「新JFMA会員さんの訪問(№3)」『JFMAニュース』(2014年1月20日号)から

 『JFMAニュース』(2014年1月20日号)から、JFMA会員さん訪問を掲載する。今回は、新会員の花恋人さんへの訪問記事である。


「花恋人」と書いて、店名は「KARENDO(かれんど)」と呼ぶ。最初は、うかつにもショップ名を「はな・こいびと」と呼んでしまった。花恋人は、奈良県を中心に現在、和歌山・兵庫・大阪で8店舗を展開している専門店チェーンである(「ショップ・リスト」をHPから引用)。3月16日に、9店舗目が「イオンモール和歌山」にオープンする。関西ローカルで店舗を展開しているので、関東の花業界人に「花恋人」の知名度は高くないだろう。しかし、わたしが知る限りでは、関西で2けた(今年中に実現の予定)の店舗を持つ専門店はめずらしい。実は、わたしも2年前までは、その存在を知らなかった。売上高は約3億円(2013年度)で、従業員数は55名である。

 不思議な縁で、専務の野田将克さんとお会いした。2012年のIFEX(国際フラワーEXPO)で、野田さんがJFMAのブースにふらりと立ち寄ってくださった。ふつうはその場の立ち話で終わるものだが、会話の中で野田さんが「中小企業診断士」の資格を持っていることがわかった。法政大学の経営大学院には、「診断士の二次試験免除コース」(MBA特別)がある(小川の発案で創設)。免除課程にでも入学しないと、中小企業診断士の資格取得は20倍の狭き門である。かなり努力をして、さらに地頭がよくないと受からない。

 昨年の9月に、たまたま野田さんからメールをいただいた。わたしが10月17日に「大阪マラソン」を走ることになっていた。その返信メールで、「花恋人の大阪の店舗を訪問します」と約束をしていた。ところが、どうしたわけか2カ月前の約束を思い出したのが、大阪マラソンの「エントリー会場」だった。仕切り直しをして、京都で用事を作って、12月3日に「神戸ハーバーランドumie店」を訪問させていただくことにした。

 ハーバーランド店は、2013年4月にオープンしたばかりの店である。イオンが運営する典型的なショッピングモールで、KARENDOの店舗は「サウスモール」の地下1Fにある。売り場は約30坪。第一印象は、「花店」というよりは「花を中心にしたギフトショップ」である。売り上げの約2割は、雑貨関連の商品である。花束や鉢物もラメを入れたりピックを活用したりして、素材に何らかの加工が施されている。売り場全体も漫然と花を置いてあるのではなく、テーマ別にいくつかに分割されている。

 訪問した当日は、モール全体でクリスマスの飾りつけが始まっていた。1Fの展示ホールでは、特別に催事スペースを借りて、KARENDOとして「クリスマスリース」や「ぬいぐるみ」の花束などをコーナー展示で販売していた(写真)。展示スペースだけでもそこそこの売り上げがあるという。花恋人が「ギフトショップ的な花店」の店づくりになった理由を野田さんに伺った。

 野田社長は花店の二代目経営者で、今年37歳。4年前に32歳で脱サラして、父親の花店を事業継承した。本人は当時、経営破たんした「カネボウ」(現在、「花王」の子会社)の食品研究所(高槻市)で働いていた。学生時代は、同志社大学工学部で化学を研究していたという。カネボウの社員として再生機構の事業整理に関わる傍ら、自らも中小企業診断士の勉強をはじめていた。「診断士試験に合格したのは、事業を継承する直前の一か月前だった。とにかく必死でやった」(野田さん)。

 事業再生に関わったことと診断士の勉強をしたことが、実家の花屋の事業を見直すことに役に立った。事業を継承することになった動機は、スーパーマーケットの中に入っていた4店舗の業績が悪化していたことだった。そのままでは、2店舗が維持できなくなりそうだった。父親の経営の仕方は、町の花屋さんにありがちな「どんぶり勘定」だった。そして、スーパーに入店している花屋の典型で、「安売り志向」の店舗づくりだった。

 最初に見直したのは、ディスカウント路線は止めて、商品に付加価値を作る方策を探ることだった。そこから出てきたのが、商品を加工することだった。ポインセチアもコチョウランも、そのままでは販売されていない。ギフトとしての付加価値が付くように、容器の色柄を慎重にセレクトしたり、かわいいリボンを使用したり、POPの色遣いや文字にこだわったている。花をそのままでは売らないで、何らかの加工を施している工夫が特徴として目につく。一部は店舗でも行うが、基本的は本社に加工作業を集中させている。

 つぎに、徹底的に計数管理で経営することを心掛けた。これには、中小企業診断士の勉強が役に立った。店舗数が増えてきたので、物流の組み方も見直している最中である。この辺は、理科系出身の経営者らしいところである。現場を見ての印象だが、野田専務の人柄にもよるだろうが、女性の従業員がいきいきと働いている。従業員に商売に工夫をして「考えさせる経営」をしているからだろう。店頭に立って働いている女性たちの目がきらきらと輝いている。

 結果として、最大の売り上げを誇る「イオンモール橿原店」は、年商が1億円に届きそうな勢いである。他の店舗も、規模が異なるので売り上げにばらつきはあるが、平均年商で5千万円ほどである。「事業を継承したときは倒産寸前でした。いまは3%ほどの最終利益を出せるようになりました」(野田さん)。

 花恋人さんのようなギフト業態の問題点は、たとえば、クリスマスや母の日など、物日に売り上げが集中することだろう。母の日の売り上げが、一日で100万円を超える店が数店舗ある。ただし、年間を通して花が売れる誕生日などもあるから、訴求の仕方によっては売り上げを平準化できるだろう。日本は季節が変わっていくので、花屋さんの商売にはプラスである。工夫次第である。

 花恋人の野田さんにお願いである。いまでも十分に成功しかけてはいるが、願わくば、花店としての「標準フォーマット」を確立してほしい。そのためには、もっともっと利益が出せる経営体質に持って行けることを期待したい。

<店舗リスト>  株式会社花恋人 (代表 : 野田和司)
 神戸ハーバーランドumie店 (umieサウスモールB1F)
イオンモール和歌山店1F(2014年春オープン予定)
 イオンモール橿原店 1F
 イオンモール大和郡山店 1F
近鉄百貨店橿原店 1F
KINSHO大和高田店 1F
 大和高田市駅前店 1F
大和西大寺駅ナカ店 3F(Time’s Place内)
 アピタ西大和店 1F