2010年JFMA国際セミナー 小川の基調講演レジュメ(2010年6月7日)

国際セミナーの講演レジュメを、事前に公開します。6月7日のセミナーは、「JFMAこれまでの10年、これからの10年」がテーマです。多少の変更はありますが、10年間を総括、回顧しています。この先10年間も基本方針に変わりがありません。

 1 歴史の証言
2005年総会セミナー講演「JFMA と花き産業の未来」(2005年6月28日)
JFMA創設時の目標(30年計画)は、どうだったのか?

(1)第一期:最初の10年
  ・目標1: 花業界のインフラと標準を作る
  ・目標2: ビジネスと情報の交流の場を設ける
  ・目標3: 花の市場を10年で2倍に伸ばす
  ・目標4: 業界を支える人材と組織を生み出す

(2)第2期:つぎの10年
  ・目標5: 日本からアジアへ(JFMA~AFMA)
  ・目標6: 花業界の社会的な地位の向上
(3)第3期:最後の10年
  ・目標7: 花業界を越えた組織に(事業ドメインを拡張)

(4)総括
・5年前にわたしたちがいた場所、そして、わたしの予言は・・・
→ ほとんどがあたっている

2 JFMA設立後10年間の検証
(1)達成できたこと = 設立意義の再確認
   ・目標1: バケットの規格標準化、日持ち保証販売、MPS
       商品(花)の鮮度への着目
     経営の業界標準、環境基準
 ・ 目標2: IFEX2004~2010(国際フラワーEXPO)、地方セミナー、
     モーニングセミナー(70回以上)、イブニングセミナー(毎月)
      → 花業界のミーティングポイント作り
      GARDEX2008、EXTEPO2009
 ・ 目標3: 広報誌“IN FLOWER”、花育(はなごと)の活動
   → さらに、今後の課題
 ・ 目標4: ホームユースを主体とした小売業態の誕生
     新しい担い手の登場
 ・ その他: 国際セミナー、海外視察ツアーの成果
    他の国(欧米)、他の業界からの知恵と技術の導入
    組織的な学習(20回の海外ツアー、20回の国際セミナー、
       100コマのIFEX・GARDEXセミナー)
   
(2)達成できなかったこと = 反省と課題
  ・ 花という素材の社会的なプロモーション
 ・ 人材の育成と研修制度の定着
 ・ 世界の中の日本というポジションの確立
 ・ 花の産業を大きく飛躍させることができなかった!

3 業界を取り巻く変化の諸力
(1)消費者と小売業
    ・日本の小売業の変化
     ディスカウントの時代(SPA系、低価格志向)
   → デフレの勝者は、すでに品質訴求とブランド作りに向っている
     ユニクロ、しまむら、ニトリ、カインズ、日本マクドナルド
     ライフスタイル提案型小売業の台頭(セレクト系)
   → 成城石井、ヤオコー、Earth、Natural Kitchen、青山フラワーマーケット!
    10年間で凋落してきた業態は?
   → 百貨店、GMS(総合スーパー)、ドラッグストア、(コンビ二?)      
 ・ 日本人消費者は何を求めているのか?
    安心・安全への希求
    健康な食と鮮度への要求
    長い時間、健康で、楽しく生きたい!
 ・ディスカウント時代の終焉
       プレミアムブランド商品と差別化商品を持つアップスケール業態

(2)農業の生産環境と農地法の改正
  ・規制緩和1:第二次農地解放
        60年ぶりのGHQ体制からの解放
  ・規制緩和2:株式会社の農業分野参入
        野菜・果樹分野での動き
    ワタミ、7&i、サイゼリアなどの有機野菜生産
    イオン(トップバリュー、グリーンアイ)
  ・規制緩和3:農業フランチャイズの動き
        事例:JAとコメリの戦い(農業資材、商品販売)
    参考図書:浅川芳裕(2010)『日本は世界第5位の農業大国』講談社
           岡本重明(2010)『農協との「30年戦争」』文春新書
     → ふたりの論者からのメッセージ:
      ① 日本の農業は弱くない(生産性格差は存在しない)
      ② グローバルな視点の重視(例えば、農産物の輸出)
      ③ 農業後継者不在のうそ(所得格差のデータ)
      ④ タブーへの挑戦(移民労働者の受け入れ)
      ⑤ 農政の問題点: JAと農水省の組織的な課題

(3)中間流通の変化
    ・卸(仲卸)の存在意義が問われる
      市場法改正後 業務の「境界線」が消滅してしまった
        どの業態がどのサービス機能を担うか?
   → サービス競争と垂直的価格競争 
    ・ダイレクトモデルの登場
    コストダウンと鮮度維持を同時に達成しようとするならば、
        中間段階をスキップして、物流はダイレクトにしたほうが効率はよい
    ・消費者向けのネット取引が好調
        今年の母の日 → ネット販売は+20%~+300%
    海外のネット販売も絶好調 → ビジネスモデルが変わってきた
   回顧: インターネット販売の初期の覇者は、
        書籍(アマゾン)と切り花(1-800flowers)であった!

(4)国境を越えた戦い:切り花輸入の限界
  ・切り花輸入の増加
        アジア経済圏の確立(中国、韓国、日本)
        そして インド、ベトナム、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア
  ・輸出国の変化
    ヨーロッパ・中南米 → アジアへのシフト
  ・花業界にも「地産地消」の波が押し寄せる?
         → 直売所での野菜の販売
  食料と環境を巡る「新ナショナリズム」の台頭
        根拠1: エネルギーコストの上昇 
            もはや、花き類は金をかけて遠くへ運ぶ商品ではなくなる
        根拠2: 農作物の輸入規制(食糧危機の到来)
            各国が自国民のために、水と土を守る必要が生まれる
    根拠3: 国内の農業改革と物流改革が進む
                現状で「生産性が低い」という理由が
                将来の「高収益を生む」理由に転化しうる 
        根拠4: 発展途上国が成長段階を終えると・・・
                自国民のために花を供給するようになる
                すでに、中国・インドでは所得水準が上昇しはじめている

4 JFMA、つぎの10年になすべきこと
(1)キーワード(2年前の総会で)
 ・自助努力
   → もはや誰も、あなた(わたしたち)を守ってはくれない
 ・変化はチャンス
      → 規制緩和で大きく成長した企業は少なくない
 ・フロンティアは失われていない
      → 業界をあげてやるべきことは多い
 ・花業界の発展のために
   → 「競争」より「協調」が有効に機能する数少ない業界

(2)JFMAが何をなすべきか?
 ①創業時の理念の徹底
  ・花産業への貢献、人材と知識が交流する場(IFEXの強化)
  ・MPS組織を、野菜・果樹に拡大(事業ドメインの整理)
  ・中核事業としての教育研修事業とコンサルティング(NEW)
 ②AFMA(アジアFMA)を、遅くとも2015年までに実現
  ・ 日中韓台(+輸入国)のネットワークづくり
  ・ JFMAの顧問に各国(女性)大使を!
 ③ 当面の2年間で、日本の花産業を浮上させる
    → 具体的な目標とそのための手段

(3)優先的になすべきことは?
 ①MPSシステムをてこにした生産データベース作成
 ②「日持ち保証販売」の啓蒙と普及
 ③専門店チェーンと量販小売業の業務支援
 
(4)最重点課題
 ①花売場の生産性を高める
   最低限の数値目標をクリアすること(例:日販10万円)
 ②小売の経営情報を集計配布(花業界の地位向上と労働条件の改善)
 ③JFMAの存在意義を作る
   世の中で、なくてはならない存在に
    「電気・ガス・水道、トラスコ」(トラスコ中山、中山哲也社長)
 ④二次利用によるセミナーの開催
    小売業者の相互交流の場を設ける
  ① 経営改善の手段
  ② 切磋琢磨と成長のために
  ③ 教育セミナーの開催(経営戦略セミナーと技術セミナー)

5 3年後と5年後の数値目標
 ・ 2013年までに、JFMA・MPS会員数1000社(人)
  ① JFMA      400社(現在260社)
  ② MPS特別会員  100社(同10社)
  ③ MPS参加者  500社(同220社)
 ・ 2013年までに、花の小売業を上昇基調に、
  ① 対前年比で既存店売上が   +10%
  ② チェーン小売の出店速度が  +20%
  ③ チェーン店舗〈5~7坪〉の売上高が、日販10万円+>
  ④ 量販店での花の販売額が、店舗売上の 1%+>
  ⑤ 専門チェーンの平均日販が、15万円 +>
  ⑥ 結果として、2015年までには、ホームユースの市場規模は、
       GMS+食品SM+上位HC=40兆円×1%
        = 4000億円!(現在、約2000億円)
   プラス、専門店チェーン=4500億円

 ・ 小川の妄想・・・2015年までに、・・・
  ① 100店舗以上のチェーン小売業       10社
   * 量販インショップでの売場展開を含む
   * 3500万円(/店舗)×100店舗=35億円(/チェーン)
   * 現状は、青山フラワーマーケットがトップ(70店舗で55億円?)
  ② 全国数箇所で花生産をするチェーン型農場  10社
   *国内売上規模20億円以上(現状、)
  ③ 開発輸入型商社              5社
   * 取り扱い規模で100億円以上
   * 輸入市場規模=500億円(現状、上位5社で100億円)
  ④ 全国をネットワークする卸企業       5社
   * 売上規模500億円以上(~1000億円)
   * 上位5社で、4000億円(現状、1000億円)
  ⑤花束加工業                10社
   * 取り扱い規模50億円以上(現状は?)