第2世代最後の代表理事としての役割: 日本マーケティング・サイエンス学会(JIMA@電通、汐留)

 混雑した一日(ビジネスの交渉事、セミナー実施、書籍の取材、調査の打ち合わせ)を終えた。週末は学会のお手伝いをする。”お手伝い”の意味は、わたしの年齢ではサイエンス研究(マーケティングを科学的に分析する)をしているわけではないので、学会活動としては後輩の支援に回るということだ。



 今春に、JIMS(日本マーケティング・サイエンス学会)の代表理事を引き受けた。元東大教授の片平さん、前任者の杉田さん(学習院)の後任になる。マーケティング・サイエンス研究者の世界で、わたしたちは第二世代になる。大阪大学の中島さん、学習院の上田さん、NY市立大学の高田先生なども、わたしたちの世代に属している。
 本日は、学会であいさつをすることになると思う。その中で、つぎのような話をしてみたい。

 サイエンス学会の第一世代は、わたしの師匠筋にあたる研究者たちである。故人となった大沢先生(大阪大学)、田内先生(一橋大学)、荒川先生(神戸大学)など。いまも元気で活躍されている中西先生(関西学院大学)は、第一世代と第二世代の中間に位置している。例外的な存在かもしれない。
 第一世代は、学問としてのマーケティング理論とリサーチ研究の”輸入”をした世代である。そもそもマーケティングは、輸入学問だった。「翻訳世代」ともいう。
 わたしたち第二世代は、そのあとを追いかけた。何人かは海外の大学に留学したり、中西先生や高田さん、片平さんや杉田さんのように、米国の大学で教鞭をとったりしてもいる。ほとんどの研究者は、なんらかの海外ジャーナルに論文が掲載されている。競争的に優位なしごとをしたかどうかはわからないが、研究的には国際的な水準に到達した世代である。

 問題は、つぎに続いている第3世代である。年齢的に言えば、40代前半から50代前半まで。この世代は、たとえば、東大の阿部さんや慶応の井上さん、東北大の照井さんなどのグループである。彼らは、海外の学会で発表したり、教壇に立って教えた経験もある。基本的には国際派だし、クオリティーの高いペーパーを発表している。
 ところが、国内での活動の位置づけからいえば、サイエンス学会と実業界との関係づくりや研究グループの組織化では、中心的な役割を果たすまでには至っていない。わたしたち第二世代も、そのための支援を十分できているわけではない。学会の最大の問題は、ここにある。
 「ビッグデータの時代」である。実務的な要求はたくさんある。データ分析手法やリサーチのフレームワークが役立つ場面は多くあるはずなのだが、「応用の波」を作れていない。彼らの能力からいえば、それができるはずである。

 わたし(たち)の役割は、その点をファシリテートすることだろう。そして、短い時間で第3世代にバトンを渡すことだと考えている。