「エアライン極限の進化」という特集が、『ニューズウイーク日本版』(8月12/19日号)で組まれていた。エアラインの技術進化と安全に関する記事なのだが、その背後にあるのは、世界的なパイロット不足という事情である。よく見ると、法政大学(パイロット養成コース)の名前が載っているではないか!
同誌の52頁は、「安全飛行を担うパイロットの気になる実力」というタイトルの記事である。その最終行には日本国内のパイロット養成コースのことが述べられている。パイロットの実力と数の不足の実態についてである。
「(パイロットの養成コースは、)航空大学校が年間72人の定員を抱えるほかは、東海大や法政大学など私立大学に限られる。4年間の学費は2000万円と敷居が高い。JALとANAには社内研修制度があるが、合計で年間130人程度を養成する規模でしかない」(「NW日本語版」から引用)。
2007年ごろに、将来的に「パイロット不足」になることが確実だと気付いた。そこで、平林総長(当時)にわたしから進言して、法政大学(新設の理工学部)に「航空操縦専修」(パイロット養成コース)が開設されることになった。旧理事会の最後の学部設置と同時の事業で、2008年の開講である。
紆余曲折があって、現在は当時考えていたような「理想のカリキュラム」にはなっていない。しかし、『ニューズウイーク日本語版』などの記事に見られるように、法政のパイロット養成コースが雑誌に取り上げられるようになった。法政大学の「航空操縦専修コース」の認知度を上がっていることは確実のようである。
人気の証拠は、先日のオープンキャンパスの来場者数に表れている。担当した職員の伝言によると、オンキャンの説明会には「約80名」の学生が来場したらしい。これまでは、パイロットになるための授業料が高いことや、不幸な裁判事件などもあり、専修コースの人気はいまいちだった。
ところが、大学でのパイロット養成(事業)については、局面は大きく変わりつつある。円安による相対的な優位性(東海大学は海外留学で、法政大学は国内で資格を取得するから、法政が有利になる)に加えて、数百万円規模で授業料を安くしたことが有効打になっている(記事を参照のこと)。
パイロットは絶対的に不足している。海外では、民間(私立大学)でのパイロット養成が主体である。コスト的にもそのほうが有利である。エアラインの社内養成や航空大学校での訓練では、養成コストが高くつきすぎる。早くからそのことに気づいていたので、私立大学に「空の可能性」があるとわたしは感じたのだった。
以下は、法政大学のHP(理工学部)からの抜粋である。
「航空操縦専修」には、実は、新幹線で運転手をやっている次男ではなく、神戸で商品開発のシェフをやっている息子(長男)に入学してほしかったのだ。2008年の開校では、まったくもって間に合わなかったのだが。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
法政と航空の歴史
1931(昭和6)年5月29日、開場間もない羽田国際飛行場から小さな複葉のプロペラ機が飛び立ちました。東京朝日新聞夕刊が「吾等の『青年日本号』訪欧の壮途に上る」と題して一面トップで伝えたこの複葉機こそ、法政大学航空部の「青年日本号」でした。地図と羅針盤だけを頼りにした有視界飛行でローマを目指す「青年日本号」には、正操縦士として経済学部2年生・栗村盛孝、付添教官の熊川良太郎一等飛行士が搭乗していました。シベリアからウラル山脈を越え、ドイツ、イギリス、フランスでの親善友好を果たし、ローマのリットリオ飛行場に翼を休めたのは8月31日。 まさに校歌にうたわれている「青年日本の代表者」としての面目を発揮した、世紀の快挙と称賛された飛行でした。
日本の航空史を切り拓いた法政大学 日本の航空史を切り拓いた法政大学
日本の航空史を切り拓いた法政大学
1891年 二宮忠八、模型動力飛行機の試作に成功
1903年 ライト兄弟、人類史上初の有人動力飛行に成功
1910年 徳川大尉、日本国内での初飛行に成功
1929年 法政大学に、日本初の大学航空研究会が設立される
1931年 法政大学航空部、「青年日本号」で学生による訪欧飛行
1944年 法政大学航空工業専門学校(工学部の前身)が設立される
2008年 法政大学理工学部機械工学科航空操縦学専修が開設
法大と日本の空の絆が、より深く、より固く結ばれます。
2008 航空操縦学専修誕生
法政大学 理工学部 機械工学科
■日本の空でパイロットを育てよう。
「青年日本号」が咲かせた航空への若い夢の情熱の花。その夢は、本学で「次代のパイロットを育てる」という果実に結実しようとしています。しかもその育成フィールドは、日本の空です。他大学のパイロット育成の教育実習が、外国留学を前提としていることと比較すると、国内での実習には、時間、距離、さまざまな面でメリットが生まれます。
■パイロット養成に加え、活況の航空産業をさらに活性化させます。
団塊世代のパイロットが定年を迎え、エアライン各社でも深刻なパイロット不足が懸念されています。また、羽田空港の拡張展開、地方空港の開港にともなう国内路線の増便、アジア諸国の発展が促す輸送力の強化など、慢性的なパイロット不足にさらに拍車をかける事態が進行しようとしています。こうしたパイロット需要にこたえるために、民間活力でのパイロット養成はいま大きな注目をあび、期待も高まっています。さらに、自動車メーカーによる小型ジェット機業界への参入、次々と誕生する純国産機、次世代の新型旅客機の主要パーツの国内生産など、航空ビジネスは追い風の状況にあります。この航空業界の活況をさらに活性化することは、日本の未来を輝きあるものに導く道のひとつです。