プレモルサーバーの嬉々(プレモルの危機)

 一週間前から、ビールサーバーからサントリーモルツをグラスに注いで飲んでいる。飲食店に置いてある縦型サーバーの小型版だ。350CC用で、小さくてスリムなマシンである。中身は缶と同じだから、味も変わるはずがない。そう思っていたが、サーバーを通すと明らかに味がクリーミーになる。のど越しもよくおいしいのだ。



 春の終わりごろから、かみさんがプレミアムモルツの缶に貼ってあるシールを集めだした。実にこつこつ集めて、先月の終わりには目標の120枚に達した。応募用の台紙に貼って出すと、サーバーがもらえるらしい。
 ゼミ生にも協力を求めたが、誰一人としてかみさんのコレクションでシールを提供する学生はいなかった。ご褒美がないからだから、まあ致し方ないかと思ったりもした。
 かみさんとしては、孤独な作業だったのだろう。それでも、キャンペーンの締め切りのギリギリに間に合った。

 宅配便で届いたサーバーを受け取ったのは、毎日缶詰になって「マック本」の原稿を書いているわたしである。原稿を書くしか仕事がないから、夕方に走ってから、自分で作った料理でお酒を飲むことがいまや趣味になっている。だから、飛んで火にいる「モルツサーバー」である。
 昨日までほぼ毎日、プレミアムモルツを2~3缶ほど開けている。シールを集めるために、夏の間中は毎日、サントリーさんにお金を払ってきた。シールを120枚集めたそのあとも、毎日モルツを飲んでいる。サントリーのビール事業へのたいへんな貢献額である。
 と、そこまで思っていたら昨夜、かみさんが素朴な疑問を提示してきた。

 「モルツ以外のビールを、モルツサーバーで飲んだらどうなるのかしら?」と恐ろしい誘惑をわたしに提案してきたのだ。
 そのあとに、「味は変わると思う?」が続いた。モルツのシールを120枚集めて、立派なサーバーを景品でいただいた。だから、サントリー社以外のビールをこのサーバーで飲んではいけないのでは?
 そのように最初、わたしは思ったのだが、道徳的倫理的な抑制はそこまでで終わった。好奇心が強いわたしのほうが、積極的に実験をしてみたくなった。
 昨夜は、やはり怖いことが起こってしまった。わたしたちは、禁忌を犯してしまった。夕食がはじまると、招き猫のマーニーにさんまの焼き魚をお供えして、そろそろとモルツサーバーにK社のビールをセットした。缶のサイズ(350CC)は同じだから、どの会社のブランドでもぴったり収まるのですね。
 
 サントリーの社員のみなさん、だが、ご安心ください。K社のビールを、モルツサーバーで飲んでも、あまりおいしくいただけませんでした。やはり、モルツにはモルツ。泡のクリーミーさが違いました!
 というわけで、A社やS社のビールで追試してもよろしいのですが、どうやら、モルツサーバーにはモルツがいちばんお似合いのようで、、、