「ポンタカード」を「ポイントカード」と聞きまちがえて@KFC新鎌ヶ谷店、、、発音、似てるかな?

 つい先ほどのことである。最寄駅の新鎌ヶ谷駅(北総開発鉄道線)で起こった、あまり笑えない個人的な体験について。東武スカイツリー線(旧野田線)の乗換駅にもなっている新鎌ヶ谷駅の前には、ケンタ(KFC)とマック(マクドナルド)が隣り合わせに店を開いている。



 駅を降りるとまず、ゴールデンアーチのMマークのマクドナルドがある。そのつぎに、カーネルサンダースおじさんが立っているKFCである。席数はほぼ同じくらいだが、北総線や野田線を降りた乗降客は、先にマックの店の前を通る。立地的には明らかにマックに有利である。
 数年前までは、客の奪い合いではマックが優勢に見えたのが、いまはケンタがマックを圧倒しているように見える。わたしはと言えば、柏公園店(数年前に閉店したが、なぜかクリスマスのパーティーバーレルがおいしかった!)があった時代から、KFCの大ファンだった。なので、今夜もケンタに吸い込まれそうになっていた。
 本当は、できれば店舗観察の目的もあって、マックに足を踏み入れたかったのだが、いまのわたしにとってマックは近寄りがたい存在である。日本マクドナルドの惨状を見ていて、現場で一生懸命に働いているクルーの表情を見るのがつらいからだ。
 そんなわけで結局は今夜も、わたしの足は、隣のトトロならぬ、隣のケンタに吸い込まれてしまった。

 午後9時ちょうど。どちらにしても、客はほとんどいない時間帯だ。KFC新鎌ヶ谷店のカウンターに並んでいるのは、わたしたったひとり。ちなみ、隣のマクドナルドには、客がひとりも並んでいなかった。店の前を通りすぎるとき、窓ガラス越しに店内をちらと一瞥すると、客席の半分ほどは埋まっていた。ふぅ~っ。なぜか、ホッとした。
 さて、KFCのカウンターでわたしを待っていたクルーは、元気で丸ぽちゃの女の子(高校生)と、頼りなさそうなメガネ男子(大学生か専門学校生)のふたりだった。メニューボードとメニュー表を見比べながら、わたしは、体育会テニス部に所属していそうな日焼けした女子高生に、「ピリ辛ゆずチキン」をセットでオーダーした。620円。
 もちろん、サービス対応はそこで終わりはしない。桂文珍の落語に登場するクルーよろしく、「ついでに、ビスケットはいかがですか?」と語尾を上げ気味に攻めて来た。かみさんがケンタのビスケットが大好きなので、持ち帰り客のわたしとしては、「そうです、それっください」と即答した。

 注文は終わりそうだったが。健康そうな女子高生が、ピリ辛ゆずチキンを取りに行っている間に、わたしの顧客対応の係りがメガネの男の子に代わっていた。そして、精算のレジ打ちを担当することになった男子は、マニュアル通りに、「ポイントカードはお持ちですか?」とわたしの方を見た。
 いまやケンタッキーに入ることがなくなったわたしは、ケンタのポイントシステムなどについては不案内だった。「ケンタにポイントカードなどあったのだろうか?」と思いはしたものの、とりあえずは、「もってません!」と愛想よく答えてみた。
 レジの精算金額は、ビスケット+ピリ辛ゆずチキンのセットで、しめて820円。腹ペコおじさんは、早く自宅に帰って、ひとりでケンタを思いっきり食べたい!(かみさんは、帰りがかなり遅くなるはず)
 ところが、キャッシュレジスターの側面を見ると、ゆるそうな表情の「たぬきのマーク」が目に飛び込んできた。「ポンタ」だった。気が利かなそうな男子がわたしに向かってマニュアルトークしたのは、「ポイントカードをお持ちですか?」ではなくて、「ポンタカードをお持ちですか?」だったのだ。

 いまさら、「ポンタカードなら持っています」とは言いにくかった。でも、試みにその男子クルーに向かって、「”ポンタカード”なら持ってたんですが」と彼の反応を見てみた。ばつが悪そうに微笑んでいる彼の表情を見て、しかし、これ以上は追及しても無駄だと悟った。
 購入した商品をいったんキャンセルして、レジを打ちなおすことは不可能ではないだろう。でも、それをするように教育を受けてはいないようだった。ポイントカードとポンタカードを聞き間違える老人も、そんなに多くはないだろう。例外だろう。
 金額が820円では、還元率を1%として、ポイントは「8点」しかつかない。そのために、キャンセルの手順を踏んで、レジを打ちなおすのは面倒くさいだろう。
 でも、考えてみたらよい。めったにケンタに行かないわたしでも、若い子がそこまで対応してくれれば、まちがいなくあと5回は、新鎌ヶ谷のKFCに通うことになる。もしかして、生涯にわたってケンタのロイヤル顧客になってしまうかもしれない。結局は、気持ちの問題なのだ。
 ファーストフード店の顧客満足度は、そうしたサービスエンカウンターの積み重ねによって決まってくる。それができるかどうかは、長期的な教育訓練プログラムの蓄積の結果である。たまたま起こった「ポイントカードとポンタカードの聞き間違い」というチャンスを、顧客ロイヤリティの獲得に転じることができるクルーをリクルーティングして、彼らを育成できる組織がサービス業としては最強なのだ。
 それができなくなっているのが、いまのファーストフード系の飲食業なのだ。症状は重篤である。