクシー会社に電話して、駅から大会会場の運動公園まで予約を頼んでもらえない?サンライズ出雲は、出雲市駅着が9時58分です」。
 サンライズ出雲とは、東京駅を夜10時に立つ寝台特急列車のこと。終点の出雲市駅には、朝9時58分に着く。なにもなければなのだが、三日前から日本海の上空には寒気が入り込み、中四国地方は雪になっていた。

 大会二日前、Yahoo!天気予報では、松江、2月10日(火) (2月9日5時発表)
 曇時々雪
 7℃[+5]
 2℃[+4]
 0-6 6-12 12-18 18-24
— 40% 20% 20%

 やばい!大会に参加するための交通経路に関して、かなり危険な選択をしてしまった。実は、くにびきマラソンのハーフは、朝の11時05分スタート。夜行寝台列車のサンライズ出雲がふつうに走れば、9時58分に終点の出雲市駅に着く。
 福尾にタクシーを頼んでもらっていたから、マラソン会場までは10~20分だと知らされていた。ハーフの受付は10時30分までだから楽勝である。電車のなかで着替えておけばよい。会場についてからは、ゼッケンをつけるだけ。トイレにいく余裕くらいはあるだろう。

 ところが、雪になると電車が遅れるかもしれない。となると、20~30分しか余裕がない。しかし、9日時点の予報では、前日の10日は気温が高そうだった。遅延はないだろうと、たかをくくって電車に乗り込んだ。
 東京駅の13番ホームから、サンライズ出雲(瀬戸)は定刻で発車した。jfmaのイブニングセミナーではやや抑えぎみにアルコールを飲んだが、電車の心地よい揺れで、小田原を過ぎた辺りで眠りに落ちた。快適なシングルの個室である。
 夜中に二度ほどトイレに立ったが、電車に遅れは出ていないようだった。

 目が覚めたのは、岡山駅の少し手前だった。夜中に電車がゆっくり動いてるなと感じていた。やはりそうだった。
 車内のアナウンスがあった。
 「サンライズ出雲号、岡山で、サンライズ瀬戸と切り離しになります。7分間停車します。東海道線内の先行列車遅れで、今40分ほど遅れています」。
 ほんとうに、これはやばい! スタートにまにあわないらしい。絶望的である。諦めかけた瞬間、倉敷を過ぎた辺りで、仲良しのメル友女子から、メールが入った。

 「遅れてスタートできないのかな??電車の遅延チケットみたいなもので。」
 そうか、その手があったか。さっそく、大会本部に電話した。幸いにも、ゼッケン引き換え葉書には、携帯電話も載っていた。親切そうな男性が出た。
 「東京から乗り込んだ寝台列車が、雪で一時間遅れてます。ぎりぎりの到着になりますが、わたしだけ遅れてスタートはできないですか?」(わたし)。相手の男性からは、「とりあえず検討してみますが」との返事だった。

 電車が山のなかを走り始めた15分後に、携帯が鳴った。
 「協議の結果、他のレースもあるので、ハーフを遅れてのスタートはできません」
 「あー、がっくり」(わたしの内心)
 しかし、トンネルでいちど切れてから、そのあとがあった。
 「40分後に、10KMのレースがあります。それに間に合うようでしたら、ゼッケンを準備しておきます」

 救われた! こうなったら、ハーフでも10キロでもかまわない。とにかく走れればよい。まだついてるず。
 交渉は成立! ラッキー、神様はわたしを見放さなかった。

 11時40分スタートの10KMに切り替えて、レースに参加することになった。だが、四国山地に入ったサンライズ出雲は、単線をのろのろ走っている。ときどき上りの特急電車とすれ違うために、退避線にはいる。
 「特急とすれ違うのため、当駅で7分待ちます」
 「あっ、勘弁してくれ!」
 あたりの景色は、空が明けてきたから、雪が積もっているのが見える。これもまずいサインだ。
 せっかく10KMの指定替えに成功したのに、あと10~20分しか遅れられないのに。そうそう、タクシー会社に電話を入れないと。一畑タクシーに、一時間の遅延を告げた。親切だ。事情を察知してホームに来てくれるそうだ。

 サンライズ出雲は、出雲市駅に、11時05分に着いた。ホームではなく、改札口に運転手さんが「小川さま」というプラカードをもって、待っていてくれた。休みなのに、道路は空いていた。
 20分でアリーナに到着。男女二人がまってくれていが受付では、わたしのために「40001」のゼッケンと遠来賞のワインが準備されていた。
 本来は、四ケタのゼッケンなのだ。わたしだけのために、「五ケタ」のゼッケンを用意してくれたのだ。これは、10KMを張りながら確認できた(笑)。

 おかげさまで、10KMをまずまずのタイムで完走。いまから、高田先生に予約していただいているお鮨やさん、「鮨とみ田」にうかがうことに。7年前は、レース前日に日本酒を4合、2合とまちがって飲んでしまった。レースはもう終わったのだから、それでもいいかな。あのときは、ハーフが1時間42分だった!
 それでは、「まにあわなかったから、かわりにエントリーしてあげますよ」と電話で申し出てくださった、とみ田のご主人にあってきます。七年ぶりだが、出雲のひとたちは、みな親切だ。